0 マゾ豚ナグサちゃん
「じゅぷっ……んむっ……っ……んぐっ!?」
「さっさとしろ、後がつかえてんだよ」
「うえ"っ……!?ん、んぐっ……!!」
祭りが終わり、みなが寝静まった頃、百鬼夜行連合学院の街の中で一つの音がした。
複数人の男達の声と、一人の女の嬌声。
それらの音と一緒に、異臭も漂っていることから何が起きているのかはすぐに理解出来るだろう。
「げほっ、うえぇ……ごほっ、ごほっ……」
「あんまり無理させんなよ、壊れたらどうすんだ」
「いいんだよ、こいつは'そうしてもらったほうが嬉しい'んだ、そうだよな?」
「……ごくんっ…………こくっ……」
つんとくる匂いと呼吸困難から女は苦しんだ様子を見せていたが、
黒亀組の下衆な男は然程気にもせずに女にそう問いかけた。
すると女は、自分の口内に出された精液をわざと下品に大きく音を鳴らしながら飲み込むと、静かに頷いた。
「ほらよ、何をされてもこいつは喜ぶんだ。……こんな風にな」
そのような肯定の反応を確認すると、男は女の白くて細い首に手をかけ、思いっきり力を入れ始めた。
「っ"ぅ"……!?がっ"……!!」
ギリギリと絞められていくごとに先ほどよりも呼吸は難しくなり、女の表情もより苦しみを増していく。
ヘイローは明滅を繰り返し、華奢な身体は痙攣を見せる。
いくらキヴォトス人であろうと、命の危機を覚えるには十分なモノであった。
だがその女は思いもよらない反応を見せていた。
尿を零しながらも蜜壺は酷く濡れ、次に力を入れてみると勢いよく潮が吹き出たのだ。
試しに絞首をやめて解放してみせると、涎を垂らしながらどこか恍惚とした表情を見せていた。
「マジかよこいつ、マゾにも程があるだろ。本当に散々俺たちの商売を邪魔しやがったあの女なのか?」
「百花繚乱の羽織が泣くぜ。……いや、それともこいつの後輩たちも案外、雌豚揃いだったりするのかもしれねえな」
そう男達が笑いながら建物の陰に視線を移してみると、そこには女が先まで着ていた服と下着が、
百花繚乱紛争調停委員会の所属を証明する青い羽織が丁寧に畳まれて放置されていた。
そこから読み取れるのは、男達が無理やり奪い破った訳ではなく、女が自ら服を脱ぎ捨てたという過程。
そして裸体を晒し、男達に自分の身体を売ったという証明に他ならない。
「んじゃさっさとしゃぶれ。全員満足させるまでがお前の仕事だ、御陵ナグサ」
「…………分かった…………」
半刻が経ってもなお粘った水音は街の中で反響していた。
一人の男の陰茎を左手で軽く握ると、細い指先でカリ首をなぞっていく。
生暖かい吐息を鈴口に吹き当ててみると、生殖器はより膨脹をみせていった。
「っ……おらっ、受け止めろ」
「……ん……」
「その次は俺だ、ほら早くシろよ」
そのうち男の限界が訪れ、ナグサの顔にベッタリと子種を放つと、
後ろで待っている次の男の肉棒を握らされる。
こういった行為が何度も繰り返され、ふと気が付くとナグサの髪や慎ましい胸は白く汚されていた。
だがまだ黒亀組の男達は物足りない様子で、一人ずつでは時間がかかると判断したのか、男の一人がナグサに向かってこう言い放った。
「なあ、右腕も使えよ。終わらせる気はあるのか?」
「……っ……でも、こっちの腕、は…………」
「ああ!?口答えしてんじゃねえ!!あのお嬢様が大事ならさっさと従うんだな!」
「…………いだっ……」
包帯に巻かれた右腕を動かそうとすると、軋むような痛みが身体を襲う。
黒く焼け焦げた指先で男のモノを触らされる不快な感触。
左腕と比べると、あまりにも拙い手の動き。
だがそのぎこちない動きが、男たちの加虐性を加速させていった。
ある程度の人数を相手にした後は、包帯にも精液で大きい染みが出来ており、
焦げていた部分も白色に覆われていた。
事の発端は数週間前、大切な後輩であるユカリが黒亀組に捕まったことであった。
無謀にも人助けをしようとして多勢に挑んだ結果なのだろう、その知らせを聞いたナグサはすぐに黒亀組の後を追ったものの、
人質にされたユカリを無傷で助けることは叶わず、黒亀組の要求を一人飲むことになった。
「これで全員か?」
「ふ~、出し尽くしたぜ」
その要求こそが、この慰安任務。
毎晩指定の場所に呼び出されては、黒亀組の男達に奉仕をするというのが、ユカリを無傷で返す最低条件だった。
最初の方こそ、不愉快なだけだった。
男達の欲望を身の内に注がれ、悪臭が耳と口の感覚を奪っていく。
ぬるっとした精子が肌や髪に染み着き、雪のように白く透き通っていた肌が黄色く濁った液に上塗りされていく。
「おい、何か俺たちに言うことがあるんだろ?言ってみろよ」
仕方なく、後輩のために自分は犯されているのだと。
レイプされている自分の姿は、あくまでも後輩を助けるための演技だと。
あくまでも取り繕っているだけだと自分に言い聞かせながら、毎晩男達に虐げられていくうちに、やがてナグサは自分の考えに間違いがあることに気付いた。
「……私を、使っていただき、ありがとうございます……」
腹を殴られる。首を絞められる。右腕を痛みつけられる。
性行為の中で男達に振るわれるそういった残虐な行為を受けるたびに、
肉壺から蜜を垂らし、媚び諂うかのように雌の表情を浮かべる自分がいたことに、数日経った頃に気付いてしまった。
「私にこのような仕事をくださり、ありがとうございます……」
これこそが御陵ナグサの真の姿であったのだと、自分で気付いた時には最早手遅れだった。
己の身体を男達に貢ぎ、乱暴にされることが望みであったのだと。
乱交の果てに男達の精液に塗れ、地に伏せて頭を垂れて感謝の言葉を述べ、零れた精液を舌で舐め掬うその姿はまさしく雌豚そのもの。
「くっせえなぁ、便器のコスプレが似合うぜ。ああそうだ、おいこいつに報酬をくれてやれ」
「ほらよナグサちゃん、お前の好きな焼き鳥だぜ。精液と絡めてトッピングしてやったから、ありがたく食べな」
そうして目の前の精液の池に投げ落とされた焼き鳥を、犬のように這いつくばって口に含むと、男達から嘲笑と罵倒が飛び交った。
それを聞いたナグサは、快楽の中再び潮を吹きだし、紅潮の中息を荒げていた。
そこには百花繚乱の、後輩から慕われる先輩の姿はどこにもなかった。
あれから数日経ったとある日の夜。
艶かしい声が響く現場には、やはり青い羽織が下着などと共に折り畳まれて置かれていた。
以前と異なる部分を挙げるとすれば。
その羽織や服は、4枚ほど並べられていたという。