(no title) version 5

2024/11/13 07:51 by someone
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大枠、設定などの文章化3
18.「彼の者の精神は興奮状態にある。大筋としては予測通りか」
「そうね、あの返還以外は」
エクリプスと情報共有するバベルに、アゼリアが皮肉を言った。
「それに関しては謝罪する。そして今後の方針だが、暫くは逃げの一手だ」
「大方、あの母親を生かさず殺さずってところ?」
「ああ、君の推察通りだ。その方が彼の絶望を更に育て易いと踏んだ。展開次第では母親を殺めてもいいが、君の毒の遠隔操作が鍵になる」
「…悪どい話ね」
「そうだな。少なくとも知性体の思考としてはそうなるのだろう」
互いに一つ、息を吐く。他を侵し合う人間、知性体の望みを絶つこと。そのための絶望、そのためのエクリプス。そしてそう名付けられた自身らの生存本能と欲求。一方で、自己矛盾を否応なしに突きつけられる。他害し合う生命の仕組みを嫌悪し、その破壊を目指す中にあって、自身らもまた他を害すべくこうした悪どい策を講じる。罪など考える気にもならないが、この閉塞感には酷く頭が痛む。我らが主も、かつてはこの自己矛盾の中にあったのだろうか。
「何にしても、すぐに花森健人を知る手段は一度手放した。これの補填が欲しいところね」
「その点は、性急になって仕損じるよりも確実性を重視したと解釈してほしい。何よりまだ策はある。今はそのためにも、ここを後にしよう」
「まあいいわ。それで、誰が残るの?」