ギルのプロット No.1


テーマ
怠惰な大学生、花森健人の”変身”と赤髪の魔女”リュミエ”との出会い
そして異形の怪物”エクリプス”事件との闘いに伴い、形成される二人の関係性

No.1 カイコウ
ある日、突如として朝憬市の上空の太陽が、日食で暗くなった。
時を同じくして中心街駅交差点をゴシック系の出で立ちで歩いていた男女が異形の存在へと変身して周囲の人間を襲う。また彼らは他の異形を指揮していた。
その時、異形たちが暴れる現場に赤髪の魔女と火の鳥、そして白いの戦士が現れて彼らと対峙する。
激しい交戦の中、異形らと魔女たちの力は拮抗するも、異形らの挑発に白い戦士が「正義など便所に棄てた」と不穏な言葉を返し、魔女はその胸中を憂いに揺らした。
時は遡り、作中2022年——
大学生の花森健人は、日々を適当に過ごしながら《平凡》で《穏便》な生活を送っていた。その日も大学の講義を右から左に流し、「”異形の怪物”と戦う”赤髪の魔女”が街にいる」という都市伝説を他の学生らが話すのを耳にしていた。そして講義の後、彼は友人である横尾和明との会話でポツリと呟く。
「俺、なんでここにいるのかな——」

それと時を同じくして、不審な人物が誰かと連絡を取っていた。(その人物——スキャナーはある特殊な魔力の閾値を知覚出来る感覚を有しており、エクリプス情報部内で同様な能力を持つ、僅かな手勢がキーホルダーをこの時まで血眼で探していた)
「ええ、間違いありません…”アレ”を見つけました。どういうわけか地球人が持っています。では、早急な合流をお願いいたします。ヴェムルア様」

その後、健人は異形の悪魔に襲われる。
「彼の秘宝を渡せ。そうすれば楽にしてやる…お前の絶望も終わらせてやろう」
そう告げて攻撃してくる悪魔によって胸を貫かれたその時、ネックレスに結んでいたキーホルダーが怪光を放った。
「まだ、終われんじゃろ」
健人が目を開けると、その半身は白いカラスか甲虫かを思わせる外装を宿した姿に変わっていた。
悪魔との戦闘の末、白い姿となった健人(?)は辛くもこれを退ける。しかしすぐそこには追手の怪物が複数、彼の下に迫っていた。
その後、病院のベッドで目覚めた健人は、母——純子と再会する。しかし状況の特異さ故に、純子に「変な奴に襲われた」とだけしか説明できなかった。その後、先のキーホルダーを手に取ると、何処かから声が聞こえる。
「ようやくお目覚めか…宿主よ」
その言葉と共に彼の前に白い小人が現れた。小人は先に変身した自身にどこか似ていたが、いよいよ自分は完全に気が触れたかと健人は幻覚を疑った。そんな彼に小人は言う。
「幻覚だったらどれだけいいかのう…残念じゃったな、オレはネーゲル。これから精々よろしく」
物語を書き始めたギルの独白。”彼の今”に至るまでの変遷を一部ずつ開示し、物語の展開と織り交ぜてアバンや閑話とし、適宜、物語への導入とする。
「私は、私の信じてきた道を裏切り、また道に裏切られた」
「だが、私は、まだ絶望しきるわけにはいかない。与えられたこの物語を愛した私が、それを許さない」
「しかしモル、これはあなたとの物語への冒涜か。しかしやはり、私があなたへ書きたかった。そして、観測して頂きたい。たとえ、それがエゴだとしても」
「そして私は、あなたの信じてくれた希望であり、”優しいこと”に立ち返るため、この物語を——」
No.2 シロイコビト
白い小人に対し、動揺に揺れる健人だったが、病院から自宅アパートに帰った後も、ネーゲルと名乗る小人は尚も健人に話しかけ続ける。
無視を決め込む健人。沈鬱とした思いを抱えながらも、健人は日常を取り戻すべく大学に出向く。
「花っち、あの後大学来ないから心配したぞ。大丈夫か?」
そう声をかける和明に対しての応答も、混乱したままでは上手くできず、健人は和明に気遣われながらその場を後にする。その時、先の小人の声が脳裏に響いた。
「俺にわかることだけでも教えてやろうか?そもそもお前、なんであの状況で助かったと思っとるんじゃ…」
一方、悪魔=ヴェルムアは先の事の顛末について、フォーマルスーツを纏う茶髪の青年=カイルスに詰問を受ける。応酬する二者。”秘宝”の存在、力を独占したいカイルスは、ヴェムルアから巧みに健人の存在を聞き出す。
(尚、この際に回想シーン的に先のバトル描写の続きを演出する。白い姿の健人?はヴェムルアの後に現れた怪物達をも、その圧倒的な力で一蹴していた。また、この時健人のことを掴んでいたスキャナーも討伐される)

「お前は、俺の幻覚じゃないのか?」
「違う。やろうと思えば実際にお前の友達の前に姿を現すこともできる…まあ多分、状況としてマズいけどな」
大学を早退し、自宅への帰路に着く中で健人はネーゲルとの話に応じていた。
ネーゲルはあの悪魔を総括して「エクリプス」と呼び、絶望を糧に栄える種族だということや絶望させた対象を宿主と呼ぶことなど、エクリプスについて知りうる一部を健人に告げる。ネーゲル自身もエクリプスのひとりなのだが、“謎の呪い?”にかけられてなぜか白い体色になった上、宿主の身体から出られない。そのため、キーホルダーを介して健人の左半身に宿る形になっているという。
「なんだよ、それ…どこのおとぎ話だ。いよいよ本当に人間じゃないみたいじゃんか…」
健人は静かにそれだけ返す。しかしネーゲルもまた、静かにこれだけ言った。
「…そもそも、お前にとっての”人間”って何じゃ?それは何処にあるんじゃ?」
その後、三日が経過した。英道大学で不審な傷害事件が起きたという報道があったが、健人としてはそれどころではない。先からの途方もない事態に、今後を思案する時間は必要だった。
そんな時、自室のインターホンが鳴る。無視をしようと思っていたが、程なく横尾和明の声が聞こえてきた。
「花っち、俺だ。ちょっと、開けてくれないか?」
「…どうするんじゃ?」
「うるさい。わかんねえよ…巻き込めないし」
ネーゲルからの問いかけに、小声で返す健人。和明は講義の内容をノートに取っており、それは置いていくと伝え、アパートを後にした。
「悪い、花っち。これしか今は出来そうにない。俺もやらないといけないことがあるから」

場面は変わり、暗くなり始めた英道大学キャンパス。その構内を沈鬱な顔で歩く男子学生。その眼前に現れるフォーマルスーツのカイルス。叫ぶ間もなく、学生は直後の凶行に息を呑んだ。
「人生は儘ならぬことに溢れている」
そんな言葉から始まるギルの独白。そこからどうしていくかにも苦難は伴う。物事は推測がついても、まず期待通りには運ばない。
思えばギルもまた、モルとの楽しみを幾度となく難しくしてしまっていた。そういう意味では、ギルもまた、自身に期待したようにはモルに楽しい創作を提供できなかった。
しかし、だからこそギルにとっては、今こそ本当に”儘ならぬことを切り開く力”が求められている。そしてそれは現在作中で困難に突き当たりつつある彼らを通した"物語として"描きたい。ギルはそう結んでこの度の閑話とする。
No.3 タタカイ
尚も続く英道大学での連続傷害事件の報道。遂に健人も無視しきれなくなっていた。
「気になるか?」
「何でそれ、聞くんだよ。俺に…」
ネーゲルからの問いかけに、健人は問いを返す。
「恐らくアレは、奴らの仕業じゃからな」
弾かれたように顔を上げる健人に、ネーゲルは言葉を続ける。
「今、あの大学って場所は危険じゃ。エクリプスは明らかに何か意図があってあそこで活動している」
「そんな…大学も警察も何してんだ」
「事の次第も認識しきれてなかろう。エクリプスの活動は秘匿性に富んでるからな」
こうした問答を続けながら、健人は眉をしかめてテレビを睨みつけた。
「それじゃあ、カズさんは…」
「あの兄ちゃんももれなく危険じゃ。決まっとろうが」
事態に動揺する健人だったが、「そういえば…」と続くネーゲルの言葉が健人に一先ずの行動を起こさせる。
「あのノート、返さんでいいんか?」

その後、一週間ぶりに英道大学に出向いた健人。和明とも合流し、連続傷害事件について彼と話し始める。
「大学も頼りないしさ。報道されている以上に被害を受けてる学生もいるだろうって言うじゃん…なんていうか、自衛のために大学少し休むのはアリじゃないか?俺はしばらくそうするつもりだし、カズさんも…」
「いや…花っち、心配はありがたいんだけど…俺ちょっと、やることがあってさ」
「それって、大学に出ないとダメなのか?」
「…まあ、そうだな。今は特に」
「…これはうまく説明できないんだけど、ここは皆が思うよりも危ないって、ちょっと聞いたんだ。だから、カズさん…」
食い下がる健人の言葉を受け、和明は真っ直ぐこちらを向き、健人の肩を掴む。
「その話の出所ってどこだ?花っち、何か知ってるのか?」
「…悪い、何とも言えない」
「なんだよ、それ…底意地の悪い話だけど、それなら俺も簡単には退けない」
「そんな…」
「悪いな、花っち…」
そのまま説得は物別れで終わってしまう。
「どうすりゃいいんだよ。こんな話…」
途方に暮れる健人。そんな彼にネーゲルはある提案をする。
「お前の決断次第では、一つだけ状況に対抗できる手段がある」
「…なんだ?」
「その前に一つ聞いとくことがある。お前…戦う覚悟はあるか?」
健人はその言葉にどこか表情を曇らせた。

夜の大学構内。この日もカイルスが絶望的感情を抱く男子学生を襲う。逃げる学生を追い詰めるカイルス。そしてその爪が彼に突き立てられようとした時、白い姿になった健人がこれを妨害する。

「ははっ、大して期待はしてなかったが、まさかこっちに現れるとはな」
(ヴェムルアから情報を得たカイルスは、先の知覚タイプのエクリプスを数体ほどは大学にも配置していたものの、健人の大学外での活動も視野に入れ、敢えて先の現場と大学から割り出した範囲に配置していた。一方で大学で事を起こすことで、健人がリアクションする可能性も視野に入れて凶行を起こしていた。人間に認知される可能性も理解した上でである)
その言葉に一瞬だけ疑問を抱きながらも、健人はカイルスに向けて大声を上げた。
「その人から離れろ!」
しかしカイルスはそれを鼻で嗤う。
「それって断ったらどうなるんだ?ああ、面白い回答をよろしく」
「…っ!邪魔させてもらう…」
「興覚めだ。クソほど萎えた…次は辞世の句でも考えてろ」
そう言い放つとカイルスは健人に襲い掛かり、二者の交戦が始まった。
ギルの独白。
「人の認識や思い、考え…こうしたものは中々どうして基本的にすれ違う」
”相手の気持ちになって考えましょう”という言葉は、私が幼いころによく聞かされた言葉だが、これがやり切れた人間などいない。
仮にそれができるという人間がいるなら、私はその人こそ信用に値しないと断じてしまうだろう。
少なくとも私には、それほどまでに人の心も、その背景も、立場も、状況も、パーソナリティetcも…理解し、適切な判断などしきれない。
皆、大なり小なりそうだ。皆、それを誤魔化してもいる。この安い思考、独白もその一つだ。
だが、それを可能な限りでも乗り越え合える他者と出会えたなら…きっと人にはその先を築いて尊ぶ自由と義務があるだろう。私たちはいくらかそういう風にできているのではないか。こんな妄言を垂れても仕方がないかもしれないが…
ただ、私は私の内に今もどうにか息づいているその部分に従おうではないか
No.4
冒頭、ネーゲルと健人との”対抗手段”を話し合う回想場面の描写。
「エクリプスは絶望にある人間を突き落としにかかる。ここまではいいな?」
「ああ…」
「で、オレという存在…その構成は、言うなればエクリプスの亜種じゃ。オレも絶望にあるものの”匂い”は辿れる」
「…相手の狙いがこっちもわかるのはいいけど、カズさんを護衛する——みたいなのじゃダメなのか?」
「和明に不自然に思われたり、防衛的にさせたり、和明自身に不自然な行動を取らせることになる。そうなるとかえってやりにくいじゃろうと思う」
「…そもそもカズさんは絶望的になってたりは…」
「それはない。アレはまた違う匂いじゃ…じゃが事に巻き込まれる可能性はゼロでもないし、恐らく高い」
「それってどういう…」
「さあなそこまでは分からん…あくまでオレの推測でしかないしな。ほいじゃが6割は良い線いっとるじゃろう」
「…わかった。とにかく奴らの狙いを察知して動くのは理解した。それで?」
「エクリプスはその隠密性を最大限発揮するために、白昼堂々と暴れることは少ない。大学内に夜も残る奴は多いか?」
「いや、基本的には限られてるはずだ。人数は相当数絞られる」
「なら、ある程度意識を広く張っておけば、大学内の何処にエクリプスが現れるか目星はつく。それとどういうわけか、オレはエクリプスの気配も、近づけば判別は出来る」
「…それで俺に戦えるか聞いたわけか」
「ああ、最終的にはそれは避けられん。オレが代わってもいいが…お前の身体への負担がデカい」
「…俺自身も、戦うなんて…」
「じゃろうな。スマートにはいかんじゃろうし…じゃが、戦えるのはオレとお前くらいじゃ」
「…方言丸出しで言われてもな」

※台詞多く説明的。調整必要。
カイルスと白い健人の戦闘描写。大学内で激しく争う両者。(詳細は本文でより詳しく描写)

辛くもカイルスを退ける健人だったが、先に物別れに終わっていた和明が変身解除直後に現れる。
「花っち…」
「…カズさん、これは」
「どういうことだよ、何で花っちが…花森がアイツらと同じようになってんだよ…それに、ソイツは…!」
傍らのネーゲルを差しながら言われたその言葉に、そしてその目に震える健人だったが、その場に大学関係者が近づき、パトカーのサイレンも辺りに響いた。
「健人、ここを離れるぞ。このままじゃお前が危ない」
「でも、これじゃ…」
「いいから走れ!このままにせんためにも!」
健人はネーゲルのその言葉を受け、その場から逃げ去るしかなかった。
自宅に逃げ帰り、遂に母、純子に電話を掛ける健人。その左手には紐で作った輪が握られている。
「母さん、ごめん…俺、もう——」
「健、どうしたの!?」
「もう限界で…もうこんなになってまで生きたくない」
それだけ言って電話を切ると、そのまま紐を天井に掛け、自死を図る——。

しかし死ねなかった。その直前でネーゲルが健人の意識を乗っ取ったためだった。
健人が目を覚ますと、駆け付けた母、純子が今一度健人の手を握っていた。
「健…」
「…ごめん」

「あのまま死なれちゃオレが困るからな。邪魔させてもらった」

END

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