0 大枠、設定の文章化1 みんなに公開
モルが記した”絶望の賜主”、”賜主が語る「穢れた人間たち」”の項目を基に、ギルが健人パートへの布石として大枠の設定を見直す試みです。賜主とリュミエが戦った後のものを、時系列順で述べていこうと思います。都度上げていきますので、モルの方で修正や確認の必要、違和があればお教えください。
(尚、一部設定に仮称や、仮の導線を設けて文章化しています)
1.賜主の転生体=花森健人、地球人類として日本の朝憬市に誕生。
同時期にリュミエだった”抜け殻”は、ある辺境の星で住民の保護を受ける。
エクリプス(並びに影魔)、創造主である賜主を失ったことで最初期のエクリプスである”セブンス”が台頭する。これに伴いエクリプス、その後の方針を「賜主の意志を継ぎ、絶望による全生命の浄化を継続する」とする。
(尚、セブンスは以前の閣下たちをイメージして頂いて構いません。変更した設定に合わせて落とし込みますが、可能ならある程度、彼らを宛がう気でもあるので。また七人の増減もプロット時点で話せれば問題ないです)
2.抜け殻が転移魔法を使用、家族探しの旅に出る。
花森健人、”優しいことのために戦う”と福祉系の高校に通うも、現実に対し自身の無力に苛まれ夢破れる。
その後、花森健人が朝憬市の展望台で抜け殻の泣き声を聞き、二人が邂逅。互いに独り言を話し、聴く。
(リュミエの抱いていた暖かさが欠落し涙する心羽、賜主と同様の義憤を抱くも無力故に、最後の足掻く先を求めた健人。故に彼はその鳴き声を確かに聞いた。運命のいたずら的描写ですが、ある意味必然とギルは解釈します)
この時抜け殻は健人より”燎星心羽”と名を受け、彼の夢を拾う。健人はその返礼として心羽よりブレスレット(以下レガリアとする)を手渡された。
(権能を失った心羽の手元にあった時レガリアはその機能を完全に停止していたが、賜主の権能を引き継いだ健人の手に渡った時に再起動。健人が一応普通の人間であり、この力の意味が分からなかったこともあり、直後にレガリアの反応は消失する。しかし——)
エクリプス、上述の邂逅に伴うレガリアの反応を一瞬であるが検知し、重要視。
先遣隊として情報収集能力と魔術の感知能力の高い者達を当該座標である朝憬市へ派遣。
(以後二年間の先遣隊の活動が、やがて朝憬市において”神隠し”——都市伝説と認知される。またエクリプスはこの際に地球人の言語体系の多くを理解する)
3.英道大学二回生となった花森健人、衝動的に自死を図ろうとした際、先遣隊の影魔に襲撃される。この時の健人の絶望を引き金としてかレガリアの力が発現。自身の描いたデジタル画に酷似した姿に変身する。
このレガリアの発現と影魔殺害の事象は他の先遣隊からセブンスへ報告され、彼らは「英同大学にレガリア所持者が存在する」と焦点を定める。これ以降、エクリプス達は朝憬市に本格的に現れ始める。またこの時、セブンスは政府に”エクリプスの朝憬市への入植”を要求。その圧倒的な武力を誇示し、政府と以下の密約を交わす。
・エクリプス並びに影魔の活動と探索に対し、人類による一切の干渉、追跡調査、分析等の禁止。
・エクリプス、影魔の生命とその維持の保証。これに関わる一切に対する朝憬市住民と自治体等の官民を問わない”協力”。
・この法を侵した際にはエクリプスへの宣戦布告と判断し、即座に地球と全世界への報復としてあらゆる実力を行使する。
(要は件の、公的機関を介入させないための設定です)
4.花森健人は状況に混乱する中でバイトと大学を三日休む。英道大学の屋上には先の交戦の跡があり、大学の友人である桧山初樹がこれらの状況と健人自身を気にかけ二人で話す。しかし互いにその懐を探り合う形となってしまい、思いは平行線となる。
この際先遣隊のエクリプスの一人であるアハト(クモの意匠あり)が、事前に英道大学の学生達に情報収集用の小型のクモをばらまき、初樹の懐に忍ばせた格好となったそれから健人と初樹を探っていた。アハトは初樹と話す健人の様相や挙動、そして健人が強い絶望を有しているなどの情報を総合し、健人が”件のレガリア所持者である可能性が高い”と推察する。
そして影魔を引き連れ健人と初樹の前に現れたアハトは、当初は健人に対し一連の事象についてと、レガリアをどうやって手に入れたかを問うも、健人はその問いの意味を理解できない。その直後、神隠しがエクリプス達によるものと知った初樹が激昂するも、彼が人質に取られたことで対話は断絶。(尚、初樹には下記の事情があり、神隠しに強い怒りがある)
アハト達に数的有利を取られつつフォースフィールドを展開され交戦に至るも、レガリアと賜主の力(各一部)が同時に発動。アハト並びに影魔らを瞬時に撃退する。しかし、その一連はセブンスに情報共有されていた。
5.翌日、桧山初樹のアパートにて。未だ混濁の状況にある健人は、苦痛を吐露すると共に初樹に対しエクリプス達へ激昂した理由を問う。初樹からは、以前妹の由紀が神隠しに遭い、行方不明であることが語られた。警察を始め、社会の場当たり的な対応に納得ができなかった彼は自身で事件当時のことを調べ、由紀の心が苦痛と絶望にあったこと、そして断片的ながら事件には超常的な現象があったことを知る。当時はそれ以上のことは何もわからず、何より自身の無知と無力を許せなかった。だが先の一件で神隠しにエクリプス達が関わっていることを確信した。それ故に怒りに吠えたという。
その後、初樹の事情を受けた健人はようやく自身の事情を話した。だが、話しているうちから酷く動揺し、強い不安が胸中を締め付ける。初樹はそんな健人の姿に沈痛な思いを抱くも、今は言葉を呑むことしかできなかった。
帰路に着く健人はその後、気が付けばあの展望台に向かっていた。そこで自身のかつての夢と、レガリアを贈った赤髪の少女の存在を思う。しかし心は完全に失意に向かっており、レガリアを展望台に置いていこうかと考えてしまう。そこに、セブンスの一人であるルスト(オオカミモチーフ予定)が現れる。(レガリアは健人の変身など以外ではその反応をオフにしているため、通常ならエクリプス達が健人の存在を追うことは困難。しかしアハトは最後の力で健人に追跡用のクモを忍ばせていたため、セブンスは健人を追えた。このタイミングで健人を襲撃したのは、人目につかない時間を待っていたため)
6.「唐突に心苦しいのですが、ご同行頂けますか?私としては手荒な真似はしたくないのです」。半狂乱に陥りかけている健人に、ルストは静かにそう告げる。どうして自分なのか——。心中で何度も繰り返してきた言葉を健人は怒りと共に吐き捨てる。そのままルストはフォースフィールドを展開。二者は交戦するも、この展望台の思い出を穢させない意地からか健人の膂力がルストの身を強く打ち、フォースフィールドを突破。だが他のセブンスがこの周辺に既に包囲していると再度”同行”を迫るルストに、「お前たちの狙いはこれ(レガリア)なのか」と健人は問う。
「理由はそれだけではありませんよ。貴方があの方だというなら、我々は本来に戻るべきなのだから——」
健人はその訳の分からない返答に激昂するも、迫りくるセブンスの存在に今は退くことしかできず、また"赤髪の少女の優しさ"と現実に抵抗する力が必要なことから、レガリアを棄てることもできなかった。
その頃、先の健人の動揺を受けて桧山初樹は葛藤していた。その時躊躇いながら伝えた言葉——”共に戦って欲しい”という思い。それが初樹の胸を絞める。エクリプスたち異形の存在の危険性は、昨日羽交い絞めにされた時に自身の身を以て理解できた。妹を探すためとはいえ、あの連中を相手取るなど普通の人間には不可能に等しい。ましてそんな自分のエゴのために、友である花森健人を巻き込み、戦わせるなど。その時、初樹のスマホに健人からの連絡が入る。
「ハッサン、ごめん…助けてくれ」
この時、花森健人が頼れる者は事情を理解している桧山初樹しかいなかった。「どうすればいい?奴らに追われてる」涙ながらに零されたその言葉に、初樹は心を搔き毟られる。そうだ、前提が違ったのだ。自分は彼だけに戦って欲しいのでは決してないのだ。
「花っち、今そっちに行く。俺も戦う」
迷いより何より、覚悟を決めた言葉。それは、今度は、確かな意思として伝えることができた。何よりこれ以上誰も、何も、失いたくない。
「一緒に戦おう」
そんなもう一人の友の思いに、健人はその泣き顔を少し上げた。
7.迅速に行動しなければならない。桧山初樹は電話を繋いだまま、自宅を飛び出した。「花っち、今どこだ?」
健人からの情報を整理しながら、展望台の見える東へ原付バイクを飛ばす。健人もまた、初樹が向かってくるであろう彼の自宅の方角へ走った。しかし接近する二人の側には、既にセブンスのゾルドーとエヴルアがいた。彼らはまたもフォースフィールドを展開し、健人を襲撃する。「そもそも貴殿は何者か。あの方ならば——」「いち早くお戻りいただく」
連戦、加えて上位に位置するエクリプス二体。健人は追い詰められていく。他のエクリプス達も迫りくることは容易に想像できた。せめて”共に戦う者がいたなら”——。初樹を想起するも、肉薄するエヴルアの槍の一撃、そして健人を射貫かんとゾルトーの銃から放たれる魔弾。その時暗闇を超えて響く初樹の声。「花っち、来たぞ!俺も来たぞ!」——。瞬間、花森健人の傍らに何者かが居た。暗闇の中にあっても煌々と赤熱する竜戦士。それは健人の描いていたデジタル画の一つに酷似しており、エクリプスや影魔を思わせる覇気と異様さを有しながらも、明らかに健人を守護する行動を取っていた。
8.「何奴…まさか」「…創ったか」驚嘆するゾルドーとため息混じりに苦笑するエヴルア。直後、猛々しく咆哮した竜戦士は、フォースフィールドに穴を開けると暗闇の向こうにいた桧山初樹をフィールド内に引きずり込んだ。慌てて制止する健人、驚き動揺するまま空間に放り込まれた初樹。意志疎通も出来ぬ間に、その隙を衝いてエヴルアたちは尚も攻撃を加える。健人と竜の膂力は瞬時にそれを防ぐが、その直後、今一度彼らに呼び掛けられる。
「今確信しました。貴方はそこにいる!」「そして貴様だ。貴様が、あの方の力を使っている!」
だが謂れのない因縁に、苦しみ戦う健人の姿を尚も目の当たりにする初樹は、遂に叫んだ。
「花っちに…俺のダチに意味わかんねえことばっか抜かすな!」
「それはこちらの台詞だ下郎共!貴様らが抵抗を続けるならば…!」
猛るエヴルアの槍が初樹へと向かうも、間一髪で竜がそれを防ぐ。瞬間、竜の目が初樹を見遣った。
「ここから花っちを助け出す…力を貸せ!」
初樹のその言葉を受け、竜戦士は火炎と共に再度咆哮する。それはフォースフィールドを今一度貫通し、元の世界への出口を作った。即座に駆け出す健人と初樹。
「ハッサン!」
「ああ!ドラゴン、お前も来い!」
一瞬鼻を鳴らすと再度火炎を強く吐き、竜もその場を後にする。エヴルアとゾルドーが火炎を防ぎ、またフィールドを解除した時には、もう健人達の存在は見失われていた。
(健人は変身を解いたため、レガリアの反応もロスト。しかし健人の情報のいくつかはエクリプスたちに割れたため、今後も追跡されていることには対処せねばならぬ状況である)
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