見えない雨のはなし

雨は降っていない。それなのに前の方から歩いてくるおばあちゃんが傘をさしている。ふと不安になって見まわしても、やはり雨は降っていないし誰も傘をさしていない。でも実は雨は降っていて、そのおばあちゃんにしか見えなくて。知らないうちに濡れそぼっているぼくたち、気が付かないぼくたちを横目にして、おばあちゃんは静々と歩いていく、というところまで想像した。すれ違った。

END

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