半年前に請負で仕事をしたのだが、そのときの契約が「請負だが納品物はあとで決める」というものだった。本来なら即お断りするのだが、仕事を請けていた人からの紹介——正確に言えば、仕事を請けていた人からの紹介で一度会った人から電話が来て、仕事をしてほしいとのこと——だったので一回だけ仕事をすることにした。
何回か打ち合わせを重ねるうちに、相手の指定したものを納品したらお金がもらえることになった。(いわゆる請負契約。)2ヶ月ほど経過した後、金額について後日話し合った結果、一括で15万、準委任なら時間あたり1000円ということになった。
いろいろ言いたいことはあるのだが、そのようなあまり人権のない金額が提示されたことがあり、憤った。小規模ながら、一人で打ち合わせからシステムを設計、プログラミング、テスト、納品までやっていたので、このような価格が提示されたことがショックだった。混乱の中、自信をなくしながら納品して即離れた。ここまでやってきたことは無駄だったのか、これからも社会にいるこのような人と関わっていくのか、と働く意欲がなくなった。
しかし、だ。
誰にでもわかるような成果を残していない以上、自分が何も持たない人間と変わりないし、この金額が妥当だと思われたのではないか。もしかしたら、他の人も同じように思っているのかもしれない。社会は想像以上にシビアだし、履歴書に書いてある「できます」も証明できなければ「できない」になってしまう。
つまり、初心者と同じように見えるから、初心者と同じ値段だったのでは?
だったら自分が初心者でないことを示せばいい。どうすればいいかは簡単だ。初心者に作れるものを、ずっと速く作るか、ずっとうまく作ることだ。だから、PHPで掲示板を作ることにした。初心者よりも、ずっとうまく。
実は以前、「Slimbbs」という、Slimframework(PHPのマイクロフレームワーク)を使った掲示板を作っていたのだった。このときは、2000年ごろに書かれたPHPの掲示板を趣味でリファクタリングしたあとに、もっとうまくできるのではと思ったことがきっかけで作ったのだが、初心者にしてはうまく書けていたのではと思う。
今回はこれを大きく超えるものを作ることができれば、自信も回復するはずなので、作り始めた。
——なお別の選択肢として、OSSでWebサービスを作って運用するというものがあるが、飽きっぽく真面目なので、人が関わるサービスは勝手にやめられないこともあり、おそらく21世紀に使われることはないと思われるPHPの掲示板を選択した。
結果から言うと、人並みの自信は付かなかった。
(他のこともしつつ)5ヶ月かけて作ったのが「Slimbbs2」で、まだ作っている途中。作り始めてから、ほとんどのことを全然知らないことがわかった。
知らないことが多すぎて、「世の中のプログラマはこういうことおおむね全部知ってる(もしくは知ってる人が近くにいる)のだろうけど、自分はそうじゃない。取り残されている…」と感じていた。おそらくそんなことはないだろうけど、一人でやってるから余計にそう感じてしまうのかもしれない。
結局のところ、掲示板を作ったところで人並みに利益を生み出すだけの実力があるのかどうかもわからなかった。でも、基礎的なことをやれたことはよかったし、知らないことを知ることができたし、(テストファーストじゃないけど)TDDで開発ができたことはためになった。
まあ「10日でできるPHP〜掲示板を作ろう〜」みたいなコンテンツがあるわけだし時間かけすぎだろ、と思わなくもないけど、お金にならない掲示板に5ヶ月も黙々と取り組んでいるのだから、この「他人の目を気にせずに自分で調べながら何かを作っていくスタイル」は自分にとって向いているのかもしれない。今までも、請負で自宅で黙々と作るスタイルで納品してきたわけだし。(ただ、一回偽装請負風の仕事をやったときもはかどった気がする。逆に働きすぎて休憩しろって言われたけど。)
そういうわけで、仕事を休んで勉強すると非常にためになることがわかった。自分で仕様を決めてコードを書いていくことは、あまりストレスがたまらないこともわかった。もう少しできりのいいところまで作れるので、それから仕事を見つけたい。(できれば自宅で黙々と作ることができる仕事を。)