0 囚われ風紀

「眠い……」
そう呟きながらゲヘナ学園の早朝に銀鏡イオリはパトロールを行っていた。
最近、起こっている事件としてキヴォトスで生徒の失踪が相次いでいた。それはゲヘナも無関係ではなく、情報部が掴んだ失踪事件と同時期に現れた怪しい集団の情報も合わせて、風紀委員会の行政官、天雨アコはこれを誘拐事件と判断、対策として警備強化と犯人確保のためにパトロールの範囲と回数が増えていた。
「全く、どこのどいつなんだよ。こんな迷惑なことをしでかしたのは」
そう言ってイオリはその集団の目的情報が出ていた裏通りや廃墟を見て回ったが、そのような存在を見つけられなかった。
「まぁ、人目の付かないこんな場所にそんな集団がいたら逆にわかりやすいからな……いい加減出てこい、さっきからコソコソ付いてきてるのは気づいてるんだからな」
「……っ!」
イオリがそう告げると驚いたような雰囲気でゾロゾロと大量のスケバン達が現れた。
「まさか気づかれてたとは…」
「どっちにしろ襲いかかる予定なんだから別にいいんじゃね?」
「銀鏡イオリ……日頃から私たちをしつこく追ってボコボコにしやがって今日という今日は覚悟しやがれ!日頃の恨みを晴らしてやら」
「自分から人目の付かない場所まで移動してくれて助かるぜ」
「思ったより多いな……はぁ……なんだよタダの問題児達か。後、ボコボコにされてるのはお前達が暴れまくるからだろ!規則をちゃんと守れ!」
「うるさい!ゲヘナで暴れて何が悪いんだよ!」(ドドドドッ)
イオリがスケバン達に指摘をするとスケバン達は激昂し、襲いかかってきた。
「それはそうだけど良いか悪いかで言えば悪いだろうが!」(ドンッ!)
「ぐあっ!」(バタン)
「まず、一人」
「クソッ!ばらけるな!相手は一人だ囲んで叩け!」
「そうは言っても速くて捉えられない!」
襲いかかってきた相手をイオリは一人、また一人と確実に片付けていった。
数分後───────────、
後半から集団でいたスケバン達は廃墟内を逃げ回り、それをイオリが追いかけるという構図となっていたが、次々倒され残り一人になっていた。
「くそっ!何でたった一人にここまでやられるんだよ!」
「はぁ、はぁ、こっちからしてみれば難癖つけて襲いかかってきた癖に途中から逃げてばっかで何がしたいんだよお前達は!私は忙しいってのに!あーもう!時間と体力の無駄だ!」
(チャキッ)
「わー!やめて!私たちが悪かったから痛いことしないで!」
「喚くな!お前達からふっかけてきたんだろ!」
「もうしないから許して〜!」
「今更何言ってんだ!」
(ギャーギャー!)
「う、う〜ん。くそっ、躊躇いなく打ちやがって。うん?あれは……まだやっているのか?とっくに牢屋の中だと思ったのに?」
最後の一人になったスケバンの命乞いと苛立っているイオリの2人にのやり取りであたりは騒がしくなっており、その騒ぎによってイオリの後方に倒れているスケバンは意識を取り戻し、騒ぎの元になっている人物達を倒れた姿勢のまま見て状況を判断した。
(こっちに気づいていない?良いぞ!そのまま時間を稼げ!新入り!)
そう、彼女は思考し、2人に気づかれないよう逃亡しようとした時、そばに落ちているピンク色の変わった銃弾が目に写った。
(ん?これは?ああ!確かこの前裏道を歩いてた時に怪しいヤツから押し付けられたモンだ!ポケットに入れたまま忘れてたのォ倒れた時に落としたのか……確か、「空崎ヒナでも一撃で無力化出来る弾」って説明されたな……本当か分かんないけど、気づいてないみたいだしやられたままだと癪だから一発喰らわしてやろう)
「いい加減静かにしろっ!」
「お願いです!何でもしますから許してください!」
「じゃあ捕まれよ!」
「それは嫌です!」
「何でもじゃないじゃん!」
彼女は、未だに言い争っている2人に気づかれないよう銃に弾を込め、イオリに狙いを定めた。
「喰らえ!」(バン!)
「なっ!ちょっ!きゃぁぁ!」
イオリは背後から聞こえた声に驚き、即座に振り向いた直後、声の主から放たれた弾丸を目にし、防御しようと身構えたのだが、当たる瞬断に弾の中から細い大量のワイヤーが展開されイオリの全身を雁字搦めに拘束してしまったのだった。
ワイヤーはただ展開されただけでなくあらかじめ設定されていたかのような動きで腕を後ろ手にするだけでなく腕と身体を縛り上げた後股にワイヤーを通した後はもがきにくくするためなのか両足を一纏めにして飛び跳ねないと移動できないようにしてしまった。
「「えっ?」」
全身を拘束されてバランスを崩し、立つことが出来なくなり、床に転がってもがいているイオリの姿にさっきまでイオリと口論をしていた彼女だけではなく、撃った本人ですら驚いていた。
「クソッ!なんだよこれ!解けない!おいっ解け!」
「そ、そう言われて解く奴がいるか!」
「スゲエっす!先輩!そんな隠し球を持ってたなんて!最初にくたばった時はダセェ……って思ってすいませんした!」
「お、おお…まぁそれほどでも……今ダサいって言った?」
「こうなっちゃえば、あの銀鏡イオリも形無しですね!」
「ねぇダサいって言った?」
イオリの発言に我に返った2人は、上記のやり取りをした後、今の状況を整理するのだった。
「ワイヤーの強度は……すごいですね、ちょっと突くだけでわかりますよめちゃくちゃ硬いです……取り敢えず、先輩どうしますかコレ?」
「そうだな、取り敢えず無視して仲間を起こすか。」
「コレってなんだ!いいから早く解けお前達、この後どうなってもいいのか!今ならまだ、許してやるぞ!」💢
「うるさいですね…先輩ハンカチ持ってないですか?」
「ん?持ってるけどコレでいいのか?」
「ありがとうございます。じゃあ、コレと戦車の補修用ダクトテープで……ほいっ!」
「何をする気……アガッ!むぐぐっ!ムーーー!」💢
「私のハンカチ………」
先輩からハンカチを借りた彼女は喚くイオリに対して口を強引に開けさせた後その中にハンカチを詰めてダクトテープで封をしたのだった。
「コレで静かになりましたね!先輩!」
「私のハンカチ……気に入ってたのに……」
「むぐ!ムーー!」💢
「さて、先輩、他の先輩達を起こしにいきますか」
「うん……」

こうして、捕まってしまったイオリはスケバン達のアジトでたっぷり可愛がられたのだったが、そのスケバン達にも魔の手が迫っていることは知る由もないのであった……。

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