8.取引と人質 version 3

2023/10/07 10:12 by someone
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8.
耳を疑った。一般社会で活躍しているであろう、目の前の美女ーー上坂蓉子から告げられた言葉。それは出会ってすぐの彼女に抱いた第一印象から、あまりにもかけ離れた浮世離れに過ぎる単語だった。
怪物の都市伝説、そして連続失踪事件。確かに健人も少しは知るところではある。だが寝耳に水の形で、自分が僅かながら関わっている前提でされたその質問は、知らず健人を揺さぶった。
「あなたは一体ーー」
「それは私も思うところだけど…さっき言った通り、私は彼の都市伝説と連続失踪事件を追っているんです」
「…そもそも、その都市伝説ってなんすか。それと俺がどうして結び付くんです?」
口から出た声は、上擦っていた。上坂の整った眼が、健人の焦燥をも射抜くようにこちらを見ている。
「簡単な話ですよ。事件を調べてるのは、あなた達だけじゃないんだから」
「だから何で俺たちが調べてるってーー」
「"俺たち"?」
言動に出たボロをすかさず上坂は捕えて健人を揺さぶる。健人の意識は思考が固まる自身を感じていた。
「動揺することないですよ、私はもうあなた達の存在は認知してるんだから上擦った声、言動に出たボロをすかさず上坂は捕えて健人を揺さぶる。健人の意識は思考が固まる自身を感じていた。
「動揺することないですよ、私はもうあなた達の存在は認知してる」
「…どうしてわかった?」
「まあ、それはこちらにもツテがあるというだけの話。それにあれだけ派手に暴れていればね」「まあ、それはこちらにもツテがあるというだけの話。それにあれだけ派手に暴れていればね」
これまでの戦闘場面を想起すれば、確かに白昼堂々戦っていたこともあった。しかし何より、自分達に辿り着くに至った"ツテ"の存在が、健人の心中を重くする。
「一応、雑誌社の委託で私がこのお店の取材に来たのは本当だけど、本命はあなたとの取引に来た」
「取引?」
「私は故あって、この怪事件の真実を追ってる。私の持ってる情報では、あなたかあなたの相棒くんは、それに近づき得る人間なの」
「どういう意味だよ、それ」
涼しく告げた上坂を睨み、怒りを込めて言い放つ。このところ訳のわからないうちに話を勝手に進められている。腹を割って話せた人のそれならともかく、殆どがそうだ。いい加減にしてくれ。
「そんな風に言われても、少なくとも事実はそういう状況」
「…要求と対価は?」
「要求は事件の取材として、私をあなた達の活動に同行させて欲しい。対価は私の持ってる情報。どう?あなた達にも無益でないと思うけど」


      

耳を疑った。一般社会で活躍しているであろう、目の前の美女ーー上坂蓉子から告げられた言葉。それは出会ってすぐの彼女に抱いた第一印象から、あまりにもかけ離れた浮世離れに過ぎる単語だった。
怪物の都市伝説、そして連続失踪事件。確かに健人も少しは知るところではある。だが寝耳に水の形で、自分が僅かながら関わっている前提でされたその質問は、知らず健人を揺さぶった。
「あなたは一体ーー」
「それは私も思うところだけど…さっき言った通り、私は彼の都市伝説と連続失踪事件を追っているんです」
「…そもそも、その都市伝説ってなんすか。それと俺がどうして結び付くんです?」
「簡単な話ですよ。事件を調べてるのは、あなた達だけじゃないんだから」
「だから何で俺たちが調べてるってーー」
「"俺たち"?」
上擦った声、言動に出たボロをすかさず上坂は捕えて健人を揺さぶる。健人の意識は思考が固まる自身を感じていた。
「動揺することないですよ、私はもうあなた達の存在は認知している」
「…どうしてわかった?」
「まあ、それはこちらにもツテがあるというだけの話。それにあれだけ派手に暴れていればね」
これまでの戦闘場面を想起すれば、確かに白昼堂々戦っていたこともあった。しかし何より、自分達に辿り着くに至った"ツテ"の存在が、健人の心中を重くする。
「一応、雑誌社の委託で私がこのお店の取材に来たのは本当だけど、本命はあなたとの取引に来た」
「取引?」
「私は故あって、この怪事件の真実を追ってる。私の持ってる情報では、あなたかあなたの相棒くんは、それに近づき得る人間なの」
「どういう意味だよ、それ」
涼しく告げた上坂を睨み、怒りを込めて言い放つ。このところ訳のわからないうちに話を勝手に進められている。腹を割って話せた人のそれならともかく、殆どがそうだ。いい加減にしてくれ。
「そんな風に言われても、少なくとも事実はそういう状況」
「…要求と対価は?」
「要求は事件の取材として、私をあなた達の活動に同行させて欲しい。対価は私の持ってる情報。どう?あなた達にも無益でないと思うけど」