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大枠、設定等の文章化3
18.「彼の者の精神は強い興奮状態にある。大筋としては予測通りか」
「そうね、あの返還以外は」
エクリプスと情報共有するバベルに、アゼリアが皮肉を言った。
「それに関しては謝罪する。だが、お陰でこちらも一つ花森健人に対して優位性を得た」
「大方、あの母親を生かさず殺さずってところ?」
「ああ、君の推察通りだ。その方が彼の絶望を更に育て易いと踏んだ。展開次第では母親を殺めてもいいが、君の毒の遠隔操作が鍵になる」
「…悪どい話ね」
「そうだな。少なくとも知性体の思考としてはそうなるのだろう」
互いに一つ、息を吐く。他を侵し合う人間、知性体の望みを絶つこと。そのための絶望、そのためのエクリプス。そしてそう名付けられた自身らの生存本能と欲求。一方で、自己矛盾を否応なしに突きつけられる。他害し合う生命の仕組みを嫌悪し、その破壊を目指す中にあって、自身らもまた他を害すべくこうした悪どい策を講じる。罪など考える気にもならないが、この閉塞感には酷く頭が痛む。我らが主も、かつてはこの自己矛盾の中にあったのだろうか。
「何にしても、すぐに花森健人を知る手段は一度手放した。これの補填が欲しいところね」
「その点は、性急になって仕損じるよりも確実な状況のコントロールを重視したと解釈してほしい」
「まあいいわ。それで、この後の防衛には誰を回す?」
「ゼンに任せた。単体の戦闘力では我々の中で最も秀でているからな」
「そう。まあ私たち全員の生存確率を考えるなら、理解は出来る」
19.その頃、レガリアの力に対する解像度が上がった花森健人は、尚も自身を追跡していたルドルの存在を逆にサーチしてこれを追い詰め、そのままルドルに迫る。
「こっちから出向くわ。お前らのアジトはどこだ?」
そこに仲間を思ったゼン(甲殻宿したタイタンモチーフ)が介入。健人はゼンの作ったフォースフィールドへ連れ込まれ、そのままゼンとルドルを相手に交戦。
「一つ教えておいてあげるよ、花森健人。君の母親の生殺与奪は僕らの手にある」
「お前ら…!殺されたくなかったら解毒しーー」
「君こそ母親を殺されたくなかったら、"大人しく"、我々の下に来てもらえないかな?僕らはあんな命、すぐに奪える」
「ざけんなよ、おい!!」
「そう囀ずらないでよ。ねえアゼリア、聞こえるだろう?いつだって、殺れるよねえ?」
「あなたそんな腹芸も出来たのね。いいわ、ダシに使われてあげる。花森さん、彼の言っていることは事実よ」
「そういうこと。分かったら同行頂けるかな?君のせいで、お母さん死んじゃうよ?」
その言葉に憤怒の形相のまま健人は涙を流す。しかし今、彼は武器を下ろすしかなかった。
20.桧山初樹は健人を追っていた。小さい姿であっても、竜戦士の感覚器官が健人達の交戦跡のカルナや魔術の痕跡を辿る。そして竜とその力に触れた初樹には、フォースフィールドがそこにあったことを視認することも出来た。
「間違いない、花っちはここに居た」