「このドイツの機甲師団は凄いね。歩兵をどんなに積み上げても突破されてしまう」
レフが画面でスタックした赤軍が崩れるのを見ながら感心して呟く
「うん、電撃戦って言うの。それで包囲されちゃうと一気に士気が減って近接航空支援に削られちゃうから気をつけてね」
レフの戦況が気になるエルミリアが心配げに言う
「うーん。それにしても前線が広すぎるのに歩兵が少なすぎるみたいだ。
もっと前線を下げるか、それとも……」
「レフ。戦略的再配置!この満州の前に並んでる部隊を本国に持っていくの」
「それは名案だね。でも、そうするとシベリアを守る兵がいなくなってしまう」
「今、JAPANはUSSRを攻めたりしないよ?」
「それは密約かな? 期間と条件は」
「えっと、期間は3年で。条件は……」
「条件は?」
「クッキー3つ! 皇女エルミリアはこれの割譲をUSSRのレフ代表に要求する!」
そういうとエルミリアはお茶うけに置いてあるクッキーを指さした
「あはは! いいだろう皇女エルミリア。『クッキー条約』成立だ」
そういうとレフは満州前面の歩兵師団の戦略再配置をおこない、クッキー3つをエルミリアへと丁重に渡した。
こうして、レフはなんとか後方予備を確保し、前線の崩壊を防ぐ目処が立った。
一方、エルミリアは別の事で悩んでいた。
エルミリアは過去の幾度もの経験で、この後のJAPANの歴史的イベントを知っていた。
日米開戦である。
エルミリアはAI戦でも対人戦でも日米開戦は避けていた。
AI戦であれば周到に準備を重ねれば勝てなくは無いが、お気に入りの艦隊を消耗することは避けられない。伸びきった補給を維持することもままならないのだ。
だが、今回だけは勝手が違う。レフがUSSRなのだ。
もしJAPANが真珠湾攻撃による日米開戦を行わない場合、USAは連合国に参加しない。
USAからUSSRへの数度の援助(レンドリース)も西部戦線の形成も起こらない。
つまり、レフのUSSRだけでナチスドイツを倒さなければならないのである。
エルミリアはゲーム内の地球の未来を知っており、レフは恐らく知らない。
でも……レフを助けたいよ!
それが歴史の選択として正当な理由ではないことは十分にわかっていた。
その決断が枢軸国と連合国という相容れない関係になることも十分に分かっていた。
それでもエルミリアは選ぶことにした。
「トラ・トラ・トラ」を
(つづく)
第五話
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