--- Title: 【シナリオメモ】アルフレッド Author: imber_ain Web: https://mimemo.io/m/Mzm71lmjrw4KLYj --- 【セリフ】 「……少し、昔話をしよう。彼者誰時の煤埃に埋もれた彼等の話を」 >ヘルメスの唯一の弟子であるコレット・ピエレット(愛称ココ)の幼馴染。   弱き人々の為に『錬金術』という未知の技術を扱うヘルメスに感銘を受け、強引に弟子入りしたココを護る為に、テオドールはココと一緒に街を出た。 辛い事も沢山あったが、それ以上に嬉しい事や大事な知り合いが増えていく旅は、テオドールの人生では一番楽しかった時間であった事に間違いなかった。 長い旅の末に『人は力を得ると悪性変化する、この旅に意味などなかった』と判断し知識の探求のみを開始したヘルメスと、『それでも人の善性を信じ、弱き人の助けになりたい』と考えたココは仲違いし、袂を別つ事になった。 「コレット・ピエレットを知ってるかい」 「そう、君のご先祖にして起源だ。テオドールはコレットの幼馴染だった」 「僕が出会った頃、彼らは旅の途中だった。ヘルメスは弱き人々の為に『錬金術』を用いて恩恵を齎し、それに感銘を受けたコレットが弟子入りし……テオドールはコレットを護るために共にいたと記憶している」 「……まあ、コレットは天真爛漫だったが危なっかしい子だったからね。しっかり者のあの子がそう決断するのも納得だ」 「旅は……とても楽しかった……。ヘルメスと、コレットと、テオドールと……数々の出会いはかけがえの無い経験だった」 「良いことばかりではないよ。辛いことも勿論あったさ。だが、僕は唯一の大人だったからね。嘆くよりもあの子らを護っていたかった……その必要はなくとも」 「しかし、世界は綺麗事ばかりで出来てはいない」 「旅の末、ヘルメスは結論を出した」 『人は力を得ると悪性変化する。この旅に意味などなかった』 「……ヘルメスは、知識の探求を始めた。それを止める術など、……止める権利など、なかった」 「一方で、コレットは……なおも人の善性を信じた。弱き人々の助けになりたいと、かつてのヘルメスのように願い、袂を別った」 > テオドールは、その後もココと数人の仲間と共に錬金術で人を助ける旅を続けた。 人の醜さに辟易する事もあったが、それでも人の善性を信じ皆と一緒に多くの国を回った。 「悩んだよ。迷ったさ。僕は、ヘルメスを否定できなかった」 「ただ、そうだね……テオドールは迷わずコレットを信じた。その後もコレットと共に人助けの旅を続けた。結論は出なかったが、僕もまた旅を続けることにした」 > 数年後、ヘルメスは多くの人間を材料とする事で賢者の石という物質を作る事に成功し、圧倒的な力を使い欲望の赴くままに非人道的な研究を繰り返している事を、旅の中でココ達は人伝に知る。 師であるヘルメスを止める為に、ココは旅の中で集めた希少な物質と錬金術に加え、長い旅で知り合った沢山の人達の協力の元に、第五元素(レネゲイド)を封印する事に特化した4本の遺産を作り上げる。 「不変とは、実に甘美なものだ。今日と同じ明日など、――ある筈もないのに」 「旅の最中で、ヘルメスの話が聞こえてきた。多くの人間を材料とすることで賢者の石を作り出す事に成功した、ヘルメスの話が」 「……」 「いや、……ともあれ、我々は当然、それを認める訳にはいかなかった」 > コレットは、あらゆる種類の鉱石を混ぜ合わせた金属で造った剣を握った。 テオドールには、空より墜ちし星の欠片で造られた剣が渡された。。 ―――には、何百年も太陽の光を浴びた巨大樹で造られた装飾具が渡された。 ―――には、何百年も月の光を浴びた宝石で造られた装飾具が渡された。 加えて、遺産を作る旅の中で知り合った仲間の一人が、自らの家に伝わる遺産を用いて戦う事を決めてくれた。 「覚えているかい。いや、もう思い知っただろうか」 「コレットが多くの協力の元、作り上げた第五元素を封印する遺産。その形は違えど、どれも素晴らしい逸品だった」 「封印者と、墜星の剣。太陽樹と、月光石の装身具」 「……僕は元々遺産継承者でね。これでも古くから遺産の管理をしてきた。コレットに授かる物はなく、自らの遺産を引っ張り出してきて彼女らの後押しをしたわけだ」 > そして5人はヘルメスを止めるべく、戦いに臨んだ。 結果として、ヘルメスを倒すには至らなかったが、賢者の石を封印する事でヘルメスの力の大半を封じる事に成功した。 その後、数百年間はヘルメスの作り出した遺産を利用した事件こそ起こったものの、ヘルメスが表立って活動する事はなかった。 「結果は、ヘルメスは今も生きている――それが答えだ」 「賢者の石を封じる事でヘルメスの力を封じる事には成功した。遺産を利用した事件こそあったものの、その後しばらく、彼女は表舞台から姿を消した」 > 師の暴挙を止めたココは、4本の遺産を封印した後に旅を再開する。 そして、錬金術の力で人を助ける旅の中で家庭を持ち、次代へと錬金術が伝わり、次第に世界へ広まっていった。   旅の中で、古代種のレネゲイドに感染したテオドールは、皆と同じ時間を生きて死ぬ事は叶わなかった。 そんなテオドールにココは一つだけ願い事を残し、この世を去った。 「いずれ師であるヘルメスが動き出す、その時は世界を護って欲しい」と。 テオドールに断る理由など無かった。 コレットの騎士として……一番の親友として、必ずその願いを果たすと誓った。 例え、汚名にまみれようと、己の命を失おうと――必ず果たすと誓った。 「その後の話は、殆どが伝聞だ。なに、僕は旅から落伍した。隣に立ち並ぶには……もはや、欠格だったのだ」 「最後の時だけは立ち会ったがね。僕にとっては、皆、かけがえのない子たちだった。数年の時を経て、時折話をして、少し離れた位置で……僕は皆を見守った」 「コレットは願った。『いずれ師であるヘルメスが動き出す。その時は世界を護って欲しい』のだと」 「唯一変わらぬ者に……もう、分かるだろう」 「テオドールだ」 > それから長い長い時が流れた。 テオドールは己を鍛え、ピエレット家を見守り続けてきた。 あの高潔で善良なコレットの血を引く一族が、錬金術やオーヴァードの力を使い財を稼ぐ事に溺れる様を見続けてきた。 相変わらず世界では争いが続き、まるでココ達と行った旅など意味が無いと否定された気がした。 もちろん、世界の全てがそうだった訳ではない。 だが「ヘルメスの言う事は、ある意味で正しかった」とさえ思うほどに心が昏くなっていくのを感じていた。 「君たちには想像もつかない年数を彼は過ごした。その間、旅の中で家庭を持ったコレットの、……ピエレット家を見守り続けた」 「あのコレットの血族が、欲に、俗世に、溺れる様を見続けてきた」 > テオドールは自分の心が何処で壊れたかは覚えていない。 それを辿るには、思い当たる事が多すぎた。 それでも、壊れた心で、絆も感じられなくなってしまった心で、ココの願い事を己の欲望に置き換えた。 そうすれば、テオドールは自分の中に唯一残った"成すべき事"を成せるはずだと思った。 そして、欲望となった願いを叶える為、倫理を問わず、情に流されず、成すべき為を成す為にどんな事であろうと行った。 「テオドールが何を思ったかは、もう分からない、か」 「しかし、結果は君たちに降りかかった。それだけは紛れもない真実だ」 > ヘルメスは既に動き始めていた。 テオドールが一人で彼女を止める事など、絶対に不可能な事は分かっていた。 テオドールは考えた。 長き時の中で更に力が増したヘルメスを止める為に、どうすればいいのかを。 しかし、方法などあるはずも無かった。 堕落した今のピエレット家と形だけの儀式で選ばれる太陽と月と星の騎士では何の役にも立たない。 そもそも、仮にあの頃の5人が揃おうともはや肥大したヘルメスの力に敵うはずも無い。   ……絶望しか残されてなかった。 自分には託された願いを果たす事ができない。 そうしてテオドールは更に心を昏く暗く染めていった。 「形骸化した儀式を、どんな感情を以て見てきたのだろうね。本来ならば、気高く、善良な者を据える、儀式を」 「太陽と月と星の騎士。……もはや、懐かしい響きだ。今に至っては意味もない」 「いや、この話は今はいい。僕の個人的な話だ」 (「恨みつらみを吐いたところで、僕は凡人の域を出ないただのおじさんさ」) > そして、絶望の日々を送り続けたテオドールは、リゼット・ピエレットに出会った。 天真爛漫で才能に溢れ、言動は尊大だが人を助けるのに理由など必要としない。 まるでコレットの生き写しのような少女だった。   テオドールはもう一度考えた。 ヘルメスを止める為に、どうすればいいのかを。 導き出した答えは、ヘルメスの動向を探り、この子を護り…… 最後に、彼女と彼女の選んだ騎士に全てを託す事であった。 「……だが、まあ、なるほど」 「君は……コレットによく似ている」 「考えたのだろうさ。もう一度、コレットと立ち並ぶに相応しい君と、とね」 「ヘルメスはすでに動き出した。僕らの全盛期を以てして勝ち得なかった力を再び蓄え、計り知れない領域へと到達している」 「全く、厄介なものだ。あの子が護った君たちを、……」 > ――そうして今、テオドールは役目を終えた。 出来る事ならリゼットと共に歩みたかったが、汚れ切ったこの身では君の横に並び立つ事はできない。 それに自分を打ち破ったこの者達であれば、必ずヘルメスを止める事ができるだろう。   ……死にゆく彼の顔は安らかだった。 「長話をしてしまった。僕から語れる事はそれだけだ」 >【キャラシ公開】 「いずれ師であるヘルメスが動き出す、その時は世界を護って欲しい」 「でもテオが辛かったら逃げていいし、誰かに任せてしまっていいよ。とにかく自分を大切にしなさいよね」 「――ああ、でも」 「ココの願いは、それだけではなかったのに」 『でもテオが辛かったら逃げていいし、誰かに任せてしまっていいよ。とにかく自分を大切にしなさいよね』 「テオは、あの言葉を……。いや、もう、(遅い)」 「テオドールが何を想い、君たちに、君に託したのか……よく考えるといい」 「太陽と月は相互に空を照らしている。星は再び光を齎さんと瞬いた。正しき日常がこの先も続くことを願っているよ」