ゲヘナの非常な日常

トリニティのある一区画の倉庫に2つの影があった。
一人は愛清フウカ、ゲヘナの給食部部長で、ゲヘナにとっての重要人物と言っても過言ではない人物。
もう一人は牛牧ジュリ、フウカと同じ、給食部に所属している頑張り屋さんである。
そんな二人が何故、トリニティの倉庫内にいるのかというと、誘拐されたからである。
そのため彼女達の姿は、全身をぐるぐる巻きにされており口は縄猿轡でくぐもった声になってしまい、大声で助けを呼ぶことも困難になっていた。
「むぐぅ……」
「むぅっむー!」
涙目になっているフウカを見てジュリはフウカに身を寄せて励ます様に呻き声をあげた。
ジュリも不安で堪らないはずなのにフウカを元気づけようとするその姿を見て少しばかり励まされたフウカだったが、それでも不安は消えることはなかった。
何故この様なことになっているのかというと、それは昨夜まで遡る。
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夜のゲヘナの食堂、そこではフウカとジュリがいつもの様に明日に備えて、食材の下拵えをしていた。
「フウカ先輩!こっちはこれでいいですか?」
「ありがとう。ジュリ、それで大丈夫。あとはこっちでやっとくから先にあがってて」
「いえ、フウカ先輩にばかり任せて私だけ休むわけにもいきません。私も手伝います!」
「そう?ありがとう。じゃあ、これもお願いできる?」
「はい!」
ドゴォォォ!!!
「きゃあ!」
「なんですか!?」
こうしたいつものやりとりをしていると突然近くの窓が割れ、手榴弾が投げ込まれた。
爆発は一番近くにいたフウカに直撃してしまい、フウカは気絶してしまった。
ジュリは結果としてフウカが爆発に対して盾になった形となり直撃は免れていた。
「ターゲットの気絶を確認、ターゲット以外にもう一人いる、意識は失っていない、どうする?」
「ヘルメット団!」
突然の襲撃に対して、その首謀者の所属をジュリは叫んだ。
誰かと通話していたヘルメット団は相手から承諾を経たのかジュリに向かって銃口を向けた。
「今から私の言う通りにしろ、もし聞けないのなら大事な先輩がどうなるかわかるよな?」
「うぅ……わかりました」
そうして、フウカとジュリはヘルメット団に捕まってしまい、ここまで運ばれてきてしまっのだった。

現在、明かりの付いていない倉庫内では今が何時なのか把握することができず、互いに身を寄せ合うしかなかった。
改めて自身の状態を確認してみても轡の方は縄が硬く結ばれ、二人で協力しても外せそうになかった。
体の方は全身を巻き付けている縄は身じろぎをしても緩む気配はなく、ジュリの方は胸が強調されただでさえ大きいのが寄り一層目立っていた。
つい、ジュリの胸を凝視してしまっている自分に気づき慌てて目線をそらすとフウカの反応に対して不思議な表情を浮かべているジュリに気づいた。
「ほぉしふぁんへぇふか」
「ふぁんへぇもはいふぁ」
「?」
こうしたどぎまぎしたやり取りを繰り返し、しばらくすると、外が騒がしくなった。
何があったのか確認しようにも足まで縛られている以上動くことは難しく、じっとしていると、倉庫のドアが爆発で吹き飛んだ。
「「!?!?!?」」
突然の出来事に二人が困惑していると、聞き慣れた人物の声が聞こえてきた。
「フウカさんとジュリさん、居たら返事をしてくれませんか〜」
「はふは!!」
声の主は美食研究会会長であり、フウカをよく誘拐している黒舘ハルナだった。
「ようやく見つけましたわ!私たち以外にフウカさんを攫うなんて許せません。皆さん発見しました!」
「やっと見つかったね〜」
「はい、もうお腹ペコペコです⭐︎」
「やったわ!これでご飯が食べられる!」
ハルナの呼び声にイズミ、アカリ、ジュンコが集まってきた。
いつもはフウカを誘拐する美食研究会だったが、今回は間違いなく、自分たちを助けにきたのだと感じた二人は安心から緊張が抜けてしまった。
「ほひあえず、ほえほどいえ」
安心した、フウカがハルナに自身に掛けられた縄を解く様にお願いするとハルナは笑顔でこの様な発言をした。
「さぁ、皆さん、二人を担いでそのまま連れて行きましょう♪」
「!?ほどいえ!」
「いいえ、解きませんわ。私たちのためにフウカさんに作って欲しいものがあるのでこのままです」
「むぐ〜〜!!」
「フウカさん達は載せましたね〜⭐︎じゃあ向かいましょう!」
こうして、助け出されたかに思えた二人だったが、結局いつもの様にハルナ達に給食部の車に載せられて誘拐されることになり、解放されるのはもう少し先の事になるのだった。

END

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