5.同調と冗談 version 4

2023/04/10 18:28 by someone
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5.同調と冗談

途絶していた意識が、眠りから覚めるように現実に戻っていく。しかし事態は悪魔の十字槍が振り下ろされた、まさにその瞬間。
即座に硬直する健人自身よりも素早く、彼の身体は左手のブレスレットを突き出して構えた。ブレスレットを中心に、青白い光の奔流が渦を巻き、盾を形成して槍を防ぐ。
「貴様…!」
悪魔が声を上げた。その腕に更に力を込め、光の盾を突き破らんと、槍を強く突き立てる。
"退いたらやられる、踏み留まって"
そんなこと言ったって!
"そんなこと言ったって!"
"あなたとの同調が乱れたら、力をコントロールできない"
リュミエからのメッセージに、反射的に返した自身の声が内に響く。しかし健人の身体は口を動かすことなく、トランス状態のまま、悪魔の攻撃を防ぎ続けていた。だが、徐々に十字架は盾を圧していく。
「そうか、ならばカルナを吐き出せ!秘宝は俺が貰い受ける!」
悪魔が猛り、十字槍に宿された力が増す。左手は大きく震え、今にも槍に斬り飛ばされてもおかしくなかった。
こんなのどうしろってんだ!
"こんなのどうしろってんだ!"
"反撃を、あなたを死なせはしない"
健人の声にもならぬ叫びに、リュミエは尚も語りかけた。顔も見えず、声も聞こえない存在。わけの分からないメッセージ。だが今、共に戦うリュミエの存在を信じ、また自分自自身の意思に賭けてみる。怖気に退くより、感情的だとしても、ただ前へ。そのためにリュミエと共に自身の身体を動かす。強引でも、ぎこちないそれでも、他にこの瞬間を切り抜ける術はなかった。
「終わりだぁ!!」
激した悪魔の槍が、左手と共に眼前まで迫る。だが健人もまた猛り、声なき叫びをあげたーー。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

次の瞬間、苦悶のそれに変わった叫びが、闇色の靄の中に響く。右手に剣を携えた健人の一撃に、悪魔は傷を負い、後ずさった。
「やってくれたな…!この俺に傷を!!」
その怒りと衝撃に睨み付ける目を、健人はーーその身体は、黙したまま悪魔を更に蹴飛ばした。その足下には魔方陣が展開され、光と力が健人の周囲に満ちていく。発せられた神秘は彼の身を包んでいった。
その怒りと衝撃に睨み付ける目を、健人はーーその身体は、黙したまま悪魔を更に蹴飛ばした。直後に足下には魔方陣が展開され、光と力が健人の周囲に満ちていく。発せられた神秘は彼の身を包んでいった。
「これ以上はやらせん!!」
体勢を建て直した悪魔が、槍の石突きを地に叩きつける。そのまま山羊の意匠が見られる左腕を前に掲げた。そこからい焔の弾が撃ち出され、真っ直ぐに健人へと迫る。同時に健人を包む光が強く明滅した。悪魔は爆ぜた焔の向こうの光を睨み付け、舌打ち混じりに言い放つ。
体勢を建て直した悪魔が、槍の石突きを地に叩きつける。そのまま山羊の意匠が見られる左腕を前に掲げた。そこから淀んだ暗い焔の弾が撃ち出され、真っ直ぐに健人へと迫る。同時に健人を包む光が強く明滅した。悪魔は爆ぜた焔の向こうの光を睨み付け、舌打ち混じりに言い放つ。
「冗談も大概にしろ!!」
だが、光の向こうから現れた骸骨天狗ーー変身した花森健人はその言葉に微動だにしない。ただ、その内にある彼の意識は、自身の現実に独り、毒づいた。
冗談だったら良かったな
"冗談だったら良かったな"

程なく骸骨天狗が剣を構え、その刀身が煌めく。その顔は尚もトランス状態の無表情。そんな彼に対し、悪魔は怒りに身を震わせていた。
「貴様…秘宝の加護とでも言うか!?」
「秘宝…ブレスレットとか」
悪魔か問い、秘宝という言葉に、健人疑問意識。しかしそれはすぐリュミエから窘められた。
"今この場切り抜けることを考えて"
目前の相手は、凄まじいまで殺気こちらに向けてい雑念割く余裕確かに持ち合わせてない。構える身体と剣へ集中途切れさせるわけにかない。
「あくまで応じることはない、…ならば…告げながら悪魔が左手真一文字に振りざす。そに闇色の靄、骸骨天狗の四肢漂い絡み付いた。
「死でもう」ーーーーーーーーーーーーーーーーー

骸骨天狗が剣を構え、その刀身が煌めく。その顔は尚もトランス状態の無表情。そんな彼に対し、悪魔は怒りに身を震わせていた。
「貴様…それが秘宝の加護とでも言うか!?」
怒り問いに、無情にも返答はない。悪魔もまた鼻を鳴らす、静に告げた。
「なら黙したまま死ねその言葉と共に、悪魔が左手を真一文字に振りざす。そ動き応じ闇色骸骨天狗の四肢漂い、瞬絡み付いた。
身動ぎ、踠く骸骨天狗を他所に、靄実体なき力以て彼を捕らえ、放すことはない。そ間に悪魔念を込め十字槍切っ先に魔力集中し高めてい切っ先には淀んだ暗焔が集まり、そ大きさ増してった。
「秘宝がどうなど、知ったことか」
悪魔がそう吐き捨てるとともに、大きく槍構える。ししその刹那、骸骨天狗の纏う羽衣が大きくたなびいた。その裾に備わった4つの銀水晶の装飾が、独りで宙を舞い、闇色の靄を祓うように断ち切る。
その様を受け悪魔は舌打ちとともに槍から溜めた魔力を打ち出した。魔力は淀んだ光となって骸骨天狗へと迫る。しかしそ現れた装飾が主を守らんと拡がると円を描よう魔法の盾を結んだ。加えて骸骨天狗は先の青白光の奔流を、再度もう一つの盾として構える。直後、槍の魔力と二つの盾が衝突し、閃光を放った。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

力と守りの衝突、生じた閃光の向こうから、骸骨天狗と悪魔が互いに距離を詰める。かたや此処を切り抜けと、かたや敵を屠んと、剣と十字槍が互いを打ち、また主を守らんとその剣戟を交わす。
      

途絶していた意識が、眠りから覚めるように現実に戻っていく。しかし事態は悪魔の十字槍が振り下ろされた、まさにその瞬間。
即座に硬直する健人自身よりも素早く、彼の身体は左手のブレスレットを突き出して構えた。ブレスレットを中心に、青白い光の奔流が渦を巻き、盾を形成して槍を防ぐ。
「貴様…!」
悪魔が声を上げた。その腕に更に力を込め、光の盾を突き破らんと、槍を強く突き立てる。
"退いたらやられる、踏み留まって"
"そんなこと言ったって!"
"あなたとの同調が乱れたら、力をコントロールできない"
リュミエからのメッセージに、反射的に返した自身の声が内に響く。しかし健人の身体は口を動かすことなく、トランス状態のまま、悪魔の攻撃を防ぎ続けていた。だが、徐々に十字架は盾を圧していく。
「そうか、ならばカルナを吐き出せ!秘宝は俺が貰い受ける!」
悪魔が猛り、十字槍に宿された力が増す。左手は大きく震え、今にも槍に斬り飛ばされてもおかしくなかった。
"こんなのどうしろってんだ!"
"反撃を、あなたを死なせはしない"
健人の声にもならぬ叫びに、リュミエは尚も語りかけた。顔も見えず、声も聞こえない存在。わけの分からないメッセージ。だが今、共に戦うリュミエの存在を信じ、また自分自自身の意思に賭けてみる。怖気に退くより、感情的だとしても、ただ前へ。そのためにリュミエと共に自身の身体を動かす。強引でも、ぎこちないそれでも、他にこの瞬間を切り抜ける術はなかった。
「終わりだぁ!!」
激した悪魔の槍が、左手と共に眼前まで迫る。だが健人もまた猛り、声なき叫びをあげたーー。

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次の瞬間、苦悶のそれに変わった叫びが、闇色の靄の中に響く。右手に剣を携えた健人の一撃に、悪魔は傷を負い、後ずさった。
「やってくれたな…!この俺に傷を!!」
その怒りと衝撃に睨み付ける目を、健人はーーその身体は、黙したまま悪魔を更に蹴飛ばした。直後に足下には魔方陣が展開され、光と力が健人の周囲に満ちていく。発せられた神秘は彼の身を包んでいった。
「これ以上はやらせん!!」
体勢を建て直した悪魔が、槍の石突きを地に叩きつける。そのまま山羊の意匠が見られる左腕を前に掲げた。そこから淀んだ暗い焔の弾が撃ち出され、真っ直ぐに健人へと迫る。同時に健人を包む光が強く明滅した。悪魔は爆ぜた焔の向こうの光を睨み付け、舌打ち混じりに言い放つ。
「冗談も大概にしろ!!」
だが、光の向こうから現れた骸骨天狗ーー変身した花森健人はその言葉に微動だにしない。ただ、その内にある彼の意識は、自身の現実に独り、毒づいた。
"冗談だったら良かったな"

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骸骨天狗が剣を構え、その刀身が煌めく。その顔は尚もトランス状態の無表情。そんな彼に対し、悪魔は怒りに身を震わせていた。
「貴様…それが秘宝の加護とでも言うか!?」
怒りの問いに、無情にも返答はない。悪魔もまた鼻を鳴らすと、静かに告げた。
「なら黙したまま死ね」
その言葉と共に、悪魔が左手を真一文字に振りかざす。その動きに応じ、闇色の靄が骸骨天狗の四肢に漂い、瞬く間に絡み付いた。
身動ぎ、踠く骸骨天狗を他所に、靄は実体なき力を以て彼を捕らえ、放すことはない。その間に悪魔は念を込め、十字槍の切っ先に魔力を集中し高めていく。切っ先には淀んだ暗い焔が集まり、その大きさを増していった。
「秘宝がどうなど、知ったことか」
悪魔がそう吐き捨てるとともに、大きく槍を構える。しかしその刹那、骸骨天狗の纏う羽衣が大きくたなびいた。その裾に備わった4つの銀と水晶の装飾が、独りでに宙を舞い、闇色の靄を祓うように断ち切る。
その様を受け、悪魔は舌打ちとともに槍から溜めた魔力を打ち出した。魔力は淀んだ光となって骸骨天狗へと迫る。しかしその前に現れた装飾が、主を守らんと拡がると円を描くように魔法の盾を結んだ。加えて骸骨天狗は先の青白い光の奔流を、再度もう一つの盾として構える。直後、槍の魔力と二つの盾が衝突し、閃光を放った。

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力と守りの衝突、生じた閃光の向こうから、骸骨天狗と悪魔が互いに距離を詰める。かたや此処を切り抜けんと、かたや敵を屠らんと、剣と十字槍が互いを打ち、また主を守らんとその剣戟を交わす。