--- Title: 【シエル】 Author: sagitta_luminis Web: 'https://mimemo.io/m/3A2wRoN9YDG1zM6' --- 背に白い翼を備える碧眼の美少年。中性的な顔立ちで可憐な歌声を持つ。茶目っ気とユーモアの溢れる性格で世界各地を旅して回り、その自由の翼でどこからともなく現れ、いつの間にか去っている。 かつて、ボクは鳥だった。 大きな翼の両親に守られ、たくさんの兄弟たちと共に成長した。 でもある日、闇が来たんだ。 空は紫色に染まり、雷が轟き、木々は荒れ、森は黒い泥に侵食された。 巣は壊され、兄弟たちは散り散りになり、両親は残った兄弟たちを庇いながら息絶えていった。 残った兄弟たちも飢えに苦しみながらも、闇の中で飛ぶことはできず、やがて冷たくなった。 ボクだけが最後に残ったけれど、死期が近いのは察していた。 闇が晴れることはなく、もう嘆く気力もない。ただ静かにその時を待つことしかできなかった。 そう、死んだんだ。 鳥だったボクは闇に呑まれて死んだ。 あの闇が何なのかすら分からないまま、全てを失って死んだ。 にも関わらず、ボクは人間になって生きていたんだ。 小さな村に生まれた少年として暮らしていた。 鳥だった話を信じてくれる者は誰もおらず、作り話だと言われた。 それでも、村の人にはわからない鳥の言葉を理解し、会話できるという事実が、この記憶が作り話ではないという唯一の証明になっていた。 ボクは鳥たちに闇のことを聞いてまわったけれど、知る者は一人としていなかった。