No.1 version 2

2021/06/20 20:18 by someone
  :追加された部分   :削除された部分
(差分が大きい場合、文字単位では表示しません)
白紙のページ

 その日も朝憬市(あかりし)の人々は、彼らにとっての日常を送っていた。そこに混在する幸福も悲哀も関係なく、その日も彼らの世界に陽は上り、沈むはずだった。だが突如として空は陰っていく。人々はそれぞれ空を仰ぎ見、太陽を指さした。予報はされていないはずだった日食が起こり始めたのだ。その中で薄笑いを浮かべるアンニュイな出で立ちの若い男女の姿があった。程なくしてこの男女の姿が異形の存在へと変わっていく。付近でその姿に気づいた金髪の若者が物見遊山で近づき、スマートフォンのカメラで彼らを撮影しようとする。
「すげえ、何かの撮影?俺そういうの昔観て…」
「煩わしい羽虫だ」
そう告げると、すぐに威嚇してきた若者の「あぁ?」という強い語気を尻目に、男の異形がその“爪”で若者の脇腹を切り裂いた。その血液が歩道のアスファルトをより黒く染める。周辺の人間の悲鳴が響き渡るのを合図に、伏していた他の異形の者たちがその姿を現し、無差別に人を襲い始めた。
この時、朝憬市の人々は確かに認知した。この街に巣食い、人を襲ってその負の感情を食す異形の存在がいることを。人の言葉で“エクリプス”と自身らを呼称するこの奇妙な存在は、そうして数を増やしてきた。その様を形容するならば、さながら悲劇と絶望の具現だ。これらは人の世ではありふれた言葉であるが、それはどこにでも存在し、再生産されてきた故だ。
“エクリプス”は、どこにでもいる———
      

その日も朝憬市(あかりし)の人々は、彼らにとっての日常を送っていた。そこに混在する幸福も悲哀も関係なく、その日も彼らの世界に陽は上り、沈むはずだった。だが突如として空は陰っていく。人々はそれぞれ空を仰ぎ見、太陽を指さした。予報はされていないはずだった日食が起こり始めたのだ。その中で薄笑いを浮かべるアンニュイな出で立ちの若い男女の姿があった。程なくしてこの男女の姿が異形の存在へと変わっていく。付近でその姿に気づいた金髪の若者が物見遊山で近づき、スマートフォンのカメラで彼らを撮影しようとする。
「すげえ、何かの撮影?俺そういうの昔観て…」
「煩わしい羽虫だ」
そう告げると、すぐに威嚇してきた若者の「あぁ?」という強い語気を尻目に、男の異形がその“爪”で若者の脇腹を切り裂いた。その血液が歩道のアスファルトをより黒く染める。周辺の人間の悲鳴が響き渡るのを合図に、伏していた他の異形の者たちがその姿を現し、無差別に人を襲い始めた。
この時、朝憬市の人々は確かに認知した。この街に巣食い、人を襲ってその負の感情を食す異形の存在がいることを。人の言葉で“エクリプス”と自身らを呼称するこの奇妙な存在は、そうして数を増やしてきた。その様を形容するならば、さながら悲劇と絶望の具現だ。これらは人の世ではありふれた言葉であるが、それはどこにでも存在し、再生産されてきた故だ。
“エクリプス”は、どこにでもいる———