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オルテール・パンドルフィーニ
▼概要
欠落は「魔力」、√能力の核は「膂力」。魔術に関する素養の一切を失い、代わりに制御に苦慮するほどの甚大な筋力を得た。
イタリア・ミラノの近郊にある田舎町に住む、パンドルフィーニ3兄妹の長兄。後見人の支援を受けながら生活している。2021年の冬に人としての身と名を受けた。
どことも知れぬ√から√EDENにやって来た元竜。後見人に拾われる以前の記憶はない。オカルト研究を至上の命題とする彼女に検体として全面的に協力することを条件に、生活や身元を保証してもらっている。
半年に一度の独自の健康診断によれば、「一部異常値はみられるものの概ね20歳前後の男性」から数値の変化はみられない。そのため本人は実年齢を「最低でも80歳以上」と認識している。
3年間はイタリアの成人年齢である18歳を名乗っていたが、2024年の冬に√能力者に覚醒したことを契機に書面上の年齢を一年に一歳ずつ引き上げていくことにした。便宜上の誕生日は後見人に拾われた日。
無国籍であり無就学歴。学校に通うことも出来ないが、年齢相応の人間らしい生活には密かな憧れを抱いている。
コンクリートを素手で破断する甚大な膂力、疎らに体に生える鱗、感情を映して燃え盛り時に火の粉と火花を散らす瞳と、心の昂りに応じて際限なく上昇する体温――人らしからぬ特徴を隠すように遮熱性の装具で自身を覆ってなお、他者に触れることは忌避する。
温厚で理知的、大雑把で暢気な楽天家。他者に入れ込み悲哀に感応しやすい平和主義者。
対話第一の性格でこそあるものの、言葉が通じない相手や人間文明の敵に対して剣を取ることには躊躇もない。「弱きを助け強きを熟慮のうえ必要な分だけ挫く」がモットーの自称・文明の守り手。
自身より他者を優先し、滅多に怒ることはないものの、家族や友人を傷付けられると激昂する。また意見や主張そのものはしっかり持っており、相手の言い分が理不尽だと感じれば迷いなく議論に持ち込む。
とてつもない人見知りでありながら尋常でない寂しがり屋。矛盾する性質を克服するため、日頃は「明るく穏やかでジョークを好む、人好きのする紳士」の芝居をして人と接する。現在は芝居抜きで会話出来るのは妹たちと数名の友人のみ。それ以外の人物を相手に演技を止めれば、目を泳がせてまともに声を発することさえ出来ずに立ち尽くす。
素で接することの出来る相手には本来の性格が発露する。楽しいことが大好きで場に流されやすく、小生意気でやや強引な負けず嫌い。ごく普通の18歳程度の少年じみた言動が目立つようになる。
何より誰より妹たちを、その次に友人を優先する超のつくシスコン。兄としての自負が非常に強く、「善きお兄様」としての振る舞いを追及している。
過去の記憶は一切ないが、自身の膂力や人らしからぬ特徴などから自認は限りなく竜寄り。自身を「文明からすれば所詮は外様の怪物」と位置づけ、文明から生まれ文明と共に生きる者たちと自身の間に一線を引いて接する。
明るく陽気なラテン系の振る舞いに対し、中身は極めて理詰めの男。得意なことは状況把握と現状分析、作戦立案。いかなる有事にも冷静に対処するが、他方で見切りをつけるのも早い。殊に思考の及ばない運の領域や、ヒントのない状態で取り敢えず一つを選ばなくてはならないときは、日頃持ち歩くペンを投げて決めることが多い。また日常生活などの手を抜ける部分においては大雑把に及第点を目指す。
自他の能力の限界を把握し、可能・不可能を判断する能力に長ける。「出来ないことはしないが、出来ることは何でもする」という信念のもと、自身の能力に対して揺るがぬ自信を持って物事に当たる。
戦闘は長大な両手剣を片手で振り回す脳筋スタイル。またモバイルマナバッテリーを利用して、血液を媒体に疑似魔術を発動させることの出来る弾丸を錬成し、特製のリボルバー銃に装填することで一時的に魔術の真似事も可能。
竜の四肢、翼、角、尻尾を発現させることも出来るが、アルティアの要望に沿って普段はあまり使わない。封印された竜の力が凝縮されている血液はロードナイトの如く煌めく。
命は比較的大切にする方。死に対する忌避感や痛みに対する嫌悪感はある。また自分が傷付くことで友人が悲しむことは理解しているものの、誰かの命を天秤に掛ける必要がある局面では自身の命を捨てて状況の打開をはかる。
血液の全てを使えば爆弾の如く周囲を火の海にすることが可能。いざというときのための自決用ナイフを懐に隠している。
好きなものが沢山ある。家族と友人、チーズとパスタとエスプレッソ、人々の営みに溢れる幸福な笑顔と、笑えるジョーク。それらを包み隠さず惜しみなく言葉にして回ることも大好き。いつでも楽しいことと面白いことを探して歩く、身と心が幾分竜に近しいだけの、見目相応の少年。
表面上は。
▼深層
実年齢は500歳。真実の欠落は「半身」。アルティアとは文字通りの片割れ関係で、封印の際に強大な一頭の竜が二つに分かたれ双子となった。
片割れが強く持つ特質を殆ど全て欠落している。√能力者に覚醒する以前からの傾向は覚醒を機にいっそう強まり、単独の存在としてみれば心身ともに非常にアンバランス。
嘗て人間を愛し慈しむがゆえに姿を隠し、しかし愛する雛を殺されたことで憎悪に駆られ、街一つを焼き滅ぼした雌雄同体の緑竜の右半身。憎悪の契機となった記憶を失ったことで元来の温厚な人好きとなっているものの、力と共に封じられただけの記憶の軛は容易に綻びる。
暗闇と孤独を引き金に、過去の緑竜の感情に呑み込まれる発作を起こす。それゆえ自らの中にある人間に対する絶望や憎悪、強い悲哀を自覚しており、それらがいつか己を吞み込んで文明に致命的な害を及ぼすことを懸念している。
本人は無自覚ながら自身への興味関心が一切ない。
苦痛や恐怖、喜びや幸福、悲しみや怒りなどの感情は他者と同じように感じるものの、それらを感じている自分には極めて無関心。己の存在そのものに対する一切の無感動は、表面的には利他的な言動や自己犠牲として発露する。
自らを起点として強い感情を抱くことが滅多にない。自身の無意識下の空洞を埋めるように責務を背負い、「在るべき自分」の強固な理想で人格を覆う。自身の選択はべき論に終始しがちで、いつでも「最善の選択」をしようとする。
精神面ではアルティアの存在に強く依存しており、意志決定や感情の要として彼女の存在を常に必要としている。
たとえ全てを思い出しても、「一つに戻りたい」とは思わない。
手を繋いでいなければ、己の中の絶大な虚を埋められない。
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