0 マダミス「星陰りて、謀り響く」BGMセットリスト
「星陰りて、謀り響く」未通過NG
※一部の内容は過去に投稿したふせったーと被ります。
※実演を聞いていただきたいのでYouTubeにある実演動画(一部例外あり)を貼っておりますが、卓中に使う演奏とは多少異なります。
OKな方はスクロールしてください
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基本的に卓ゲーのBGMにクラシックを使わない(百年単位の文脈を背負ってしまっているので、一曲あたりの情報量が多すぎて手に余る)のですが、使うとなったら盛れるだけの文脈を盛りに行きます。クラヲタになりたかった人間なので。
前世キャロルとしてはこの地に降臨したハスターさまが全ての愚かな異教徒に裁きを与えてくださることを期待したいので(あとフーガも死んでるし)、作者さま推奨BGMや自陣のBGMよりもなお死の匂いが濃厚なセトリを組んだつもりです。
- 練習用盤面:J. パッヘルベル『カノンとギーグニ長調 作品37』より「カノン」(Johann Pachelbel: Canone e Giga in re maggiore PWC 37 - Canone)
推奨BGM踏襲。言わずと知れた「パッヘルベルのカノン」。 - 待機:W. A. モーツァルト『レクイエムニ短調 作品626』より第2曲「主よ、憐れみたまえ」(Wolfgang Amadeus Mozart: Requiem in d-moll K. 626 - 02 Kyrie Eleison)
絶筆となったことから、作曲者自身の死のために書かれたという伝説が流布した曰く付きのレクイエムより。
二つの主題を持つフーガ形式で書かれています。星陰の文脈だと「死せるフーガのためのレクイエム」だって言い張れるかなーと思って。 - ルール説明:J. S. バッハ『管弦楽組曲第3番 BWV1068』より第2曲「アリア」(Johann Sebastian Bach: Orchestersuite Nr. 3 BWV 1068 - 02 Air)
推奨BGM踏襲。いわゆる「G線上のアリア Air auf der G-Saite」、の元になった曲。
厳密な意味での「G線上のアリア」は、後世の人間がこの曲を独奏用に編曲したものを指します。今となってはオリジナルをこの名で呼ぶことの方が多い気がしますが……。
あと、アリアのスマートフォンのパスコードである「BWV1068」は、本来このアリアを含む組曲全体に付けられた作品番号です。 - オープニング:J. S. バッハ「フーガト短調 BWV578」(Johann Sebastian Bach: Fugue in G minor BMV 578, "Little")
推奨BGM踏襲。通称「小フーガ」。
フーガの語源は「逃げる/避難する fuggire」で訳語は「遁走曲」ですが、信頼しきっていた誰かさんに兇器を向けられ慌てふためいて逃走を試みたフーガは、いったいどんな無様な姿を晒していたんでしょうね。 - フェーズ1:P. I. チャイコフスキー『交響曲第6番ロ短調 作品74“悲愴”』より第4楽章(Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Symphony No. 6 in B Minor Op. 74 "Pathetique" - IV. Finale Adagio lamentoso)
推奨BGM踏襲。チャイコフスキー最後の傑作で、死の9日前に作曲者自身の指揮によって初演されています。
作曲者はこの作品について「『人生について』書いた」と語ったとか。んな失意と絶望の中で死ぬみたいなのやめてくれよ……。 - 休憩1:L. ベートーヴェン『ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27/2“月光”』より第1楽章(Ludwig van Beethoven: Piano Sonata #14 In C Sharp minor Op. 27/2, "Moonlight" - 1. Adagio Sostenuto)
親GMさんの選曲踏襲。
右手の奏でる三連符は、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョヴァンニ』より「騎士長殺しの場」へのオマージュであろうという指摘があります。ドン・ジョヴァンニ(=ドン・ファン)は騎士長殺害を発端として破滅の道を進み、ついには騎士長の石像によって地獄へ引きずり込まれる最期を迎えます。 - フェーズ2:N. パガニーニ『24の綺想曲 作品1』より第24番イ短調(Niccolò Paganini: 24 Capricci Op. 1 - n. 24 in La minore)
推奨BGM踏襲。
ヴァイオリンの超絶技巧をこれでもかと詰め込んだ華やかな変奏曲です。この曲を愛した後世の作曲家たちが、本曲をモチーフとした作品を数多く書いています。 - 休憩2:P. マスカーニ『カヴァッレリア・ルスティカーナ』より間奏曲(Pietro Mascagni: Cavalleria Rusticana - Intermezzo Sinfonico)
「アヴェ・マリア」として歌詞付きで歌われることもある曲。
『カヴァッレリア・ルスティカーナ』は痴情のもつれをめぐる陰惨な内容のオペラですが、「主人公の不倫が婚約者に露呈する」前半部分と「不倫相手の夫との決闘に至って落命する」後半部分をつなぐ曲として、この夢見るように美しいメロディが奏でられます。このあと血みどろの刃傷沙汰に発展するとは到底思えないほどロマンティックな曲。 - フェーズ3:F. シューベルト『白鳥の歌 D957』より第4曲「小夜曲」(Franz Schubert: Schwanengesang D957 - 04 Ständchen(Serenata))
推奨BGM踏襲。ただし歌入り。
ドイツ歌曲の帝王として知られるシューベルトの遺作集に収められた一曲です。「白鳥の歌」は比喩的に「芸術家が死の直前に物する最高傑作」を指す言葉。 - 休憩3:S. ラフマニノフ『14のロマンス 作品34』より第14曲「ヴォカリーズ」(Sergei Rachmaninoff: 14 Romances Op. 34 - 14. Vocalise)
歌詞がないゆえ覿面に粗が出る、最高難度の歌曲(だと私は思っています)。
ラフマニノフはグレゴリオ聖歌のレクイエムより「怒りの日」の冒頭4音のモチーフ(ド-シ-ド-ラ)をことさらに好んでおり、本曲にも随所にこのモチーフが散りばめられています。つまりレクイエムの要素を多分に含んでおり、語弊を恐れず言うなら「よく聴くと人が死んでる」。 - フェーズ4:作者不詳「コヴェントリー・キャロル」(Traditional: Coventry Carol)
推奨BGM踏襲。
著名なクリスマスキャロルの一つで、ヘロデ王によるベツレヘムの嬰児虐殺(「新たなユダヤ人の王」=キリストの誕生を恐れ、近隣の赤子を鏖殺させた)と、そこから逃れる乳幼児期のイエス・キリストのエピソードを歌っています。血腥いですね。 - 投票権処理・推理発表・投票:B. ゴダール『ジョスラン 作品100』より「子守唄」(Benjamin Godard: Jocelyn Op. 100 - Oh! ne t'éveille pas encore(Jocelyn's Lullaby))
オペラ『ジョスラン』は今ではほとんど演奏されませんが、劇中の子守唄だけは抜粋して歌われたり器楽用に編曲されて演奏されたりと、それなりに耳にする機会があります。
粛清の嵐吹き荒れる大革命期のフランスで、特権を剥奪されギロチンから逃れてグルノーブルの山中へ籠もった主人公が歌う曲だそうです(実はよく知らない)。子守唄でありながら、どこか「明日は死ぬかもしれない不安」を漂わせています。 - エンディング:H. ベルリオーズ『幻想交響曲 作品14』より第4楽章「断頭台への行進曲」(Hector Berlioz: Symphonie Fantastique Op. 14 - IV. «Marche au supplice»)
とある詩人が恋に敗れて阿片に溺れ、「想い人を絞め殺して断頭台へ引かれていき、刃が落ちる一瞬に美しいままの想い人の姿を見る」幻覚を見る、という物語を描いています。「刃がザンッ!と落ち、ことんと首が転がる音」まで描写され、それを見た見物客が喝采する様が晴れやかに奏でられるという、なかなかにエグい曲です。
前世がシンフォニーとバチりまくったキャロルなので、シンフォニーが殺人犯として逮捕され首を刎ねられる様子を見られなかったことが心残りでして……(202年のχ国に斬首刑なんてあるんですか?)(ハスターさまの鉤爪であればヒトの首なんて一発でしょうね。あれは必中かつ即死の大いなる攻撃ですから) - 感想戦:A. ドヴォルジャーク『交響曲第9番ホ短調 作品95“新世界より”』より第2楽章(Antonin Dvořák: Symfonie č. 9 Op. 95 „Z Nového světa" - II. Largo)
※動画は全曲演奏です。第2楽章冒頭を頭出ししてあります。
「家路」や「遠き山に日は落ちて」として愛唱されることもある曲。
アメリカ先住民の英雄を描いたロングフェロー作の叙事詩「ハイアワサの歌」をもとに制作していたオペラが一度頓挫したのち、主人公ハイアワサの妻が寒さと飢えの中で死んでいくシーンで使う予定だったメロディを流用して書かれた楽章です。第1・第3・第4楽章がすべてホ短調で統一されている中、この楽章だけは遠隔調である変ニ長調で書かれており、異質な雰囲気を漂わせています。
ちなみに私は『新世界より』のことを「(各楽章を独立して聴くのではなく)全曲通しで聴いてなんぼ」のシンフォニーだと思っているので、ぜひ第1楽章から第4楽章まで聴いていただきたいです。
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おまけ:入れたかったけど泣く泣く外した曲
- J. S. バッハ『ゴルトベルク変奏曲 BWV988』より第1曲「アリア」(Johann Sebastian Bach: Goldberg-Variationene - 01 Air)
不定期放送の深夜ドラマ「ホラー アクシデンタル」の劇伴に使われていて、この曲こんなに怖く聴こえるもんだっけ!?と度肝を抜かれた覚えがあります。もしかしたら「アリア」「作品番号」の2語だけで「BWV1068」に辿り着いてしまう人に対するブラフになるかもしれない。
直接的に人が死んではいないかなーと思ったので本セトリの趣旨から外れると判断し、泣く泣く外しました。
余談ですが、元来「空気/息」のなど意味を持つイタリア語ariaは、文脈によっては「風」を指します。「Quando è tiepida l'aria e il ciel sereno 風が温み、空が澄む季節(に私は死を迎えたい)」という詞の歌曲があったりとか。 - C. フランク『ヴァイオリンソナタイ長調 作品8』より第4楽章(César Franck: Sonata Pour Piano et Violon en La majeur FWV 8 - 04 Allegretto poco mosso)
ソナタの終楽章ってロンド形式で書かれてることが多いですよね。この曲の場合はさらに、ヴァイオリンとピアノの掛け合いがカノン(厳密にカノンかどうかはちゃんと確認してない。ただの「カノン風」かも)になっています。
前掲のゴルトベルクと同様に死の匂いをあまり感じられなかったので、泣く泣く外しました。
ところでこのソナタ、なぜかヴァイオリンではなくチェロで演奏されることも非常に多いです。というかチェロって割と別の楽器の曲をさも元からチェロ曲だったかのように弾きがちよね。前出のヴォカリーズもそうだし、フォーレの歌曲「夢のあとに」とか、エルガーのヴァイオリン曲「愛の挨拶」とかとか。