これは私たちが紡いだ希望の物語 No.1 2 / 2 version 15
これは私たちが紡いだ希望の物語 No.1 2 / 3
「なんだよ、これ…」
気が付いた時には自身の姿が変化し、それまでの花森健人ではなくなっていた。その変化を見ると、甲虫を思わせる装甲が身体に纏わりついている。それは右腕に槍を思わせる突起を形成し、また鋭い爪も伸びて腕全体が一回り半は肥大していた。左足の装甲も、具足のようになっており、鉤爪が足の先端と踵に備わっている。そして変化の見られない左手で右顔面に触れてみると、仮面ともおぼしい大きなレンズが備わっていた。
そのレンズを以て視認できる前方から、こちらを見据える異形の怪物らの姿がより明確に視認できた。
ヴェムルアと呼ばれた悪魔はどういうわけか隻腕となっていたが、獅子のたてがみのように逆立つ髪を靡かせ、その鋭利な眼を健人に向けている。ヤギを想起させるその姿、身体に震わせ、強い怒りを露にしていた。その傍らでクモの異形は黒い四つ目の付いた顔を僅かに俯かせ、肩を竦めている。その四肢に備え付けられた節足が暗い中で怪しく蠢く。
「だから自分の仕事以上のことなんてするもんじゃない」
「ほざいている場合か。始末するぞ」
「…全く、仕方ありませんな」
毒づくクモを無視し、悪魔が左腕を掲げた。その左手から夜のそれ以上の暗闇が吹き上がり、そして周囲に降り注いだ。世界がより黒く塗り変わっていく。そこはそれまであった、只の田舎道ではなくなろうとしていた。健人は自身に起こる超常的な事象に目を見開いて息を飲む。しかし我に返り、竦み上がって震える脚を、強引ながらも動かしてそこから逃れようと駆けだした。脚の運びが軽い。一足一足が飛んでいるようだ。それまでの自身の身体とは明らかに動きのしなやかさが違った。だが、その運動機能を以てしても、暗闇に包まれゆく世界の外に出ることは叶わない。
「——っ!なんの冗談だよ、おい!?」
怯え、震えと共に叫ぶ健人だったが、直後に衝撃と共に自身の身体が吹き飛ばされるのを感じた。反射的に衝撃を感じた方を見ると、そこに居たのはアハトと呼ばれたクモの姿。その節足の動きも加わった蹴りが、健人の鳩尾を捉えたためだった。直後に背後に現れたヴェムルアが、棍のような獲物を健人のこめかみ目掛けて振るう。
”右から来るぞ!”
瞬間、何処からともなく響く声と共に反応し、咄嗟に身を竦ませながらも肥大した右腕で棍の一撃を防いだ。しかし及び腰であった故か、衝撃を殺しきれずに大きくよろめき後退する。異形二体はそこを逃さず、追撃にしてきた。襲い来る二体の姿に、恐怖のまま動くことができない。その時先の”声”がまた響いた。
”キーホルダー握れ、早う!”
「——っ…!」
咄嗟に左手を動かし、胸元を握る。シャツの中に着けていたキーホルダーを掴むと、再度赤い光が発し、暗闇の世界の中で閃いた。叫びながら身を丸め、強く目を閉じる。
「捕えてすぐここに引きずり込む手はずではあったが、こんなことは想定外だ…!」
「…それも大概にしてもらいたい」
閃光が収まると共に、耳に届く異形二体の声。それを知覚する意識はまだあった。健人は恐る恐る目を開けると、そこにあったのは大きな白い腕と二振りの太刀。自身の背後から伸びて異形らの攻撃を防ぐそれに、すぐ背後を振り返る。それと同時に、人間より二回りも大きい白銀の体躯を持つカラスが、こちらを向いて言った。
「早う動け!死にたいんか!!」
その言葉に慌てて三者の間を抜け出して逃れようとする健人を、尚もヴェムルアとアハトは追う。しかし白カラスの巨体もまた、健人の動きに追随していた。
「何でこっちに来るんだよ!?お前もあいつらの仲間か!?」
「お前が宿主だからじゃ、あいつらと一緒にすなや!」
自身に起きた不可思議な現象を問うも、訳の分からない言葉が飛んできた。宿主ってなんだよ、何がどうなってる…!?
「それより時間がない。早う奴らを退けんと、ここから戻れんくなる…!」
「退けるって…」
「ほいじゃからそのために、お前が戦わんとどうしようもない!」
「そんな…」
瞬間、ヴェムルアとアハトが健人に迫る。白カラスの太刀が大きく薙いだ一閃によって、襲い来る敵二体を身体ごと弾きはするも防戦一方。白カラスは尚も苛烈さを増す敵の攻撃を弾き続けるが、あまりにも迫られた事態に、健人たちは戦うための体勢を取ることも困難だった。
「…覚悟決めい!」
「なんの!?」
「生きて足掻くための覚悟じゃ!!」
背を向けこちらを守る白カラスからそんな言葉が飛んでくる。それは先の赤い光の中で聞いた声と同じもの、同じ言葉。全身の強張りはその度合いを増す一方で、口からも”覚悟なんて簡単に言うな”と飛び出しそうだった。しかし白カラスの言葉は何故か自身の内に入り込み、健人の目を見開かせる。それは先の光の中で、終わりに首を振った故か。即座に頷くこともできなかった。だが泣きながらでも、未だ世界に在り続ける理由がある。それを思い、構えようとした瞬間だった。
「その必要はない…その身を引き裂いてあの女の下へ送ってくれる!」
ヴェムルアが、そう言った。白カラスの太刀と巨体を搔い潜りながら、確かに言った。”あの女”——一瞬誰の事かと思ったが、花森健人には直感的に一人だけ浮かぶ人が…いる。ヴェムルアはそのまま棍を健人に向かって振り上げるも、直後に垣間見たのは見開かれた健人の怒りの瞳だった。振り下ろされる棍の先を、肥大した右腕——槍腕で防ぎ、健人はそのままヴェムルアへと問う。
「…誰の事だ?」
「なに?」
「あの女って誰の事か聞いてんだ!!」
そして棍を往なした槍腕は、直後にその切っ先をヴェムルアに突き立てんと振り上げられた。
しかし突きだされる槍をヴェムルアは即座に躱す。同時に逆手で振り回された棍棒の先が健人の胸を即座に打った。呻き声を上げる健人の身に更に棍を打ちつけ、蹴りに繋げる。健人の下に駆け寄った白カラスの太刀の閃きがすぐにヴェムルアを飛び退かせるが、健人は怒りに身を任せ異形の敵たちへと突撃しようとした。
「待てっ!」
「放せ!野郎、殺してやる!!」
「お前一人で突っ込んでも死ぬだけじゃ!」
「うるさい!アイツはミユ姉を…!!」
白カラスの大きな手に制止されながら、健人は既に半狂乱に陥っていた。絶叫し激しく抵抗するも、次の瞬間彼の身体は急に動きを止めてその場に倒れこむ。激しい怒りに尚も全身を震わせるも、身動きが取れない。自身の身体を注視すると、そこには幾重もの糸が巻き付けられていた。
「あーあ、喚いて暴れるから糸が締まっちゃったじゃねえか…なあ、シャバ僧」
「てめえ…!」
「健人…くっ!」
健人と白カラスが声の方を見ると、アハトが肩を竦めて言い放つ。直後に白カラスの太刀もアハトの張った”糸”に絡められ、その手から奪い取られた。そのまま太刀は地に落とされアハトの下へと引き寄せられる。
「貴方もいつまで戯れてるつもりです?全く、クソどもが」
「アハト…それは私に言っているのか?」
「つまらん昂りで上の者が敵に情報を漏らすなど…戯れや茶番以外の何だというんです?…ヴェムルア様」
静かな口調ながら怒気を含ませて問うヴェムルアに、アハトは皮肉と共に彼の名を強調して返すと、左手で手ぐすねを引くように幾匹もの小さなクモを思わせる蟲を自身の周囲に喚び出した。
「で、お前だよ白いの…”エクリプス”でありながら、我々に刃向かうのは何故だ?」
「…とりあえず宿主殺されると俺が困るからじゃ…利害は一致せんぞ」
「ふん、生け捕りにでもしてどういうカラクリか吐かせてもいいが…貴様らからは面倒事の匂いしかしない」
鼻を鳴らすようにしてそう告げると、アハトは左手で健人と白カラスの方を指す。それに応じて蟲たちは宙に浮きあがり、そこで静止した。そして一瞬の静寂の後、アハトはドスの利いた声で言い放つ。
「さっさと死に曝せ、イレギュラー」
その言葉、命令を合図に蟲たちは二人目掛けて一直線に飛んでいった。瞬く間に蟲に取り付かれ、身体を噛みつかれた健人は驚愕と痛みに叫びを上げた。白カラスも纏わりつく蟲に舌打ちの音を発し、その顔を傾ける。
「下らんマネをしやがる。荒療治じゃが…健人、少し我慢せえよ」
全身を蟲に包まれた健人を見遣ってそう告げ、白カラスは顔を上げる。そして掛け声を上げると共にその身体を輝かせ、全身に迸らせた。暗闇の世界に赤い光が強く明滅する。次の瞬間には、蟲たちは光に宿る熱量に焼かれて滅し、その白銀の身体から剥がれ落ちていた。即座に白い大きな手が健人にも向けられる。瞬時に身に走る熱さと光の中で、健人は更に悲鳴を上げた。
全身を蟲に包まれた健人を見遣ってそう告げ、白カラスは顔を上げる。そして掛け声を上げると共にその身体を輝かせ、全身に迸らせた。暗闇の世界に赤い光が強く明滅する。次の瞬間には、蟲たちは光に宿る熱量に焼かれて滅し、その白銀の身体から剥がれ落ちていた。即座に白い大きな手が健人にも向けられる。瞬時に身に走る熱さと光の中で、健人は更に悲鳴を上げて踠いた。
「何すんだお前!熱い!ああぁっ!!」
「…それだけ動けりゃ、上等じゃろ」
「えっ…あ…動ける」
光が止み、身を焼くような一瞬が過ぎると、身体を支配していた蟲も糸も滅却され、塵となって消えていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
###### //ギルです。モル、すみません。ネーゲルの属性がちょっと"光"っぽくなってます(^^;"ルクスカーデン由来のキーホルダーから光の属性の断片を得た"とか自分では思うのですが、リュミエのスターリードレスの光(もちろんこっちの方が強い)と被るのがモルが嫌ならネーゲルもリーン同様、雷にします。というのもこうなったのは、ネーゲルのモデルが光線撃ってるあの人なので…出来心です。すみません。また可能ならここはご意見頂けたらと思ってます。
「なんだよ、これ…」
気が付いた時には自身の姿が変化し、それまでの花森健人ではなくなっていた。その変化を見ると、甲虫を思わせる装甲が身体に纏わりついている。それは右腕に槍を思わせる突起を形成し、また鋭い爪も伸びて腕全体が一回り半は肥大していた。左足の装甲も、具足のようになっており、鉤爪が足の先端と踵に備わっている。そして変化の見られない左手で右顔面に触れてみると、仮面ともおぼしい大きなレンズが備わっていた。
そのレンズを以て視認できる前方から、こちらを見据える異形の怪物らの姿がより明確に視認できた。
ヴェムルアと呼ばれた悪魔はどういうわけか隻腕となっていたが、獅子のたてがみのように逆立つ髪を靡かせ、その鋭利な眼を健人に向けている。ヤギを想起させるその姿、身体に震わせ、強い怒りを露にしていた。その傍らでクモの異形は黒い四つ目の付いた顔を僅かに俯かせ、肩を竦めている。その四肢に備え付けられた節足が暗い中で怪しく蠢く。
「だから自分の仕事以上のことなんてするもんじゃない」
「ほざいている場合か。始末するぞ」
「…全く、仕方ありませんな」
毒づくクモを無視し、悪魔が左腕を掲げた。その左手から夜のそれ以上の暗闇が吹き上がり、そして周囲に降り注いだ。世界がより黒く塗り変わっていく。そこはそれまであった、只の田舎道ではなくなろうとしていた。健人は自身に起こる超常的な事象に目を見開いて息を飲む。しかし我に返り、竦み上がって震える脚を、強引ながらも動かしてそこから逃れようと駆けだした。脚の運びが軽い。一足一足が飛んでいるようだ。それまでの自身の身体とは明らかに動きのしなやかさが違った。だが、その運動機能を以てしても、暗闇に包まれゆく世界の外に出ることは叶わない。
「——っ!なんの冗談だよ、おい!?」
怯え、震えと共に叫ぶ健人だったが、直後に衝撃と共に自身の身体が吹き飛ばされるのを感じた。反射的に衝撃を感じた方を見ると、そこに居たのはアハトと呼ばれたクモの姿。その節足の動きも加わった蹴りが、健人の鳩尾を捉えたためだった。直後に背後に現れたヴェムルアが、棍のような獲物を健人のこめかみ目掛けて振るう。
”右から来るぞ!”
瞬間、何処からともなく響く声と共に反応し、咄嗟に身を竦ませながらも肥大した右腕で棍の一撃を防いだ。しかし及び腰であった故か、衝撃を殺しきれずに大きくよろめき後退する。異形二体はそこを逃さず、追撃にしてきた。襲い来る二体の姿に、恐怖のまま動くことができない。その時先の”声”がまた響いた。
”キーホルダー握れ、早う!”
「——っ…!」
咄嗟に左手を動かし、胸元を握る。シャツの中に着けていたキーホルダーを掴むと、再度赤い光が発し、暗闇の世界の中で閃いた。叫びながら身を丸め、強く目を閉じる。
「捕えてすぐここに引きずり込む手はずではあったが、こんなことは想定外だ…!」
「…それも大概にしてもらいたい」
閃光が収まると共に、耳に届く異形二体の声。それを知覚する意識はまだあった。健人は恐る恐る目を開けると、そこにあったのは大きな白い腕と二振りの太刀。自身の背後から伸びて異形らの攻撃を防ぐそれに、すぐ背後を振り返る。それと同時に、人間より二回りも大きい白銀の体躯を持つカラスが、こちらを向いて言った。
「早う動け!死にたいんか!!」
その言葉に慌てて三者の間を抜け出して逃れようとする健人を、尚もヴェムルアとアハトは追う。しかし白カラスの巨体もまた、健人の動きに追随していた。
「何でこっちに来るんだよ!?お前もあいつらの仲間か!?」
「お前が宿主だからじゃ、あいつらと一緒にすなや!」
自身に起きた不可思議な現象を問うも、訳の分からない言葉が飛んできた。宿主ってなんだよ、何がどうなってる…!?
「それより時間がない。早う奴らを退けんと、ここから戻れんくなる…!」
「退けるって…」
「ほいじゃからそのために、お前が戦わんとどうしようもない!」
「そんな…」
瞬間、ヴェムルアとアハトが健人に迫る。白カラスの太刀が大きく薙いだ一閃によって、襲い来る敵二体を身体ごと弾きはするも防戦一方。白カラスは尚も苛烈さを増す敵の攻撃を弾き続けるが、あまりにも迫られた事態に、健人たちは戦うための体勢を取ることも困難だった。
「…覚悟決めい!」
「なんの!?」
「生きて足掻くための覚悟じゃ!!」
背を向けこちらを守る白カラスからそんな言葉が飛んでくる。それは先の赤い光の中で聞いた声と同じもの、同じ言葉。全身の強張りはその度合いを増す一方で、口からも”覚悟なんて簡単に言うな”と飛び出しそうだった。しかし白カラスの言葉は何故か自身の内に入り込み、健人の目を見開かせる。それは先の光の中で、終わりに首を振った故か。即座に頷くこともできなかった。だが泣きながらでも、未だ世界に在り続ける理由がある。それを思い、構えようとした瞬間だった。
「その必要はない…その身を引き裂いてあの女の下へ送ってくれる!」
ヴェムルアが、そう言った。白カラスの太刀と巨体を搔い潜りながら、確かに言った。”あの女”——一瞬誰の事かと思ったが、花森健人には直感的に一人だけ浮かぶ人が…いる。ヴェムルアはそのまま棍を健人に向かって振り上げるも、直後に垣間見たのは見開かれた健人の怒りの瞳だった。振り下ろされる棍の先を、肥大した右腕——槍腕で防ぎ、健人はそのままヴェムルアへと問う。
「…誰の事だ?」
「なに?」
「あの女って誰の事か聞いてんだ!!」
そして棍を往なした槍腕は、直後にその切っ先をヴェムルアに突き立てんと振り上げられた。
しかし突きだされる槍をヴェムルアは即座に躱す。同時に逆手で振り回された棍棒の先が健人の胸を即座に打った。呻き声を上げる健人の身に更に棍を打ちつけ、蹴りに繋げる。健人の下に駆け寄った白カラスの太刀の閃きがすぐにヴェムルアを飛び退かせるが、健人は怒りに身を任せ異形の敵たちへと突撃しようとした。
「待てっ!」
「放せ!野郎、殺してやる!!」
「お前一人で突っ込んでも死ぬだけじゃ!」
「うるさい!アイツはミユ姉を…!!」
白カラスの大きな手に制止されながら、健人は既に半狂乱に陥っていた。絶叫し激しく抵抗するも、次の瞬間彼の身体は急に動きを止めてその場に倒れこむ。激しい怒りに尚も全身を震わせるも、身動きが取れない。自身の身体を注視すると、そこには幾重もの糸が巻き付けられていた。
「あーあ、喚いて暴れるから糸が締まっちゃったじゃねえか…なあ、シャバ僧」
「てめえ…!」
「健人…くっ!」
健人と白カラスが声の方を見ると、アハトが肩を竦めて言い放つ。直後に白カラスの太刀もアハトの張った”糸”に絡められ、その手から奪い取られた。そのまま太刀は地に落とされアハトの下へと引き寄せられる。
「貴方もいつまで戯れてるつもりです?全く、クソどもが」
「アハト…それは私に言っているのか?」
「つまらん昂りで上の者が敵に情報を漏らすなど…戯れや茶番以外の何だというんです?…ヴェムルア様」
静かな口調ながら怒気を含ませて問うヴェムルアに、アハトは皮肉と共に彼の名を強調して返すと、左手で手ぐすねを引くように幾匹もの小さなクモを思わせる蟲を自身の周囲に喚び出した。
「で、お前だよ白いの…”エクリプス”でありながら、我々に刃向かうのは何故だ?」
「…とりあえず宿主殺されると俺が困るからじゃ…利害は一致せんぞ」
「ふん、生け捕りにでもしてどういうカラクリか吐かせてもいいが…貴様らからは面倒事の匂いしかしない」
鼻を鳴らすようにしてそう告げると、アハトは左手で健人と白カラスの方を指す。それに応じて蟲たちは宙に浮きあがり、そこで静止した。そして一瞬の静寂の後、アハトはドスの利いた声で言い放つ。
「さっさと死に曝せ、イレギュラー」
その言葉、命令を合図に蟲たちは二人目掛けて一直線に飛んでいった。瞬く間に蟲に取り付かれ、身体を噛みつかれた健人は驚愕と痛みに叫びを上げた。白カラスも纏わりつく蟲に舌打ちの音を発し、その顔を傾ける。
「下らんマネをしやがる。荒療治じゃが…健人、少し我慢せえよ」
全身を蟲に包まれた健人を見遣ってそう告げ、白カラスは顔を上げる。そして掛け声を上げると共にその身体を輝かせ、全身に迸らせた。暗闇の世界に赤い光が強く明滅する。次の瞬間には、蟲たちは光に宿る熱量に焼かれて滅し、その白銀の身体から剥がれ落ちていた。即座に白い大きな手が健人にも向けられる。瞬時に身に走る熱さと光の中で、健人は更に悲鳴を上げて踠いた。
「何すんだお前!熱い!ああぁっ!!」
「…それだけ動けりゃ、上等じゃろ」
「えっ…あ…動ける」
光が止み、身を焼くような一瞬が過ぎると、身体を支配していた蟲も糸も滅却され、塵となって消えていた。
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//ギルです。モル、すみません。ネーゲルの属性がちょっと"光"っぽくなってます(^^;"ルクスカーデン由来のキーホルダーから光の属性の断片を得た"とか自分では思うのですが、リュミエのスターリードレスの光(もちろんこっちの方が強い)と被るのがモルが嫌ならネーゲルもリーン同様、雷にします。というのもこうなったのは、ネーゲルのモデルが光線撃ってるあの人なので…出来心です。すみません。また可能ならここはご意見頂けたらと思ってます。