これは私たちが紡いだ希望の物語  No. version 76

2022/04/22 05:20 by someone
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流星と焔 No.1 1/2
朝憬市望海町に異形の怪物が出現した——。燎星心羽の下にその報せが届いたのは、2020年4月12日の午後3:20過ぎのことだった。
朝憬市立望海中学校で化学Ⅰの授業を受けていた彼女の右手の細いブレスレットが淡く光る。それは心羽の従者からの合図。気は張っていたが、よもや授業中に合図が来るのは想定外だった。慌ててブレスレットをしていた右手首を、制服であるブレザーの袖に竦めるように隠す。
”もう、何で今なの…——”
話の聞き取りやすい化学の担当教師の飯山と、その授業内容を好ましく思っていた心羽は、不意に起こった急を要する事態に面食らった。しかし余程のことでない限り、従者が心羽の生活を害することはない。それ程の状況である以上、動かないわけにもいかない。心羽はおずおずと飯山に言った。
「あの、先生すみません…」
「燎星さん、どうしたの?」
おっとりとした女性である飯山の優しい声が続いて響く。その目は心羽の様子を窺っていた。
「ちょっと気分が良くなくって…」
ブレザーの袖と共に右手首を左手で抑え、辛うじて言葉を続けるも気まずさに最後は言い淀んでしまう。
「こっちゃん、大丈夫?」
「保健室、一緒に行こうか?」
自身の隣の席に座っていた親友の安純日菜と中川香穂の二人が、心羽の様子を窺いながら言った小声に、「ううん、大丈夫」と返す。しかし周囲の生徒の注目を浴びつつ、嘘をつかねばならぬ状況を心羽は恨めしく思って俯いた。飯山の目にはそれがどう映っただろうか。
「そう、時間も時間だけど…」
「早退でも、いいですか?」
こちらの意図をそれとなく汲んでくれたのか、渡りに船の思いで言った心羽の言葉に飯山は「しょうがない」と前置きして応じた。
「担任の羽原先生には…」
「私達が伝えとく。先生、いいですか?」
「わかった。じゃあ二人にそうしてもらって」
日菜と香穂の反応と、飯山にからの承諾に心羽は胸を撫で下ろす。
「ありがとう、ごめんね…先生、失礼します」
それと同時に申し訳なさと感謝を挨拶に交えて伝え、心羽は静かに理科室を抜け出した。

—————————————————————————————

そのまま自身の教室である2年A組に置いた荷物を取り、心羽は周囲に気を払いつつも校舎の屋上へと階段を駆け上がっていく。そうして屋上の出入り口の戸を開けると、従者は既にそこに居た——正確には従者である梟は屋上の鉄柵に留まっていた。
「お嬢様、エクリプスです!」
「こんな時間からなの!?」
梟の嘴から、その鳴き声と共に紡がれる魔法の言葉——彼女の敵である存在が、白昼堂々暴れているというその報せに、心羽は驚愕の声を上げる。梟はその身を竦ませるように翼を折り、魔法の言葉をまごつきながらも続けた。
「ええ、お嬢様の学校生活を害したくはありませんでしたが、状況が状況故にお呼びしないわけにもいかず…」
「それは大丈夫だけど、場所は?」
「望海町の東、住宅街付近です」
梟とのやり取りの中、心羽はすぐに周囲の見渡して校舎外の人の気配を探る。そして誰もいないことと方角を確認すると、脚に力を込めた。同時に魔法の力も込めた両脚に、魔力の流れる赤い光が走る。その様に梟が驚愕の鳴き声を上げた。
「お嬢様!人に見られます!」
「この方が速いから!ほらエウィグ!」
「ああ、もう…」
その制止に構うことなく心羽は右手を掲げると、梟——エウィグはその手に留まる。そして魔法の光と共に自身を梟の姿から、右手に宿るもう一つのブレスレットに変化させた。それを受けて心羽はそのまま跳躍して屋上の鉄柵を飛び越える。赤い髪が、高低差から来る風に舞い上がった。
その制止に構うことなく心羽は右手を掲げると、梟——エウィグはその手に留まる。そして魔法の光と共に自身を梟の姿から、右手に宿るもう一つのブレスレットに変化させた。それを受けて心羽はそのまま跳躍して屋上の鉄柵を飛び越える。ミディアムボブの赤い髪が、高低差から来る風に舞い上がった。
そして距離にして校舎から北、30メートル先の一般道に着地すると、そのまま前傾姿勢で疾走する心羽に、エウィグは窘めるように苦言を呈する。
「見られてたらどうする気ですか!?」
「大丈夫、ディスルプション(かく乱魔法)はもう掛けてるから!それよりも警察は?」
「もう現場には来ております」
素早く道を駆ける心羽だが、街の人々は彼女がそこを駆ける時は決まって余所を向いていた。一般人を超えた速度で疾走する女子中学生の姿を、彼らが認めることは無い。その疾走の中、続けて心羽は状況を確認すべくブレスレットのエウィグに今一度問う。
「人は多い?」
「いえ、警官が主です。住民は退避しています」
「良かった。それならチェンジ(変身)とディスルプション掛け合わせ何とかなる」
「ええ、もうすぐですお嬢様!」
「いえ、住民は退避しています。しかし警察に通報している人もまた居られました」
「良かった…じゃああ人たちが来るま」
「ええ、人の居ない場所へ…現場はもうすぐですお嬢様!」
エウィグがそう告げた時には、既に街並みを少し外れた住宅街への坂道に差し掛かっていた。流石に息が上がりはするが、心羽は止まることなく自身の内に湧きあがる力を開放する。街を、人を守る意思をその詠唱に込めて。
「チェンジ、フレイミングドレス!」
その詠唱に呼応するかのように、心羽の身体を赤い魔法の光が包んだ。瞬時にその光と神秘、どんな堅牢な鎧や盾よりも彼女を守る焔のドレス形成する。その詠唱に呼応するかのように、心羽の身体を赤い魔法の光が包んだ。瞬時にその光と神秘によってより鮮やかな赤みを増した髪に、虹色の髪飾りが添えられる。そこにどんな堅牢な鎧や盾よりも彼女を守る焔のドレス形成された。そして腰にマントを翻して跳躍すると、心羽はそのまま暴れているエクリプスに飛び掛かった
      

朝憬市望海町に異形の怪物が出現した——。燎星心羽の下にその報せが届いたのは、2020年4月12日の午後3:20過ぎのことだった。
朝憬市立望海中学校で化学Ⅰの授業を受けていた彼女の右手の細いブレスレットが淡く光る。それは心羽の従者からの合図。気は張っていたが、よもや授業中に合図が来るのは想定外だった。慌ててブレスレットをしていた右手首を、制服であるブレザーの袖に竦めるように隠す。
”もう、何で今なの…——”
話の聞き取りやすい化学の担当教師の飯山と、その授業内容を好ましく思っていた心羽は、不意に起こった急を要する事態に面食らった。しかし余程のことでない限り、従者が心羽の生活を害することはない。それ程の状況である以上、動かないわけにもいかない。心羽はおずおずと飯山に言った。
「あの、先生すみません…」
「燎星さん、どうしたの?」
おっとりとした女性である飯山の優しい声が続いて響く。その目は心羽の様子を窺っていた。
「ちょっと気分が良くなくって…」
ブレザーの袖と共に右手首を左手で抑え、辛うじて言葉を続けるも気まずさに最後は言い淀んでしまう。
「こっちゃん、大丈夫?」
「保健室、一緒に行こうか?」
自身の隣の席に座っていた親友の安純日菜と中川香穂の二人が、心羽の様子を窺いながら言った小声に、「ううん、大丈夫」と返す。しかし周囲の生徒の注目を浴びつつ、嘘をつかねばならぬ状況を心羽は恨めしく思って俯いた。飯山の目にはそれがどう映っただろうか。
「そう、時間も時間だけど…」
「早退でも、いいですか?」
こちらの意図をそれとなく汲んでくれたのか、渡りに船の思いで言った心羽の言葉に飯山は「しょうがない」と前置きして応じた。
「担任の羽原先生には…」
「私達が伝えとく。先生、いいですか?」
「わかった。じゃあ二人にそうしてもらって」
日菜と香穂の反応と、飯山にからの承諾に心羽は胸を撫で下ろす。
「ありがとう、ごめんね…先生、失礼します」
それと同時に申し訳なさと感謝を挨拶に交えて伝え、心羽は静かに理科室を抜け出した。

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そのまま自身の教室である2年A組に置いた荷物を取り、心羽は周囲に気を払いつつも校舎の屋上へと階段を駆け上がっていく。そうして屋上の出入り口の戸を開けると、従者は既にそこに居た——正確には従者である梟は屋上の鉄柵に留まっていた。
「お嬢様、エクリプスです!」
「こんな時間からなの!?」
梟の嘴から、その鳴き声と共に紡がれる魔法の言葉——彼女の敵である存在が、白昼堂々暴れているというその報せに、心羽は驚愕の声を上げる。梟はその身を竦ませるように翼を折り、魔法の言葉をまごつきながらも続けた。
「ええ、お嬢様の学校生活を害したくはありませんでしたが、状況が状況故にお呼びしないわけにもいかず…」
「それは大丈夫だけど、場所は?」
「望海町の東、住宅街付近です」
梟とのやり取りの中、心羽はすぐに周囲の見渡して校舎外の人の気配を探る。そして誰もいないことと方角を確認すると、脚に力を込めた。同時に魔法の力も込めた両脚に、魔力の流れる赤い光が走る。その様に梟が驚愕の鳴き声を上げた。
「お嬢様!人に見られます!」
「この方が速いから!ほらエウィグ!」
「ああ、もう…」
その制止に構うことなく心羽は右手を掲げると、梟——エウィグはその手に留まる。そして魔法の光と共に自身を梟の姿から、右手に宿るもう一つのブレスレットに変化させた。それを受けて心羽はそのまま跳躍して屋上の鉄柵を飛び越える。ミディアムボブの赤い髪が、高低差から来る風に舞い上がった。
そして距離にして校舎から北、30メートル先の一般道に着地すると、そのまま前傾姿勢で疾走する心羽に、エウィグは窘めるように苦言を呈する。
「見られてたらどうする気ですか!?」
「大丈夫、ディスルプション(かく乱魔法)はもう掛けてるから!それよりも警察は?」
「もう現場には来ております」
素早く道を駆ける心羽だが、街の人々は彼女がそこを駆ける時は決まって余所を向いていた。一般人を超えた速度で疾走する女子中学生の姿を、彼らが認めることは無い。その疾走の中、続けて心羽は状況を確認すべくブレスレットのエウィグに今一度問う。
「人は多い?」
「いえ、住民は退避しています。しかし警察に通報している人もまた居られました」
「良かった…じゃああの人たちが来るまでに」
「ええ、人の居ない場所へ…現場はもうすぐです、お嬢様!」
エウィグがそう告げた時には、既に街並みを少し外れた住宅街への坂道に差し掛かっていた。流石に息が上がりはするが、心羽は止まることなく自身の内に湧きあがる力を開放する。街を、人を守る意思をその詠唱に込めて。
「チェンジ、フレイミングドレス!」
その詠唱に呼応するかのように、心羽の身体を赤い魔法の光が包んだ。瞬時にその光と神秘によって、より鮮やかな赤みを増した髪に、虹色の髪飾りが添えられる。そこにどんな堅牢な鎧や盾よりも彼女を守る焔のドレスを形成された。そして腰にマントを翻して跳躍すると、心羽はそのまま暴れているエクリプスに飛び掛かった。