1.影と星灯り version 3

2023/01/08 17:34 by someone
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影と星灯り(編集中)
その日、青年――花森健人は死にかけていた。
 その日、青年――花森健人は死にかけていた。
恐れに震える視線の先には、自身に襲い掛かった魔の存在。影のように暗い体色を夜の闇に溶けこませながら、健人を追ってきたその様は、さながら狩りを思わせた。
影の爪が健人の身を切りつけ、その腕の膂力が倒れこんだ彼の首を絞め影の爪が健人の身を切りつけ、その腕の膂力が街路樹に彼の身体を押し付ける。そしてそのまま首を絞め健人は影の腕を自身から引きはがそうと抵抗するも、程なく意識が薄れ、身体から力が抜けていく。

”何で、こうなったんだっけ――”
”どうして俺なんだ…”

その日、花森健人は死にかけていた。

―――――――――――――――――――――――――

 例のごとく気怠い一日を過ごしていた。掛ける情熱も意思も希薄なまま、ただ机に座すだけの大学の講義の時間。安いバイトの賃金とつまらないことで指導を受ける、場末の骨董品店での接客。辛うじて繋ぐ、平穏を維持するだけの生活。

友人である桧山初樹と学食で飯をつまみながら、くだを巻くように、冗談として笑いを交え、彼に話を聞いてもらうのが、健人の数少ない楽しみだった。

楽しみ、或いは健人の人生の希望というものは、もう一つあった。それは、自身の追ってきた”美しいもの”、その姿を表現すべく、あるデジタル画を描くことだった。
つまらない子供の憬れの延長ではある。幼いころから掲げながら腐敗した”正義の味方”、”優しい人”などという夢の残滓をくべながらも、あのたおやかな心の少女の姿と共に、それを描き上げる。それが花森健人の日々を続ける、ささやかな目的であった。

しかしこの日、彼の心にある倦怠と絶望を、ある存在が嗅ぎつけた。
人の心の暗き絶望、その苦悶に塗られた魂を喰らって血肉とする”蝕む者”。
それに目を付けられたのだ。

      

その日、青年――花森健人は死にかけていた。
恐れに震える視線の先には、自身に襲い掛かった魔の存在。影のように暗い体色を夜の闇に溶けこませながら、健人を追ってきたその様は、さながら狩りを思わせた。
影の爪が健人の身を切りつけ、その腕の膂力が街路樹に彼の身体を押し付ける。そしてそのまま首を絞めた。
健人は影の腕を自身から引きはがそうと抵抗するも、程なく意識が薄れ、身体から力が抜けていく。

”何で、こうなったんだっけ――”
”どうして俺なんだ…”

その日、花森健人は死にかけていた。

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例のごとく気怠い一日を過ごしていた。掛ける情熱も意思も希薄なまま、ただ机に座すだけの大学の講義の時間。安いバイトの賃金とつまらないことで指導を受ける、場末の骨董品店での接客。辛うじて繋ぐ、平穏を維持するだけの生活。

友人である桧山初樹と学食で飯をつまみながら、くだを巻くように、冗談として笑いを交え、彼に話を聞いてもらうのが、健人の数少ない楽しみだった。

楽しみ、或いは健人の人生の希望というものは、もう一つあった。それは、自身の追ってきた”美しいもの”、その姿を表現すべく、あるデジタル画を描くことだった。
つまらない子供の憬れの延長ではある。幼いころから掲げながら腐敗した”正義の味方”、”優しい人”などという夢の残滓をくべながらも、あのたおやかな心の少女の姿と共に、それを描き上げる。それが花森健人の日々を続ける、ささやかな目的であった。

しかしこの日、彼の心にある倦怠と絶望を、ある存在が嗅ぎつけた。
人の心の暗き絶望、その苦悶に塗られた魂を喰らって血肉とする”蝕む者”。
それに目を付けられたのだ。