「異世界平和」試し書き version 2

2025/07/02 18:58 by abisu
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「異世界平和」試し書き
1
「この惨劇はお前の仕業か?」
辺りを蔓延る屍と鉄の匂い。
その中心に立つ人物に武蔵は問う。
「そうさ!素晴らしいだろ、この香り!この血生臭さ!」
男は高らかに笑いながら言葉を続けた。
「お前も混ざるか?」
男の腕からは血が滴り、残忍さが伝わってくる。
そして顔に浮かぶ笑みは、狂気を醸し出している。
周りには人どころか、森にも関わらず獣の一匹すら近づかないこの異質感。
だが武蔵は、そんな空気に対して動揺の一つ見せず、一言呟いた。
「……混ざってんな」
その声は小さく、魔法使いの男には届かなかった。
「あ?聞こえねぇよ」
「この真っ赤な血の池に、ドス黒いあんたの血が混ざってるって言ってんだよ」
腰に下げた刀の鞘に手を掛ける。
それを見て、男は構える。
「はっ、おもしれぇ!」
武蔵が踏み込む。
「掛かってこいよォ!」
男目掛けて突き進む武蔵。
だがその表情は見えない。
空を切り、ただひたすらに進む。
(俺は魔法使いだから接近戦は苦手だと、アイツはそう思っているのだろう。が、俺はソレをしない、むしろ逆手に取ってやる。近づいてきたところを殴り飛ばしてやらァ……!)
その時、武蔵が鯉口を切った。
(なるほど、刀で真っ二つに切るつもりか。甘ぇなァ!たかが一閃、交わしてカウンターぶち込んでやる)
魔法使いの男は身構える。
案の定、武蔵の手が刀の柄に伸びる。
そのまま、武蔵が刀を握りしめた。
(来るッ!)
僅かな動作で武蔵が横に切ると判断した男。
素早く身を屈める。が、直後に違和感を覚えた。
(頭上に風の流れが……来ない⁉)
男はハッとした。
刀が横切った感覚がなかった。
そう。武蔵は刀を握ったまま、抜いていない。
「隙だらけだよ、雑魚」
身を屈めている男の顎に、武蔵の膝蹴りが迫った。
(マズッ⁉)
反射的に飛び上がって避ける男。
しかし休む間もなく、追撃の予感が迫る。
武蔵の刀が抜かれた。
(今かよ!)
腹を切られる男。
さらに、抜刀の勢いのまま、左足を回す。
着地した左足を軸に、今度は右足を回した。
「ぐはっ‼」
武蔵の回し蹴りは見事に男を吹き飛ばす。
気づけば、男は血の池から追い出されていた。
今や池の中心に立つのは武蔵だった。
男は膝を付き、腹に手を当てた。
「はぁ、はぁ……回復っ、魔法……ッ!」
(ははっ、何てヤツ。この一瞬で、俺に回復魔法を……)
恐怖心からの疲労に襲われつつ、男はゆっくりと顔を上げる。
目に映るのは、刀を鞘に納める武蔵の姿。
その佇まいは、格の差を伝えている。
(俺は……コイツには勝てない)
「バケモノめ……!」
そう呟き、恐る恐る立ち上がる男。
「おい死にぞこない」
武蔵の声に、男は静止する。
「隙をやる。生きるか死ぬか、選べ」
その言葉を聞くと、男は震えながらもそそくさと立ち去った。
男が立ち去った後、武蔵は足元の血を見つめた。
そして、傍に転がる屍を見つける。
武蔵はしゃがみ込んだ。
「ごめんな、仇を逃がしちまって。殺ろうと思えば殺れたんだけど……」
言いながら、瞼を閉じさせる。
「罪なき人の純血に……罪人の血を、混ぜたくなくてね」
そういって、手を合わせた。そういって、手を合わせた。

2
      

1
「この惨劇はお前の仕業か?」
辺りを蔓延る屍と鉄の匂い。
その中心に立つ人物に武蔵は問う。
「そうさ!素晴らしいだろ、この香り!この血生臭さ!」
男は高らかに笑いながら言葉を続けた。
「お前も混ざるか?」
男の腕からは血が滴り、残忍さが伝わってくる。
そして顔に浮かぶ笑みは、狂気を醸し出している。
周りには人どころか、森にも関わらず獣の一匹すら近づかないこの異質感。
だが武蔵は、そんな空気に対して動揺の一つ見せず、一言呟いた。
「……混ざってんな」
その声は小さく、魔法使いの男には届かなかった。
「あ?聞こえねぇよ」
「この真っ赤な血の池に、ドス黒いあんたの血が混ざってるって言ってんだよ」
腰に下げた刀の鞘に手を掛ける。
それを見て、男は構える。
「はっ、おもしれぇ!」
武蔵が踏み込む。
「掛かってこいよォ!」
男目掛けて突き進む武蔵。
だがその表情は見えない。
空を切り、ただひたすらに進む。
(俺は魔法使いだから接近戦は苦手だと、アイツはそう思っているのだろう。が、俺はソレをしない、むしろ逆手に取ってやる。近づいてきたところを殴り飛ばしてやらァ……!)
その時、武蔵が鯉口を切った。
(なるほど、刀で真っ二つに切るつもりか。甘ぇなァ!たかが一閃、交わしてカウンターぶち込んでやる)
魔法使いの男は身構える。
案の定、武蔵の手が刀の柄に伸びる。
そのまま、武蔵が刀を握りしめた。
(来るッ!)
僅かな動作で武蔵が横に切ると判断した男。
素早く身を屈める。が、直後に違和感を覚えた。
(頭上に風の流れが……来ない⁉)
男はハッとした。
刀が横切った感覚がなかった。
そう。武蔵は刀を握ったまま、抜いていない。
「隙だらけだよ、雑魚」
身を屈めている男の顎に、武蔵の膝蹴りが迫った。
(マズッ⁉)
反射的に飛び上がって避ける男。
しかし休む間もなく、追撃の予感が迫る。
武蔵の刀が抜かれた。
(今かよ!)
腹を切られる男。
さらに、抜刀の勢いのまま、左足を回す。
着地した左足を軸に、今度は右足を回した。
「ぐはっ‼」
武蔵の回し蹴りは見事に男を吹き飛ばす。
気づけば、男は血の池から追い出されていた。
今や池の中心に立つのは武蔵だった。
男は膝を付き、腹に手を当てた。
「はぁ、はぁ……回復っ、魔法……ッ!」
(ははっ、何てヤツ。この一瞬で、俺に回復魔法を……)
恐怖心からの疲労に襲われつつ、男はゆっくりと顔を上げる。
目に映るのは、刀を鞘に納める武蔵の姿。
その佇まいは、格の差を伝えている。
(俺は……コイツには勝てない)
「バケモノめ……!」
そう呟き、恐る恐る立ち上がる男。
「おい死にぞこない」
武蔵の声に、男は静止する。
「隙をやる。生きるか死ぬか、選べ」
その言葉を聞くと、男は震えながらもそそくさと立ち去った。
男が立ち去った後、武蔵は足元の血を見つめた。
そして、傍に転がる屍を見つける。
武蔵はしゃがみ込んだ。
「ごめんな、仇を逃がしちまって。殺ろうと思えば殺れたんだけど……」
言いながら、瞼を閉じさせる。
「罪なき人の純血に……罪人の血を、混ぜたくなくてね」
そういって、手を合わせた。

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