0 お題で綴る『聖夜の罪』
「は…ぁ…」
(喧騒のバスの中、寒さによるものではない熱を帯びた吐息が漏れる。分厚いタイツを通してなお、スカートの中に潜り込んできた彼の手は的確に私の弱点をなぞってくる…否、彼からこんな人の多いバスの中でされているという事実が多少の布の厚みなど物ともしない程度には私を高ぶらせているのだ。最後列のバスの席で、騒がしくはあるものの私達二人の近くには誰も座っていない。イブのショッピングモールを目指すバスとしては奇跡的なその配剤に、彼も手を出さずにはいられなかったのだろう。そして徐々に中心へと迫ってくる指にまた大きく)
「ん…は…」
(と再び吐息を漏らし、私の方も彼のズボンへ手を伸ばした――)
――「んんっっ…!」
(ば…っと私の咥内に白濁が散る。彼の香りが鼻腔いっぱいに広がり、自然と喉を通り過ぎた。胸が全て露になる程度にはだけた上衣、タイツと下着が足元まで脱がされた下衣のまま私は彼の前にしゃがみ込み、先程まで自らの膣奥を蹂躙していたその肉棒の先端を最後の一滴まで吸い付くそうと唇をすぼめ、舌先でちろちろと先割れをなぞった。少しずつ滲む残りの汁の味に恍惚となりながらも、流石に長居しすぎてはいけない、と二人でばたばたと情事の痕跡を片付け、多目的トイレを出る)
『ごめん…我慢できなくって』
「…ね。こんな日にね。でもそれはお互い様だから…」
(微苦笑して私は彼に首を傾げてみせ…)
「行こ、鞠愛(マリア)が喜ぶもの探さなきゃね」
『ああ』
(言って、彼はひとまず手近なファンシーショップへと歩を進めたのだった――)
「『メリークリスマス!アンドハッピーバースデー!』」
(彼女の家に入り、まずは二人で第一声の祝福。そう、彼女はクリスマスイブの生まれという、子供が大手を振ってプレゼントを貰える2つの日がダブってしまうという報われない出自を持っていた。とはいえ、そこは彼女の家の方針でひな祭りの日に別にプレゼントを貰えるので、同じような立場の子よりは恵まれているのではないかと思う)
『あ…ありがとう…コホ…。こんな日に風邪引いちゃってごめんね。莉夢、涼くん』
(私達が来るのは分かっていたので、病床とはいえしっかりと御めかしして鞠愛は玄関先に立っていた。もちろんそれは…)
「ふふ。体調は仕方ないじゃん。また仕切り直せばいいよ。でも、今度は私なんか誘わないで涼くんと二人きりで遊んできなよ」
(悪戯っぽい笑みを浮かべて私が言うと、鞠愛は熱とは明らかに違う理由で真っ赤になって)
『そんな…まだ二人でなんて恥ずかしいし着いてきてよ』
(なんて可愛いことを言う鞠愛に、涼くんは涼くんで照れたように笑っている)
「えー…いつまで私はお邪魔虫してればいいんだか。あ、そうそう…!」
(二人してプレゼントを渡す。特に涼くんからのプレゼントはタンザナイトの小さな石つきのネックレスで、そこに込められた彼の気持ちは十分に鞠愛に伝わったようで、純白そのものといった綺麗な涙をはらはらと流していた)
「良かったね。鞠愛。あ…あと、これは私からもう1つ。可愛かったからつい買ってきちゃった。良かったら飾っておいて。造花だから枯れないし」
(言って、私はホワイトデイジーを主軸にしたバスケットブーケを鞠愛に手渡し)
『ふふっ。ありがと。ほんとにかわいい』
(ホワイトデイジー。純白で可憐で鞠愛そのもののような花。そして私の罪を照らし出す光を放つ花。何も知らなかった彼に女の味と、罪の味を教えてしまった私には『何も知らない』彼女の涙も笑顔も眩しすぎる。でも、私は二人とずっと一緒にいよう。いつか何もかもが白日のもとにさらけ出され、断罪される日が来てもいい。何一つ明らかにならないままじわじわと心を罪悪感に嬲られる日々を過ごすのもいい。いずれにしても、この罪の味を蜜の味だと感じる私にはお似合いの処遇だろう。いっそ…)
「でもやっぱりいいよね。二人見てると。私も彼氏欲しくなっちゃったなぁ。あはっ」
『できるよ、莉夢にも!むしろ今いないのが不思議なんだけど』
「…うん。でも誰かを好きになる、って私わからなくってさ。好きって気持ちが分かれば何か変わるのかな」
(いっそ彼のことを好きなのだとしたら、良かったのに、ね)
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