これは私たちが紡いだ希望の物語 No.1 1/2 version 9
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鴉と火の鳥 No.1 アバン
時は2021年、4月20日――。
「あの人からの希望を、ちゃんと縒り合わせるよ。生きてそうするって、俺が決めた」
人通りの無くなった朝憬市を異形の白い鴉と歩く花森健人は、右の瞳を赤く灯して言った。
「…その覚悟、今度こそちゃんと決めたんじゃろうな?」
傍らの鴉は立ち止まって一つ息を吐くと、そう問いかける。烏天狗と鬼を思わせる面から覗く鋭い片目が、振り返る健人の姿を真っ直ぐに見つめた。
「もう二言はない。ケジメのためにもあの人のことは本名でだけ呼ぶ。それでさ…」
「もう二言はない。たださ…」
「…なんじゃ?」
健人は問いかけに応えた延長で、あっけらかんとした様相のまま、ポツリと一つ思いを溢す。
「…俺は、まだ俺か――?」
瞬間、鴉は得物である太刀を抜いて健人に向けた。
「…自分が何処に在るか、今お前が決めたんじゃろうが。それにあの子は、お前のことを信じとる」
「そうだな、いきなり悪い」
微動だにすることのない刃先が、健人の頬を撫でる。しかし健人もまた静かに苦笑こそすれど、以降はピタリと動くこともなく、鴉の片目を見据えた。
「二言はないんじゃろうが、クソ宿主」
静寂。曇り空の下、風が健人と鴉の髪を靡いた。
「…あのさ」
「喋るな…」
「ありがとな」
刹那、太刀の刃先が僅かに揺らいだ。遮られて伝えられた言葉に鴉は声を震わせる。
「俺に言う前に伝える先があるじゃろうが」
「全くだ。だから…ここだけは超えていく」
「全くだ。だから…暗い話はここまで」
その時、互いの姿の向こうに敵の影が見えた。人の心を喰らう異形の生命体が、健人と鴉に迫る。二人は振り返って背を合わせ、携えた剣を敵の軍勢に向けた。
「殺してでも生き残れ。じゃなきゃ俺がお前を喰う」
「喰われやしない。お礼を伝えるために、俺がそう決めた」
そう告げると、掛け声を上げた健人の最初の一振が敵の命を切りさばいた――。
時は2021年、4月20日――。
「あの人からの希望を、ちゃんと縒り合わせるよ。生きてそうするって、俺が決めた」
人通りの無くなった朝憬市を異形の白い鴉と歩く花森健人は、右の瞳を赤く灯して言った。
「…その覚悟、今度こそちゃんと決めたんじゃろうな?」
傍らの鴉は立ち止まって一つ息を吐くと、そう問いかける。烏天狗と鬼を思わせる面から覗く鋭い片目が、振り返る健人の姿を真っ直ぐに見つめた。
「もう二言はない。たださ…」
「…なんじゃ?」
健人は問いかけに応えた延長で、あっけらかんとした様相のまま、ポツリと一つ思いを溢す。
「…俺は、まだ俺か――?」
瞬間、鴉は得物である太刀を抜いて健人に向けた。
「…自分が何処に在るか、今お前が決めたんじゃろうが。それにあの子は、お前のことを信じとる」
「そうだな、いきなり悪い」
微動だにすることのない刃先が、健人の頬を撫でる。しかし健人もまた静かに苦笑こそすれど、以降はピタリと動くこともなく、鴉の片目を見据えた。
「二言はないんじゃろうが、クソ宿主」
静寂。曇り空の下、風が健人と鴉の髪を靡いた。
「…あのさ」
「喋るな…」
「ありがとな」
刹那、太刀の刃先が僅かに揺らいだ。遮られて伝えられた言葉に鴉は声を震わせる。
「俺に言う前に伝える先があるじゃろうが」
「全くだ。だから…暗い話はここまで」
その時、互いの姿の向こうに敵の影が見えた。人の心を喰らう異形の生命体が、健人と鴉に迫る。二人は振り返って背を合わせ、携えた剣を敵の軍勢に向けた。
「殺してでも生き残れ。じゃなきゃ俺がお前を喰う」
「喰われやしない。お礼を伝えるために、俺がそう決めた」
そう告げると、掛け声を上げた健人の最初の一振が敵の命を切りさばいた――。