オーランド:所持していたセレスバッドをシヴァルに提示して「彼らの助けが欲しいかね?過去の症例では、セレスバッドの服用が門の開閉に有効的だが…ご希望なら処方するが」
シヴァル:螺旋階段で見た絵画を思い浮かべ、オーランドの言に従うことの危険を理解する。シヴァルの選択はエンディング分岐次第。
ピアス:門に飛び付くように調べるが、武器で破壊できるものでないことを直感。作中で一度もあげたことのない獣のような唸り声をあげる。
ヴェセル:ゆっくりと門に歩み寄り、ノックするかのようにコン、コンと叩く。「邪教の儀式については専門外だが…僭越ながら、主賓(鍵と器)が足りてねえんじゃないかね?」
シヴァル視点。オーランドへ、門の向こうの影へ、もう一度オーランドへ視線を向ける。覚悟を決めたシヴァル「地上の街で見たものは幻じゃなかった。貴方の言う楽園も同じなのか?」オーランド「もちろん。だからこそ私は安定した観測を熱望してきた」シヴァル「…そう」一つ頷くと、シヴァルは自ら台座に身を乗せる。オーランド「処方希望ということかね?」シヴァルは、つ、と静かな眼をオーランドへ。それはまるで女王の一瞥のよう。シヴァル「必要ない」直後、蓮が自ら花弁を閉じるように白い聖室の岩壁が収縮、いや集束する。押し潰すのではなく、新たな次元へと聖室の中の者を産み出すように。聖室の外にいるピアスとヴェセルは、亀裂が白く輝いて閉じていく様を見て狼狽する。「シヴァル!!」悲痛に名を呼ぶその声がどちらのものだったのか、シヴァルだけは感じ取ったかもしれない。オーランドは魅入られたように、聖室そのものと、その向こうを一瞬たりと見逃すまいと目を瞠っている。オーランド「ああ…サンプルは全て揃っているのに…まだ実地検証が…いや、どうでもいい。未知の症例だ…!」
シヴァルが台座に身を横たえるまでの展開は同一。「処方希望かね?」に対し、シヴァルは射るような眼を向ける。シヴァル「…貴方のようなひとは、制御できなかった場合の対処も用意していると思う。違う?」オーランド「医師として必要な準備だね。むろん私に想定できる限りのことならば。」シヴァル「…あの二人も?」オーランド「想像力を超える事態は常に起こりうるが、それも含めての範囲内というのであれば、イエスだ」シヴァル「…わかった」仮に自分が暴走したとして、オーランドまたは門の向こうの二人が事態を収拾することに、シヴァルは賭けた。万一、事態が収拾できなかった場合は…僕ごと全てを封じよう。セレスバッドを投与されたシヴァルから千の蓮が花咲く…
敗北した場合は、異形のシヴァルは倒れ伏すピアス&ヴェセルを無言で見詰める。それが悲哀なのか失望なのか…。オーランドははっきりと失望&皮肉な表情「こちらのサンプルは破棄するしかないな。蓮花ほどの適性はなかったということだ」異形シヴァルは、歎息とも淡い喘ぎともつかない息を吐いて、…あとはSealedと同様に全てを封じる。スタッフロールの後に、水の中で蓮の根に絡め取られ、どこか胎児のように眠る養分たち(ピアス&ヴェセル)。
瀕死の状態でメルミュートを投与され、異形から元の姿に戻ったものの、どこか穏やかな…世界も他人も霧で包まずに済んだことに安堵するかのような表情で言葉もなく息絶えるシヴァル。何が起こったか分からないような顔で弟を膝に抱くピアス、凍り付いたように歯噛みするヴェセル。オーランド「残念という表現では言い尽くせない。実験の可能性を無限に秘めた逸材だったのに…生体反応と遺体の解剖は雲泥の差だ」飄然とした発言に、二色の眼光が無音の灼熱となって突き刺さる。オーランド「…数百年に一度あるかないかの希少な検体だったのだ。蘇生の可能性を検証してみたいのだが、助手の意思はあるかね?」三人を見下ろすかのような視点、ピアスとヴェセルの表情は映らぬまま画面が暗転して、スタッフロール。
メルミュート投与、人の姿を取り戻し弱々しいが呼吸しているシヴァル。壊れ物を扱うかのようにピアスがその身体を抱き寄せる。ヴェセルも悪戯っぽく、だが想いを込めてシヴァルの目元、頬、口元に手の甲を滑らせ、呼吸を確かめる。聖室はただの乳白色の空洞に戻り始めており、門の亀裂も窄まり始めている。「これは単純な忠告だが、出口はそちらだよ。もし帰宅するつもりなら、急いだ方がいいだろうね」オーランドの声の方を振り返ると、彼は台座の反対にある、門とそっくりな亀裂の前に立っている。ヴェセル「今更だけどさ。あんた正気?」オーランド「記録にあるとおりさ。幾度か実際に開かれてきた扉だよ!だが、私の人生でまた開かれる機会はないだろう。他に選択肢があると思うかね?」ピアス「勝手にさせろ。俺達はもう、ここに用はない。二度と戻る事もない」オーランド「仮に君たちが今後も共にあるつもりなら、その決意(二度と楽園の扉を開かない)を絶対にすることは難しいと愚考するが。まあ、お互いに好きにしよう。では、幸運を」オーランドは楽園側の、三人は来た道の門を通る。暗転した画面に閉じていく花弁の形の亀裂(産道)。やがて画面は青空を映す。霧は晴れて、後部座席でぼんやりと黒い革のジャケットの前を「かきあわせる」シヴァル(=ジャケットを恐れていない)。ピアス「温かいものでも飲むか?」シヴァル「ええと…寒くはない。ありがとう。僕、どうしてたの?頭がぼうっとして…」ヴェセル「まあ、積もる話はあとにしようや。天気のいいうちに、落ち着ける場所に…だろ?」言って車のラジオを付ける。無論ノイズなどない。ずっと一緒にいよう、という爽やかな歌詞と共にスタッフロール。
ピアス&ヴェセル視点。獣の唸りを上げるピアス、ノックして「主賓が足りてないんじゃない?」のヴェセル。内部からの返答は、音声もジェスチャーもない。すっと表情を消した真顔のヴェセル「あのプランはいけそうか?」同様に静かな顔のピアス、無言のまま薄紅の亀裂へと、今度は探るように指を這わす。最初は中心に触れようとしたが、直前で手を止め、掌を上に向けて、撫で上げるように。誰に学んだはずもない、だが熟知しているかのような、迷いのない指先。ピアスの唇が音もなく何かを唱える。
聖室内部。オーランド「セレスバッドを、ご希望なら処方するが」先程まで射るように自分を貫いていた眼が、いつしか虚空を凝視していることにオーランドは気付く。シヴァルは立ち尽くしたまま、どことなく弛緩して、だが同時に緊張した気配で、何かに耳目を凝らしている。瞑想するように、鼓動の速さで胸が呼吸している。不意に、串刺しにされたようにシヴァルの身体が跳ねて、聖室の全体へと亀裂が拡大する…同時にシヴァルの全身にも、まるで千の瞼のように、白蓮のようでもあり薄紅のようでもある、光を放つ切れ目が走った。魅入られるオーランドの背後から腕を捻り上げて地面に引き倒すのは、慣れた手付きのヴェセルだ。ピアスはオーランドに見向きもしない。ごく自然に弟のもとへ吸い付いた視線と、同じ方にヴェセルの眼も向けられている。…聖室自体が、呼吸するかのよう。一定の間隔で柔らかく鳴動して、明滅する。鼓動の音に思えたそれに、いつしか淡い羽音が混じり…白蓮の花弁のような「瞼」から、こぽり、と溢れるかのように「神」の幼体が産まれ始めた。
神の子を分娩して、虚ろな眼で崩れ落ちたシヴァル。オーランドは、顕現した直後の神の餌となり、好奇に輝く表情のまま事切れている。死闘のすえ瀕死のピアスは、最期の力で「弟」に覆い被さろうと地面を這い進む。その姿を、不思議なものを観察するように、神の子はしばし無為に宙に羽音を響かせながら眺めているようだった。その羽音が再度響きを変えて、神が動きだしたことを悟り、ピアスは絶望の呻きを上げる。弟の元に辿り着くには遠過ぎた。だが神が向かったのは「母胎」のもとではなく、ピアスと同様に奇妙に捻れた形で横倒しになっていたヴェセルの…画面に愕然としたヴェセルの顔が大写しになり暗転。
画面が切り替わり、ほのかに白く滲む煌々とした満月の夜が映る。場違いなまでに、それは幻想的に美しい。月下に佇むものは、黒々とした紺青の蓮池を見下ろす白亜の城(ホテル)だ。最上階のバルコニーには、大きな寝椅子に仲睦まじく寄り添うヴェセルとシヴァル。ヴェセルは満足そうな微笑を浮かべているが、瞳はどこか無機質な複眼のよう。シヴァルの表情は抜け殻だ。ヴェセルの姿をした者が「后」から視線を離さず、先を見もせずに手を伸ばすと、無表情の「ドローン」となったピアスが琥珀色のよく冷えたドリンクを手渡した。「蓮の王」は、口に含んだ蜜を優しく「妻」の唇に流し込んだ。
オーランドはトゥルー敗北と同様に死亡。崩れ落ちたシヴァルに駆け寄ったピアス&ヴェセルは、ノーマルエンドと同様に生存を確認。そのままシヴァルは意識を取り戻す。シヴァル「…僕はまだ人…?」ピアスは愛しげに苦笑して「そんなことを心配する必要はない」ヴェセル「話は後、後」シヴァルを抱き上げて聖室をあとにする、その後ろ姿を映して暗転。画面を転じて、青空。シヴァルは黒いジャケットに包まり、ヴェセルの手渡した温かそうな缶飲料に口を付けます。霧が出る気配もない車外を、まだ少し信じられないような顔で見上げるシヴァル。ややあって、まだ出発していない車の前方を見ると、運転席のピアスとヴェセルが振り返ったまま、無言でシヴァルを待っています。シヴァル「『僕たち』どこへ行くの?」その言葉は自然と三人を一つに束ねています。無表情だがどこか今までより穏やかなピアス「落ち着けるところへだ」ヴェセル「折角だから、一番いい所を探そうぜ。俺達の『楽園』みたいなところを」緊張感のない、いっそ不謹慎なヴェセルの言葉に、それでもシヴァルは苦笑いします。「普通でいいよ」車外から後を追うようなカメラになり、やがてノーマル同様のラジオの歌(バラードアレンジ)の中でスタッフロール
トゥルーB同様、シヴァルの生存を確認。意識を取り戻したシヴァル「僕はまだ人…?」を抱いて聖室をあとにするまでは同一の展開。青空のもと、先に車を確認して戻ってきたピアスがシヴァルにジャケットを着せ掛けます。シヴァルは困惑の表情で、ジャケットからピアスに視線を移動させます。ピアスは奇妙に満足した表情で「…ゆっくりでいい。落ち着ける場所へ行こう」。ヴェセル「大丈夫?なんか食えるところ寄ろうぜ、もう限界だわ」シヴァルはヴェセルを見詰めます。シヴァル「…話ができる?沢山のこと…」(シヴァルは、この誘拐も何らかの事情があったのか?と希望的観測を抱き始めています)ヴェセル「もちろん!」ピアス「食料と、飲料と、寝床だ」僅かの間、シヴァルは考え込みますが、彼らの言葉はごく自然に思えます(初見プレイヤーには、単にシヴァルが教団のせいで混乱して不安なだけに見えるように)。躊躇いながら頷いたシヴァルの手を引いて、ヴェセルは優しく後部座席に載せ......無音のなか、「カチリ」という音が大きく響きます。先に車に戻ったピアスが、ダッシュボードから取り出した手錠を無造作に運転レバーの隣のスペースに置くカット。それを拾い上げて慣れた手付きでシヴァルの手首に嵌める笑顔のヴェセル。一瞬、三人の構図は礼拝堂地下の「結環」の絵画のリフレインとなる。満月のように澄んだ瞳を瞠り、手錠を凝視するシヴァルを正面から映したまま、「バドワイザー欲しい今すぐ」「先にガソリンだ」などと何の異常も感じられないピアスとヴェセルの声音が遠く響いて、スタッフロール。曲はノーマルやトゥルーBと同じ曲の、いかにもホラーらしいハードなメタルアレンジ(CMのやつ)。