No.2 2/4 version 3

2021/10/22 23:13 by someone
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No.2 2/4
 その後、父の哲也(てつや)や見舞いに駆けつけていた姉たち夫婦とも対面して少し話し、また眠った。幸い背中に受けた傷以外は外傷も少なく、医師曰く極度に疲労していた状態からも回復してきているため、あと二日もすれば退院できるということだった。ただ…長らく眠っていたことと胸に秘した思いからか、その夜の剣人は目が冴えていた。枕に頭を着けてこそいるものの、眠れない。
ーーー「その暴漢に襲われた時、剣人はどうしてそこにいたんだ?」
異形の烏に襲われた点を暴漢に差し替え、一通りの事情を話すと、哲也がそう聞いてきた。父の顔に刻まれる心配を内包した皺が、剣人の胸を痛ませるがすぐには返事ができない。
「お父さん、今は…」
純子がどうにか互いの思いを刺激しないように、間に入る。
「…うん…ただな、剣人。お前ずっと苦しそうなんだよ…」
純子の意図を汲みながらも、彼女の思いの代弁と併せての家族の思いを、家長として哲也は伝えた。
「俺がお前のことをわかってやれてなかったのも原因なのはそう思う。ただお前が夜にフラッとそんなところに行ってしまう精神状態が、父さんは心配で、不安だ」
伝え方をすごく考えて、話をしてくれている。剣人は率直にそう思った。昔はもっと感情的な伝え方ばかりの人だったが、父として、家族を思う男として変わってくれたことを強く感じた。だからこそ、察してくれたことが図星なのと相俟って、尚更どう応えたらいいかわからない。
「…ごめん」
うわ言のように出てきたのは、口癖としていつも人に言ってしまう謝罪の言葉。その言葉だけで済むわけではないが、続く言葉が出てこない。実際”終わりたい時がある”なんて言ってしまったら、二人は余計に悲しむから…
「大学も、バイトも、一人暮らしも、始めたばかりだから…とかって無理しないで、帰ってこないか?」
「正直、言いづらいけどな…今回のこともあって、母さんなんか泣いてしまってた…」
その言葉に、純子もまた出口のないその思いを顔に滲ませながらも剣人を見つめた。剣人はそれを一瞬見やるも、正視することは出来ない。だが俯きながらも状況と提案された言葉、そして自身の思いを整理すべく、それぞれを思い返す。そもそも今回のことは、剣人の精神的不安定から端を発している。きっと、両親が言ってくれていることの方が正しいし、優しい。自分自身もそうしたい。そう自認すると共に、言葉が出てきた。
「一つだけ…確かめないといけないことがあるんだけど、それ済んだら…いいかな?帰っても…」
「確かめること?」
怪訝な顔でその様子を見つめる両親に、その時の自分の顔はどう写っていたのだろう…
「身体に異常がないか、まだちょっと不安なんだ」
少しは上手く笑えていただろうか?———
そうして、「精密検査だけさせてもらって退院したい」家族と看護師にそう伝え、話を終えた。多分そこではっきりする。自分の身に、あの時何が起こったのか…そう思い直してベッドから起き上がると、ネックレスについた天体のキーホルダーを患者着の下に身につける。キーホルダーに施されている星の装飾が放つ淡い光に、これ以上何も起こらないことを願いながら、改めて眠ろうとベッドに入る。巡視に来た看護師の持つ懐中電灯の光が漏れ出るのが、伏せる前の目に少しだけ見えた。

 健人が退院し、警察からの事情聴取を受けて自身のアパートに帰ったのは、その二日後の4月18日の土曜日のことだった。アルバイトの退職、大学の休学届け、アパートの解約手続き———実家に帰るのに必要な手続きはこれら三つ。時間を空けてしまえば一気に憂鬱になる。意を決してぶりっじの店長はそ日のうち連絡を入れた。三週間のみ勤めた状況で、店長には淡白にしか対応されなかったが、別にこのバイト先が自分の人生慮ってくれるわけでもない。次回の出勤で向いない仕事とはおさらばとなった。そうしていると夕方を迎え、休日である以上これ以上動くことは出来ず、他は翌週に回すこととなる。
 再度事が起きたは翌週の4月20日、英道大学て休学届を申し入れた時だった。教授に困惑こそされたものの、精神的な不調と自身に起きた事件を盾に押し通し、学生課の事務職員から後日提出する必要書類を一先ず受け取。そのまま帰路に着こうとしたとき、大学玄関に設置された掲示板がふと目に入る。各学部やサークルなどからの掲示物が散乱している中で、あるビラが一際健人の目を引いた。そのビラ目立つことを意図してだろう、力強い黒字の明朝体で大きくこう表記されていた。
 健人が退院し、警察からの事情聴取を受けて自身のアパートに帰ったのは、その二日後の4月18日の土曜日のことだった。大学の休学届け、アルバイトの退職、アパートの解約手続き———実家に帰るのに必要な手続きはこれら三つ。時間を空けてしまえば一気に憂鬱になる。すぐゼミ教授アポトを取るべ電話を入れると、土曜あるもの出勤はしていた。そのまま英道に向かうと教授に困惑こそされたものの、休学についての旨を伝える。そのまま精神的な不調と自身に起きた事件を盾に押し通し、学生課の事務職員から後日提出する必要書類を一先ず受け取った。そのまま帰路に着こうとしたとき、大学玄関に設置された掲示板がふと目に入る。滞りなく休学するためにも、一応その掲示に目を通してみた瞬間、あるビラが健人の目を見開かせた。各学部やサークルなどからの掲示物が散乱している中で、そのビラは目立つことを意図してだろう、力強い黒字の明朝体で大きくこう表記されていた。

———「怪事件についての情報を求めています」

健人は思わず目を見いてビラに記さた子細な情報をくまなく確認するそこは目撃情報伝聞らゆ情報を求め嘆願が記さ、”どんな些細な情報で構いません”と結ばて最後に掲示者氏名、横尾和明(よこおずあき)名前と、その連絡先とて携帯電話の番号が添えられていた。
 その日の夕方、アパートに帰った健人はスマートフォンのカメラで撮影した先のビラを見返す。見返して思案した。この横尾和明とう人物は、何を思っこのビラを掲示したのか。何より下手動けば、こ以上の苦難に巻き込れるのではいかという不安もあった日曜の間、ぶりっじ退職のため引継ぎ等最低限の雑務と挨拶を終えて尚こうした考えが頭から離れなかったが月曜日朝にある衝動が健人の胸中に湧いてく。そは一縷の望みだったかい。しかし———
”こに強い関心を持っいる人物がいるもしれない。自分が独りよりはまだう思いたい———”
最終的に健人を突き動か、掲示された番号に電話をかけさせたは、そんな藁にも縋る思だった。

 アパートに帰った健人は、スマートフォンのカメラで撮影した先ビラを見返す。見返て思案した。この横尾和明という人物、何を思っこのビラを掲示したのか。或いはこ人物は、怪事件に何を見たというか。単独で怪事件追おというのか…自身の日常かかった先日の怪異、の脅威を想起しながら思案続ける。あの胸から噴出た汚濁自身を塗替えようと黒い感覚は、未だこの世ののと思えない得も言われぬ悍ましさがあったあれ追おうなど考えが甘い人物かはそこまでさせかがあるのかそのことを除いて考えても、下手に動けばこれ以上苦難込まるのはないかという不安った。結局どうにも動くこと難しい日曜の間こうした試案を続けざを得かったが月曜の朝を迎えると、ある衝動が健人の胸中に湧いてくる。そは一縷の望みだっもしれない。しかし———
このこと関心を持っている人物がるかもしれい。自分が独りと思うよりはまだそう思いたい———”
最終的に健人を突き動し、掲示された番号電話をかけさせたのは、そんな藁も縋る思いだった。「———横尾です」
スマートフォンの向こうから、年若い青年声がした。電話に慣れいない。ける方もかけられる方もため一瞬何を言えばいいかわからず「…あ、えっ…」という挙動不審な言葉が口ら出てきてしまう
「…失礼すが、どちら様ですか?」
訝な様子で、こちら声が返ってきた。緊張思考が固まりそうにりながら、どうにか言葉振り絞る。、ももし…すみません。僕花森健人っていうんですけど…」
「…はい」
裏返な声で何か名前は伝え。凡そマートさと無縁だがビビりながらでもなんでもどうにか電話かけたその理由は伝えねば
「英大の掲示板で怪事件につてのビラを貼ってのを見けたんですが…」
「えっ!」
不意に帰っきた横尾大声、健人はスマートフォンから右耳を離す。続く横尾の「あのビラ、見てくたん!?」という言葉は、それで耳に届くほど大きなものだった。大きな声はさながら”天然ハンズフリー”と形容したくな。
「あ、はい…僕、英道の一回生んですけど…」
「掲示板で見つけてくれたんですね!…もしかして…!」
話が早い人だ。早すぎてっち説明まで分捕るよう読み込んでいった…おまけに声がでかい。
「ええ…それでお話しさせ頂きたくって…」
「ぜひぜひ!つにします?俺はつで大丈夫っすよ!午後の西棟の3階の教室なんて、学生は基本来ないです、どうです?」
滅茶苦茶に食い気味。いっそ食い千切らそうだ…逆に怖い。
「えええ…そうですね。今日とかでも大丈夫ですか?」
その後も横尾の陽気な圧にじろだものの一先ずは約束を取り付け、健人は電話切ってベッドに向う。疲きっ心身が布団沈み込むと、その重さ逆らえず瞼を閉じた。      

その後、父の哲也(てつや)や見舞いに駆けつけていた姉たち夫婦とも対面して少し話し、また眠った。幸い背中に受けた傷以外は外傷も少なく、医師曰く極度に疲労していた状態からも回復してきているため、あと二日もすれば退院できるということだった。ただ…長らく眠っていたことと胸に秘した思いからか、その夜の剣人は目が冴えていた。枕に頭を着けてこそいるものの、眠れない。
ーーー「その暴漢に襲われた時、剣人はどうしてそこにいたんだ?」
異形の烏に襲われた点を暴漢に差し替え、一通りの事情を話すと、哲也がそう聞いてきた。父の顔に刻まれる心配を内包した皺が、剣人の胸を痛ませるがすぐには返事ができない。
「お父さん、今は…」
純子がどうにか互いの思いを刺激しないように、間に入る。
「…うん…ただな、剣人。お前ずっと苦しそうなんだよ…」
純子の意図を汲みながらも、彼女の思いの代弁と併せての家族の思いを、家長として哲也は伝えた。
「俺がお前のことをわかってやれてなかったのも原因なのはそう思う。ただお前が夜にフラッとそんなところに行ってしまう精神状態が、父さんは心配で、不安だ」
伝え方をすごく考えて、話をしてくれている。剣人は率直にそう思った。昔はもっと感情的な伝え方ばかりの人だったが、父として、家族を思う男として変わってくれたことを強く感じた。だからこそ、察してくれたことが図星なのと相俟って、尚更どう応えたらいいかわからない。
「…ごめん」
うわ言のように出てきたのは、口癖としていつも人に言ってしまう謝罪の言葉。その言葉だけで済むわけではないが、続く言葉が出てこない。実際”終わりたい時がある”なんて言ってしまったら、二人は余計に悲しむから…
「大学も、バイトも、一人暮らしも、始めたばかりだから…とかって無理しないで、帰ってこないか?」
「正直、言いづらいけどな…今回のこともあって、母さんなんか泣いてしまってた…」
その言葉に、純子もまた出口のないその思いを顔に滲ませながらも剣人を見つめた。剣人はそれを一瞬見やるも、正視することは出来ない。だが俯きながらも状況と提案された言葉、そして自身の思いを整理すべく、それぞれを思い返す。そもそも今回のことは、剣人の精神的不安定から端を発している。きっと、両親が言ってくれていることの方が正しいし、優しい。自分自身もそうしたい。そう自認すると共に、言葉が出てきた。
「一つだけ…確かめないといけないことがあるんだけど、それ済んだら…いいかな?帰っても…」
「確かめること?」
怪訝な顔でその様子を見つめる両親に、その時の自分の顔はどう写っていたのだろう…
「身体に異常がないか、まだちょっと不安なんだ」
少しは上手く笑えていただろうか?———
そうして、「精密検査だけさせてもらって退院したい」家族と看護師にそう伝え、話を終えた。多分そこではっきりする。自分の身に、あの時何が起こったのか…そう思い直してベッドから起き上がると、ネックレスについた天体のキーホルダーを患者着の下に身につける。キーホルダーに施されている星の装飾が放つ淡い光に、これ以上何も起こらないことを願いながら、改めて眠ろうとベッドに入る。巡視に来た看護師の持つ懐中電灯の光が漏れ出るのが、伏せる前の目に少しだけ見えた。

健人が退院し、警察からの事情聴取を受けて自身のアパートに帰ったのは、その二日後の4月18日の土曜日のことだった。大学の休学届け、アルバイトの退職、アパートの解約手続き———実家に帰るのに必要な手続きはこれら三つ。時間を空けてしまえば一気に憂鬱になる。すぐにゼミの教授にアポイントを取るべく電話を入れると、土曜であるものの出勤はしていた。そのまま英道に向かうと教授に困惑こそされたものの、休学についての旨を伝える。そのまま精神的な不調と自身に起きた事件を盾に押し通し、学生課の事務職員から後日提出する必要書類を一先ず受け取った。そのまま帰路に着こうとしたとき、大学玄関に設置された掲示板がふと目に入る。滞りなく休学するためにも、一応その掲示に目を通してみた瞬間、あるビラが健人の目を見開かせた。各学部やサークルなどからの掲示物が散乱している中で、そのビラは目立つことを意図してだろう、力強い黒字の明朝体で大きくこう表記されていた。

———「怪事件についての情報を求めています」

その日の夕方、アパートに帰った健人はスマートフォンのカメラで撮影した先のビラを見返す。見返して思案した。この横尾和明という人物は、何を思ってこのビラを掲示したのか。何より下手に動けば、これ以上の苦難に巻き込まれるのではないかという不安もあった。日曜の間、ぶりっじ退職のために引継ぎ等最低限の雑務と挨拶を終えて尚、こうした考えが頭から離れなかったが、月曜日の朝にある衝動が健人の胸中に湧いてくる。それは一縷の望みだったかもしれない。しかし———
”このことに強い関心を持っている人物がいるかもしれない。自分が独りと思うよりは、まだそう思いたい———”
最終的に健人を突き動かし、掲示された番号に電話をかけさせたのは、そんな藁にも縋る思いだった。

「———はい、横尾です」
スマートフォンの向こうから、年若い青年の声がした。電話には慣れていない。かける方もかけられる方も。そのため一瞬何を言えばいいかわからず「…あ、えっと…」という挙動不審な言葉が口から出てきてしまう。
「…失礼ですが、どちら様ですか?」
怪訝な様子で、こちらを窺う声が返ってきた。緊張に思考が固まりそうになりながら、どうにか言葉を振り絞る。
「あ、もしもし…すみません。僕、花森健人っていうんですけど…」
「…はい」
裏返りそうな声で何とか名前は伝えた。凡そスマートさとは無縁だが、ビビりながらでもなんでもいい。どうにか電話をかけたその理由は伝えねば…
「英大の掲示板で、怪事件についてのビラを貼ってるのを見かけたんですが…」
「ええっ!」
不意に帰ってきた横尾の大声に驚き、健人はスマートフォンから右耳を離す。続く横尾の「あのビラ、見てくれたんですか!?」という言葉は、それでも耳に届くほど大きなものだった。その大きな声は、さながら”天然ハンズフリー”と形容したくなる。
「あ、はい…僕、英道の一回生なんですけど、先日…」
「掲示板で見つけてくれたんですね!…もしかして…!」
話が早い人だ。早すぎてこっちの説明まで分捕るように読み込んでいった…おまけに声がでかい。
「ええ…それでお話しさせて頂きたくって…」
「ぜひぜひ!いつにします?俺はいつでも大丈夫っすよ!午後の西棟の3階の教室なんて、学生は基本来ないですし、どうです?」
滅茶苦茶に食い気味。いっそ食い千切られそうだ…逆に怖い。
「え、ええ…そうですね。今日とかでも大丈夫ですか?」
その後も横尾の陽気な圧にたじろいだものの一先ずは約束を取り付け、健人は電話を切ってベッドに向かう。疲れきった心身が布団に沈み込むと、その重さに逆らえず瞼を閉じた。