sagitta_luminis
創作の原稿、設定置き場
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第一章 “リーン”
大学生の花森健人は、日々を適当に過ごしながら《平凡》で《穏便》な生活を送っていた。ふとしたきっかけで耳にした“怪物”、そして“赤髪の魔女”という非日常的でオカルトチックなワードが少し気になっていると、心の奥深くにある絶望を狙う悪魔...
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2020年、4月12日。その日、朝憬市立朝憬英道大学二回生である花森健人は、同大学B棟第2講義室にて行われる人体の機能と構造の講義に出席していた。
「…そのためICF、国際生活機能分類では…」
時間は10時51分。単調な講師の話と昼食までもたない空腹...
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その日、人の心に巣食う怪物らの蜂起によって、少女と青年の世界——朝憬市(あかりし)は壊されようとしていた。街や人の様相は未だ日常のそれだが、日食によって暗く染まった太陽が朝憬市を見下ろす。朝憬市駅前中心街北東と南西でそれぞれ敵の襲来に備える少女と青年...
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精神的にも肉体的にも追い込まれたリーンが、ネーゲルとその場にいた全てのエクリプスの核を取り込んだ形態。(健人自身が絶望の中でエクリプスの核を取り込んで誕生した形態のため、よりエクリプスに近しい状態になっている?)(もともと一蓮托生であったネーゲルが取...
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2021年3月20日、午前6時33分——世界に滅びの影が迫る中、少女はようやく自分の存在を肯定しようと静かに顔を上げた。
「私、生きて私を繋いでくれたものを信じたい。もちろん健人くんも」
少女はその赤い瞳を向け、並び立つ青年にそう告げる。その言葉に青...
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2020年7月19日。その日も朝憬市(あかりし)の人々は、彼らにとっての日常を送っていた。そこに混在する幸福も悲哀も関係なく、その日も世界に陽は上り、時間の経過と共に沈んでいく。朝憬駅前中央通り、大規模交差点を黒いゴシック系の出で立ちで歩く、若い男女...
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「じゃあ……私を殺して」
…バカなのかこいつは。
これまでに数え切れぬ絶望を見てきたが、自死を望む者は例外なくその根底にそこはかとない生存欲求を抱えていた。ところが、こいつは自分が死ぬ事で生存欲求が満たせるという。バカなのか。
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まだ暑さの退かないこの時期に、健人はひとり、人混みの中で立ち尽くしていた。
それは、ある人を待つため。健人は誘われてここに来たのだ。
しばらくして彼女は現れる。夜空を想起させる深い青色の浴衣に身を包み、赤い帯を結んだ彼女はいつもと雰囲気が違っていた。
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朝憬市立望海中学校の屋上にて、夕陽に照らされる望海町を遠目に眺めるブレザー姿の少女がいた。校舎に残った生徒は他には僅かで、彼女の周囲はしんと静まり返っていた。夕陽の中にあって尚も煌めく彼女の赤髪を、風が靡く。
「来た…」
その遠目の向いた方角から飛ん...
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その日、夢から目覚めた花森健人の一日は自室のベッド上で吐く溜息から始まった。
「腰痛い」
小声で呟くそんな言葉と共に、気だるげにその長身を起こしながら、健人は被さっていた掛け布団を捲る。直後に再度「さむ…」と独り呟くも、枕元にあるスマートフォンの画面...