0 【ミミズ】 みんなに公開

茹だる梅雨が終わり、初夏が始まった日、それは唐突に、されどいつもの様にそこに放置されていた
そこには、昨晩雨が降っていたからだろうか、土に戻れなく枯れ果てたミミズがそこに1人放置されていた
近くにアリの巣があるのだろうか、アリはミミズの死体を巣へ持って行こうとする
それを、私は見ている
哀れに感じたから?無情に感じたから?…その答えには正解はないだろうし、感じた人によるだろうが…この作中ではその考えを否定しよう。
私は、彼に憐れみや尊敬の念を抱き、死を嘆く程の人ではない、そういう人の器ではない
ただ……ただ、なんと言うのだろうか
“ああ、これが摂理なのだ”
そう頭に浮かんだ。
雨が降る事も普通の事で、雨を含んだ土から逃げるのも普通の事。そして炎天下の中枯れ果てるのも普通の事。その上で、アリに食べられる事も普通の事なんだ、そうなのだ
酷く合理的で、酷く自然な事
それを地球は何千年、何万年、何億年も繰り返している。私にとって途方もない、寿命も足りない様なそんな時間を
結局、人間社会もその“合理”に辿って生きている。合理と言うには些か感情的だが、成長して職に着くのは普通の事、その先が地獄で逃げるのも普通の事。そしてそのままどの色にもつけずに死んでいくのも普通の事。その上で、インターネットという物で死後も玩具にされるのは、普通の事。
だからこそ、私達は喰われゆくミミズと変わらない
いや、ミミズの方がただしいのかもしれない。我々は辛いという感情で逃げているが、彼は生存の為に逃げているのだから。いや、辛いという感情も自殺という死をしない為の生存か
そんな事を考えていると、母に呼ばれた
「早く家に入りなさい」
その言葉に、私はは〜いと返事をしながら。真っ先に家に入ろうとしてミミズを踏んだ

0

メモを他の人に見せる

このメモを見せたい人に、このURL(今開いているページのURLです)を教えてあげてください

コメント(0)

  • someone

  • someone