--- Title: 大正孤月横丁参丁目曲ガリ角ニテ Author: shizuruchandesu Web: 'https://mimemo.io/m/xpgOEoQYDKoDWnZ' --- ここ帝都は、人間と物の怪が共存できる都として賑わっていた。 彼らは、祭神政府が制定した「十二時辰法」によって、 日が昇って目を覚ませば、人間の時間。 日が暮れて夕日が沈んだら、物の怪の時間。 として一日を二分割し、均衡を保った生活を営んできた。 しかし、文明開化により生活様式が少しずつ変化し、物の怪たちの活動可能範囲が徐々に狭まることが危ぶまれたため、祭神政府は十二時辰法の改正を検討することになった。 それに対して不満を持った物の怪たちが、十二時辰法に違反し人間の時間に悪事を働くようになり、 無力な人間は団結し、物の怪を誅する計画を立て始めた。 人間と物の怪は仲違いし、帝都の治安はますます悪くなるばかり。祭神政府もこれには手を焼いていた。 そんな時代に、「まほろば食堂不知火道本店」は、人間と物の怪を繋ぐ唯一の場所として栄えていた。 人間も物の怪も関係ない、疲れた体を癒す憩いの場。 従業員は皆“訳アリ”である。 この食堂では、従業員の人間と物の怪が二〜四人組になって、担当の卓の調理から接客までをこなす。 この食堂で食べれない料理はない、と言う噂は本当だ。 ただ、政府非公認で営業しているということだけが難点だが……。 帝都のはずれ、大正孤月横丁。 入り口にある大きな鳥居を抜け、特徴的な赤提灯を辿れば、そこが参丁目。 ハイカラな劇場を右へ曲がると、一際暗い路地、不知火道がある。 その奥にあるのが、今にも看板が落ちそうな古びた木造の食堂。 そこでは、今宵も愉快な従業員たちが君の来店を待っている。