鴉と火の鳥 No.1 1/2 【B】 version 5

2021/10/06 14:05 by someone
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片割れよりのプロットのつもり
第一章 花森健人の構造
ある構造的な欠落を抱えたFラン大学生である花森健人。彼はその夜、烏の怪物に襲われ、自身も意図せず白銀の烏に変身した。自身に起きた出来事に恐怖しながらも、その真実を求めて彼は朝憬市で起こる怪事件を追っていく。その先で出会う赤髪の魔法使いの少女”リュミエ”、そしてそこに生きる人々がそれぞれ抱くものは、二人に何をもたらすのか。

No.1 1/4
絶望に陥った心を喰らう異形、エクリプスが暗躍する朝憬市。だがこの時の彼らは市街地に攻勢を仕掛けた。対峙するは赤髪の魔法使い”リュミエ”と白銀の鎧烏”リーン”。苦戦する二人に対峙する上級エクリプスはその正義感を嗤う。
しかしリーンの真意は別にあり、リュミエは未だ全てを知らないその思いに向けて瞳を震わせた。

No.1 2/4
「腰痛い」花森健人の鬱屈とした月曜日はそんな一言から始まった。全国に向けたニュース番組の合間に、地元メディアがここ二年ほど度々起きている怪事件について報道している。それを聞き流しながら一応の身支度だけ済まして彼は自宅を出た。
しかし怠惰に過ごす大学の講義やバイト、自分が何をしているのかも分からないし、何をしても一緒だ。そしてそんな虚無を健人はどこか冷笑していた。しかし怠惰に過ごす大学の講義やバイト、自分が何をしているのかも分からないし、何をしても一緒だ。そしてそんな虚無を健人はどこか冷笑していた。

No.1 3/4
その日の夕方、健人は自身の”構造”、それに伴う生活上の困難から、自転車で街外れへと逃避する。やがて惹かれるようにある展望台を目指した。
”自分の中の大事なパーツ”を棄てたことを思い返すためか。
そこを目指すことでどうにか足が動いていたが、不意に現れた烏の怪物に襲われた。
しかしその時展望台の灯りが目に入ると共に、胸にあったキーホルダーの光が、彼を白銀の烏の姿に変える。

No.1 4/4
眼前の脅威と酷似した白銀の姿。だがそれに対する感情よりも先に彼が抱いたのは、烏への殺意だった。”殺されるくらいなら殺す―――”
交錯する白銀の力と烏の技。勝ったのは烏から力の半分と得物を奪った白銀だった。
自らの命の諦観に笑う烏。優位に立ちながら殺めることを畏れる白銀。しかし烏の笑みにより去来した他者の嘲笑の記憶。白銀は怒りのままに烏を蹴りつけその場から去る。泣きながら現実から逃げ去るその姿は、既に花森健人に戻っていた。

No.2 1/4
次に健人が目を覚ましたのは病院だった。傍らには彼の母、純子の憂いに満ちた顔があった。事情を説明しようとするも、その異質さ故に、家族には「暴漢に襲われた」と伝える健人。
一方市街地のとある路地裏。烏のように黒いコートを纏った男=ネーゲルとスーツ姿の茶髪の男=カイルスとが辛辣に言葉を交わす。
弱々しいネーゲルの様相を皮肉交じりに探るカイルス。ネーゲルはそれを一瞥し「俺に構うより優先すべきは儀式だろう」とだけ告げるも、カイルスは言葉巧みに彼から情報を引き出す。

No.2 2/4
その後、健人は家族から「無理しないで実家に帰ってこないか」と提案される。それを受け入れつつも変身した身体に対して強い不安を覚える健人は、自分に何が起こったか確かめるために「精密検査だけ受けておきたい」とそれとなく家族と医療サイドに伝える。
その後退院し、警察の事情聴取も終えた健人は、身辺整理の最中に大学の掲示板で「怪事件についての情報を求めています」と書かれたビラを見つける。

No.2 3/4
少々躊躇いはしたものの、健人はビラに記されていた連絡先に意を決して連絡する。
電話に出た横尾和明と夕方にPCルームで待ち合わせて話をすると、彼の二つ下の恋人の高山歩美が怪事件の被害者で、昏睡状態にある彼女に何があったのか、その真実を追おうとしていた。
そんな和明は、既に怪事件の背後に”何か”がいることは察知していた。そのことを受けて、おずおずと自分の事情を説明する健人。和明から「だけど、どうして花森君は無事だったんだ?」と問われた。

No.2 4/4
「それは…」自分も怪物のようになって戦い、切り抜けたなどとは言えず、言い淀む健人。外は宵闇が迫り街灯が点き始めていた。その時学生の悲鳴が聞こえる。
「まさか…」悲鳴が聞こえた方向に向かった和明と健人。そこにあったのは襲われた男子学生と蜘蛛の怪人。
「お前ら何なんだ!歩美に何した!!」
道中で携えた鉄パイプで蜘蛛に挑みかかる和明だったが蜘蛛の反撃に倒れてしまう。蜘蛛はそのまま健人にも襲いかかろうとするも、胸のキーホルダーが再び輝いた。一瞬の隙をついて蜘蛛に一太刀浴びせると、男子学生と和明を離れた場所に運び、大学内で激しく交戦する。その後、何とかこれを撃退。

No.3 1/4
その後、匿名で警察に連絡を入れた健人。後日、休学手続きの準備を進めていると、先の戦いの際軽傷で済んだ和明から、襲われた男子学生=英道大学二年、葉山修司に話を聞こうと声をかけられる。他者の事情に関わりたくはない健人だったが、和明に説得されて彼に同行する。葉山本人は心身が疲弊しており、また襲われた時の傷が深かったことから直接話すことは叶わなかった。しかし助けを求める葉山の妹の薫から、葉山についての話を聞くことができた。

No.3 2/4
近所のファストフード店にて、薫に「何かお兄さんに変わった様子があったとか、襲われたことに心当たりはなかった?」と和明は聞く。それを受けて薫は「なんで修くんだったのかな…」と涙ながらに言った。健人には何も言うことはできず、しかし神経が昂り、手足が痺れたようになっていた。「助けてっていうのは、お兄さんの関係のこと?」それだけ問うのが精一杯だった。
だが薫はその問いに反応し、自らの思いを話し始める。
葉山の家は所謂ひとり親家庭で生活上の余裕がなかった。そんな中で子どもには出来るだけのことをしてきてくれた母が三ヶ月前に倒れた。修司は
高校二年までは素行が良くない学生だったが、薫には優しい兄だったし、心根を入れ換えて英道では奨学金を得て学業とバイトに励んでいた。その矢先のことだった。

No.3 3/4
「少なくとも兄はどちらかを選ばなければならない状況だったんだと思います」
母が倒れたことで、その負担は二人にのし掛かっていた。涙ながらに療養しつつも公的扶助に掛け合う母と、秀才の薫の将来を閉ざさないためにも、修司は道を踏み外すことなく、かつ自身の学業を修め、また家族を守るために日々全力だった。しかし、それが行き詰まったようだったと薫は語る。
      

第一章 花森健人の構造
ある構造的な欠落を抱えたFラン大学生である花森健人。彼はその夜、烏の怪物に襲われ、自身も意図せず白銀の烏に変身した。自身に起きた出来事に恐怖しながらも、その真実を求めて彼は朝憬市で起こる怪事件を追っていく。その先で出会う赤髪の魔法使いの少女”リュミエ”、そしてそこに生きる人々がそれぞれ抱くものは、二人に何をもたらすのか。

No.1 1/4
絶望に陥った心を喰らう異形、エクリプスが暗躍する朝憬市。だがこの時の彼らは市街地に攻勢を仕掛けた。対峙するは赤髪の魔法使い”リュミエ”と白銀の鎧烏”リーン”。苦戦する二人に対峙する上級エクリプスはその正義感を嗤う。
しかしリーンの真意は別にあり、リュミエは未だ全てを知らないその思いに向けて瞳を震わせた。

No.1 2/4
「腰痛い」花森健人の鬱屈とした月曜日はそんな一言から始まった。全国に向けたニュース番組の合間に、地元メディアがここ二年ほど度々起きている怪事件について報道している。それを聞き流しながら一応の身支度だけ済まして彼は自宅を出た。
しかし怠惰に過ごす大学の講義やバイト、自分が何をしているのかも分からないし、何をしても一緒だ。そしてそんな虚無を健人はどこか冷笑していた。

No.1 3/4
その日の夕方、健人は自身の”構造”、それに伴う生活上の困難から、自転車で街外れへと逃避する。やがて惹かれるようにある展望台を目指した。
”自分の中の大事なパーツ”を棄てたことを思い返すためか。
そこを目指すことでどうにか足が動いていたが、不意に現れた烏の怪物に襲われた。
しかしその時展望台の灯りが目に入ると共に、胸にあったキーホルダーの光が、彼を白銀の烏の姿に変える。

No.1 4/4
眼前の脅威と酷似した白銀の姿。だがそれに対する感情よりも先に彼が抱いたのは、烏への殺意だった。”殺されるくらいなら殺す―――”
交錯する白銀の力と烏の技。勝ったのは烏から力の半分と得物を奪った白銀だった。
自らの命の諦観に笑う烏。優位に立ちながら殺めることを畏れる白銀。しかし烏の笑みにより去来した他者の嘲笑の記憶。白銀は怒りのままに烏を蹴りつけその場から去る。泣きながら現実から逃げ去るその姿は、既に花森健人に戻っていた。

No.2 1/4
次に健人が目を覚ましたのは病院だった。傍らには彼の母、純子の憂いに満ちた顔があった。事情を説明しようとするも、その異質さ故に、家族には「暴漢に襲われた」と伝える健人。
一方市街地のとある路地裏。烏のように黒いコートを纏った男=ネーゲルとスーツ姿の茶髪の男=カイルスとが辛辣に言葉を交わす。
弱々しいネーゲルの様相を皮肉交じりに探るカイルス。ネーゲルはそれを一瞥し「俺に構うより優先すべきは儀式だろう」とだけ告げるも、カイルスは言葉巧みに彼から情報を引き出す。

No.2 2/4
その後、健人は家族から「無理しないで実家に帰ってこないか」と提案される。それを受け入れつつも変身した身体に対して強い不安を覚える健人は、自分に何が起こったか確かめるために「精密検査だけ受けておきたい」とそれとなく家族と医療サイドに伝える。
その後退院し、警察の事情聴取も終えた健人は、身辺整理の最中に大学の掲示板で「怪事件についての情報を求めています」と書かれたビラを見つける。

No.2 3/4
少々躊躇いはしたものの、健人はビラに記されていた連絡先に意を決して連絡する。
電話に出た横尾和明と夕方にPCルームで待ち合わせて話をすると、彼の二つ下の恋人の高山歩美が怪事件の被害者で、昏睡状態にある彼女に何があったのか、その真実を追おうとしていた。
そんな和明は、既に怪事件の背後に”何か”がいることは察知していた。そのことを受けて、おずおずと自分の事情を説明する健人。和明から「だけど、どうして花森君は無事だったんだ?」と問われた。

No.2 4/4
「それは…」自分も怪物のようになって戦い、切り抜けたなどとは言えず、言い淀む健人。外は宵闇が迫り街灯が点き始めていた。その時学生の悲鳴が聞こえる。
「まさか…」悲鳴が聞こえた方向に向かった和明と健人。そこにあったのは襲われた男子学生と蜘蛛の怪人。
「お前ら何なんだ!歩美に何した!!」
道中で携えた鉄パイプで蜘蛛に挑みかかる和明だったが蜘蛛の反撃に倒れてしまう。蜘蛛はそのまま健人にも襲いかかろうとするも、胸のキーホルダーが再び輝いた。一瞬の隙をついて蜘蛛に一太刀浴びせると、男子学生と和明を離れた場所に運び、大学内で激しく交戦する。その後、何とかこれを撃退。

No.3 1/4
その後、匿名で警察に連絡を入れた健人。後日、休学手続きの準備を進めていると、先の戦いの際軽傷で済んだ和明から、襲われた男子学生=英道大学二年、葉山修司に話を聞こうと声をかけられる。他者の事情に関わりたくはない健人だったが、和明に説得されて彼に同行する。葉山本人は心身が疲弊しており、また襲われた時の傷が深かったことから直接話すことは叶わなかった。しかし助けを求める葉山の妹の薫から、葉山についての話を聞くことができた。

No.3 2/4
近所のファストフード店にて、薫に「何かお兄さんに変わった様子があったとか、襲われたことに心当たりはなかった?」と和明は聞く。それを受けて薫は「なんで修くんだったのかな…」と涙ながらに言った。健人には何も言うことはできず、しかし神経が昂り、手足が痺れたようになっていた。「助けてっていうのは、お兄さんの関係のこと?」それだけ問うのが精一杯だった。
だが薫はその問いに反応し、自らの思いを話し始める。
葉山の家は所謂ひとり親家庭で生活上の余裕がなかった。そんな中で子どもには出来るだけのことをしてきてくれた母が三ヶ月前に倒れた。修司は
高校二年までは素行が良くない学生だったが、薫には優しい兄だったし、心根を入れ換えて英道では奨学金を得て学業とバイトに励んでいた。その矢先のことだった。

No.3 3/4
「少なくとも兄はどちらかを選ばなければならない状況だったんだと思います」
母が倒れたことで、その負担は二人にのし掛かっていた。涙ながらに療養しつつも公的扶助に掛け合う母と、秀才の薫の将来を閉ざさないためにも、修司は道を踏み外すことなく、かつ自身の学業を修め、また家族を守るために日々全力だった。しかし、それが行き詰まったようだったと薫は語る。