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「見るな。聞くな。感じるな。
それができなきゃ、お前はヤツの玩具でしかない」
――――米国諜報員 ブリーフィングにて
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米国諜報機関報告書
識別名: “コールド・ウォー”
個体名: レナード・レキシントン
概要
本個体はカリフォルニア州の都市●●で発生した大規模抗争事件“静寂の一週間”の首謀者として特定されている。
その特性と行動から、当該個体は「その気になれば世界規模の紛争を引き起こす能力を有する」と政府は判断し、現時刻をもって人間災厄指定とする。
当該個体の持つ権能“コールド・ウォー”は、知的存在の疑心を増幅させ、集団間に争いが発生する直前の緊迫状態を作り出す能力であり、その影響範囲の危険性から、個体への厳重な監視および管理が必要である。
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権能: “コールド・ウォー”
当該個体が持つ権能“コールド・ウォー”は以下の特性を持つ。
1・疑心の増幅
知的存在の間に潜在する疑念や不信感を増幅させ、集団間の緊張状態を引き起こす。
2・影響範囲
五感による直接認識(視覚、聴覚など)を通じて影響を与えることが確認されている。
映像や電話越しでは影響を及ぼさないが、当該個体の声や身振りを通じて間接的な影響が及ぶ場合がある。
同じ指向性を持つ組織間では影響が伝播することも確認済み。
3・制御手段
当該個体が一般市民と接触する機会を排除し、隔離を基本とする。
必要に応じて移送や管理を行う際には、政府認可の「精神干渉への耐性を有する異能者」または「専用パワードスーツ」を伴うこと。
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事件: “静寂の一週間”
発生地 :カリフォルニア州都市●●
発生時期:20××年 冬
当該個体が構成員である犯罪組織“ブルー・ゴースト”は、カリフォルニア州都市●●を中心に活動するマフィアである。
同組織は代々、首魁が“エイス”のミドルネームを冠する慣習を持ち、現在の首魁が当該個体“レナード・エイス・レキシントン”であると推測されている。
20××年冬、ブルー・ゴーストが関与するブラックマーケットの支配を巡り、●●周辺のマフィア、ギャング、ストリートギャング、さらにはこれらに怨恨を抱く一般市民までを巻き込む大規模抗争が突如発生。
1週間にわたる殺し合いの結果、抗争に関与したすべての組織が半壊または壊滅状態となったところへブルー・ゴーストが進出し、周辺市場を完全に掌握したことが確認されている。
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諜報機関による分析
この大抗争は、諜報機関によって“静寂の一週間”と呼称されている。
生存者および当該個体の供述に基づき、次の事実が推測される。
1・権能の意図的な使用
当該個体は“コールド・ウォー”を用いて周辺勢力間の緊張状態を操作し、その均衡を崩壊させた。
2・抗争の激化
増幅された疑心が周辺勢力の暴発を引き起こし、抗争は制御不能な規模に達した。
3・ブルー・ゴーストの目的
抗争の結果、ブルー・ゴーストはすべての敵対勢力を排除し、支配権を確立。これが当該個体の狙いであったと推測される。
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政府の対応
指定:
当該個体を“人間災厄”に指定。
管理方針:
当該個体を隔離し、一般市民との接触機会を排除する。移送や直接的な接触が必要な場合、専用設備および認可された人員を用いること。
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以上、当該個体“コールド・ウォー”について、諜報機関による監視および管理を速やかに実行されたい。