千想の魔法 3.光環の狩人 version 2

2023/01/25 04:27 by sagitta_luminis sagitta_luminis
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心羽パート序章 プロット
時系列では[青年との出会い](https://mimemo.io/m/xn0Yd4ZEwBly7v6)から数年が経ち、[影と星灯り](https://mimemo.io/m/z2XWn4vKv8GYApm)の数ヶ月ほど前にあたる、本編の前日譚。
※文章中、斜体になっている部分は本文のイメージ。

@[TOC]

#### 1話

##### 1-1 

*目を開けると森の中にいた燎星心羽。
新緑が風に揺れて木漏れ日がキラキラと瞼を撫でる。
また、新しい場所だ…*

森の風の音の中に動物の気配を感じ、警戒している心羽の視線の先に黒い魔物が姿を現した。四足歩行で動物然とした体格だが、まるで影に溶け込むような暗い体色でその全貌は窺い知れない。

この魔物に襲われそうになった心羽だが、すんでのところで黒い剣士に助けられる。
剣士は長身で黒い外套に身を包み、赤い髪に翠色の目をしている。外見年齢は20代前半。
「この森は危険だ。早く立ち去れ」
剣士は心羽と魔物との間に割って入り、自分の頭身ほどもある大きな両手剣を振るって魔物を一刀両断する。
さらに、樹の陰から飛び出してきた魔物たちを次々に斬り伏せると、突然のことに驚いて固まっていた心羽に声をかける。
「なぜ動かない? 方角がわからないのか」
心羽はその剣士に礼を言い、あれこれと質問を持ちかける。

*「ありがとう、剣士さん。」
「礼は要らない。お前を助けるためにやったわけじゃない」
「街の方角がわからないなら案内してやる。わかるなら俺はこれで」
「待って、せめてお名前だけでも…」
「俺はイジェンド。ただのトレジャーハンターだ」
「私は燎星心羽。心羽って呼んで。」
「心羽……聞き慣れない名だな。どこから来た」
「前は日本にいた。」
「日本?聞いたことがないな」
「世界中を旅してるの」
「旅の者……。そうか。なら、地図くらいは持ってるよな。方角を教えるから早く行くんだ」
「待って、さっきの怪物のことを教えて」
「あれは“影魔”だ」
「どんなやつなの?」
「詳しいことはわかっていない。やつらは最近になって急に森のあちこちへ出現し、人を見つけては殺して喰っている。被害はわかっているだけで30件以上」
「この森は危険ってそういうこと…」
「ああ。だからお前も喰われないうちにここを立ち去れ」
「イジェンドは来ないの?」
「俺は用事があってここにいる。離れるわけにはいかない」
「こんな危険なところに用事って…?」
「影魔の調査と制圧だ。一般人には不可能だからな」
「ついて行っていい?」
「お前、今の話を聞いてなかったのか?死ぬぞ」 
「でもイジェンドは優しくて強いから、イジェンドの近くにいれば安全だよね」
「……フン、好きにしろ。言っておくが、俺はわざわざお前を守ったりしないぞ」
「あれ、もっと優しい人かと思ってた」
「そもそも俺は優しくないし、お前を守る動機も義理もない。…それに、できない約束もしない」
「……そっか、わかった。自分の身は自分で守るよ。」
「…おかしな奴だ」*

心羽はしばらくイジェンドの後についていき、イジェンドを質問責めにして様々な情報を得た。まず、この森は“ユール王国”という国の領土であり、この森は“ユール森林”、近くにある街は“ユール城下街”と呼ばれていること。そして、

*「ねえ、イジェンドはなんで影魔の調査をしているの?一般人には不可能だから?」
「ああ。」
「でもどうして?動機も義理もなさそうだけど?」
「別にどうだっていいだろう。なぜ知りたがる」
「だって、気になるじゃん」
「勝手に気にしてろ」*

##### 1-2 

しばらく行動を共にしていると、再び影魔の群れと遭遇する。心羽は影魔に食われないよう必死で逃げ回る。一方でイジェンドは両手剣に炎を宿すと、熱した刃で影魔の装甲を融かすように両断し、燃え盛る両手剣を豪快に薙ぎ払いながら群れを一掃した。

*「……怪我はないか。」
「心配してくれるの?やっぱり本当は優しいんだ。見ての通り無傷だよ!イジェンドのおかげでね」
「ならいい。日が暮れる前に先へ急ごう」
「さっきの、剣が燃えてたのはどうやったの?魔法?」
「魔法などという都合のいい力ではない。あれはただの呪いだ」
「呪い…。それってどんな?」
「触れたものを燃焼させる。昔と比べれば今はある程度制御できるが、それでも“事故”はある……」
(事故…イジェンドの過去にいったい何が…)
「お前は怖くなかったのか」
「別に? 影魔は怖いけど、イジェンドを怖いとは思わなかったよ。どうして?」
「やっぱりおかしな奴だな、お前。普通の奴はこんな異常現象を目にしたら気味悪がって逃げ出すものだ」
「旅人だからね、そういうのには慣れてるよ。それより、イジェンドのこと聞かせてよ。どうして独りで影魔の調査をしてるの?」
「なぜそんなに俺の事を知りたがるんだ。知っても面白くないだろう」*

##### 1-3 変身
##### 1-3 

しばらく進むと
しばらく進むと再び影魔の群れに遭遇する。しかし、その群れはこれまでと比較にならないほどの大群だった。
「また影魔…!」
「俺たちは影魔の発生源に向かって進んでいるから、影魔と遭遇するのは必然だ。が、さすがに今回は数が多い…。いいか、自分の身は自分で守れ」

炎を灯した両手剣を手に、イジェンドは襲いかかる影魔を振り払う。心羽は逃げ回りながら星石の入ったポーチを開け、その中に星光結晶がないか漁る。
「この状況をなんとかできそうな結晶があればいいんだけど…」
しかし星光結晶はひとつもなく、あるのは星石ばかり。イジェンドの助けも得られないため、早々に影魔に追い付かれた心羽。咄嗟に身を守ろうと両手を振りかざしたその時、その手に握られた星石が光を放ち、心羽に触れた影魔の体が急に燃えだした。と同時に、心羽の手から零れ落ちた星石が淡く紅い輝きを纏い星光結晶———“燃晶石”に変化した。
「この結晶って……」
心羽は燃晶石を拾い上げ、魔法の言葉をかけて秘められた迸る力を解き放つ。その身に燃晶石の力を宿して“変身”を遂げた心羽は黒い外套に身を包み、ひと回り小さな両手剣を構えていた。

心羽は剣の重さによろけながらも大きく振りかぶり、向かってきた影魔の頭上に振り下ろす。しかし、影魔は若干ふらつきながらもその斬撃を受け止める。
「あれっ、効かない!?」
心羽は剣に魔力を注ぎ込んで刀身を燃やす。影魔の装甲を熔かして斬ろうとしたが、勢いあまって爆発し、剣ごと砕け散ってしまう。心羽は再び逃げに転じるが、2本目の両手剣を生成し、剣に重心を奪われながらも再び抗戦する。

イジェンドが影魔を倒し切るまでの間、心羽は変身のおかげでなんとか生き永らえることができた。
*「お前、その力……まさか俺の呪いが移ったのか!?」
「ごめん、心配掛けちゃったね。言ってなかったけど、私は魔法使いでもあるの。今のはイジェンドの呪いじゃなくて、私の魔法。」
「魔法使い……今のがお前の魔法だって言うのか。にしては、随分と俺の呪いに似ていたじゃないか。それとその格好も」
「私の魔法は、この結晶が記憶した概念を纏うことでしか行使できないの。だからこの結晶はきっと、“イジェンド”の概念を記憶してたってことだと思う」
「………変わった魔法だな。要するに、俺の真似事をしてたってことか?」
「まあ、そんな感じかな」
 「フン、笑わせてくれる。あのフラフラなへなちょこ攻撃が俺の概念だって?」
「み、見られてたんだ…」
「見た目だけ真似しても、剣術までは模倣できなかったみたいだな。そんなことで俺の真似事をした気でいるとは、俺も随分と甘く見られたもんだ」
「そこまで言うなら、剣術も教えてよ……」
「どうかな。お前に両手剣の才能はなさそうに見えるが」
「やってみないとわかんないじゃん!」*

#### 2話

##### 2-1 鍛錬



##### 2-2 野宿

優しさ

##### 2-3 翌朝

##### 2-4 天使

#### 3話

##### 3-1 青空

##### 3-2 城下街
      

時系列では青年との出会いから数年が経ち、影と星灯りの数ヶ月ほど前にあたる、本編の前日譚。
※文章中、斜体になっている部分は本文のイメージ。

目次1話1-11-21-32話2-1 鍛錬2-2 野宿2-3 翌朝2-4 天使3話3-1 青空3-2 城下街

1話

1-1

目を開けると森の中にいた燎星心羽。
新緑が風に揺れて木漏れ日がキラキラと瞼を撫でる。
また、新しい場所だ…

森の風の音の中に動物の気配を感じ、警戒している心羽の視線の先に黒い魔物が姿を現した。四足歩行で動物然とした体格だが、まるで影に溶け込むような暗い体色でその全貌は窺い知れない。

この魔物に襲われそうになった心羽だが、すんでのところで黒い剣士に助けられる。
剣士は長身で黒い外套に身を包み、赤い髪に翠色の目をしている。外見年齢は20代前半。
「この森は危険だ。早く立ち去れ」
剣士は心羽と魔物との間に割って入り、自分の頭身ほどもある大きな両手剣を振るって魔物を一刀両断する。
さらに、樹の陰から飛び出してきた魔物たちを次々に斬り伏せると、突然のことに驚いて固まっていた心羽に声をかける。
「なぜ動かない? 方角がわからないのか」
心羽はその剣士に礼を言い、あれこれと質問を持ちかける。

「ありがとう、剣士さん。」
「礼は要らない。お前を助けるためにやったわけじゃない」
「街の方角がわからないなら案内してやる。わかるなら俺はこれで」
「待って、せめてお名前だけでも…」
「俺はイジェンド。ただのトレジャーハンターだ」
「私は燎星心羽。心羽って呼んで。」
「心羽……聞き慣れない名だな。どこから来た」
「前は日本にいた。」
「日本?聞いたことがないな」
「世界中を旅してるの」
「旅の者……。そうか。なら、地図くらいは持ってるよな。方角を教えるから早く行くんだ」
「待って、さっきの怪物のことを教えて」
「あれは“影魔”だ」
「どんなやつなの?」
「詳しいことはわかっていない。やつらは最近になって急に森のあちこちへ出現し、人を見つけては殺して喰っている。被害はわかっているだけで30件以上」
「この森は危険ってそういうこと…」
「ああ。だからお前も喰われないうちにここを立ち去れ」
「イジェンドは来ないの?」
「俺は用事があってここにいる。離れるわけにはいかない」
「こんな危険なところに用事って…?」
「影魔の調査と制圧だ。一般人には不可能だからな」
「ついて行っていい?」
「お前、今の話を聞いてなかったのか?死ぬぞ」
「でもイジェンドは優しくて強いから、イジェンドの近くにいれば安全だよね」
「……フン、好きにしろ。言っておくが、俺はわざわざお前を守ったりしないぞ」
「あれ、もっと優しい人かと思ってた」
「そもそも俺は優しくないし、お前を守る動機も義理もない。…それに、できない約束もしない」
「……そっか、わかった。自分の身は自分で守るよ。」
「…おかしな奴だ」

心羽はしばらくイジェンドの後についていき、イジェンドを質問責めにして様々な情報を得た。まず、この森は“ユール王国”という国の領土であり、この森は“ユール森林”、近くにある街は“ユール城下街”と呼ばれていること。そして、

「ねえ、イジェンドはなんで影魔の調査をしているの?一般人には不可能だから?」
「ああ。」
「でもどうして?動機も義理もなさそうだけど?」
「別にどうだっていいだろう。なぜ知りたがる」
「だって、気になるじゃん」
「勝手に気にしてろ」

1-2

しばらく行動を共にしていると、再び影魔の群れと遭遇する。心羽は影魔に食われないよう必死で逃げ回る。一方でイジェンドは両手剣に炎を宿すと、熱した刃で影魔の装甲を融かすように両断し、燃え盛る両手剣を豪快に薙ぎ払いながら群れを一掃した。

「……怪我はないか。」
「心配してくれるの?やっぱり本当は優しいんだ。見ての通り無傷だよ!イジェンドのおかげでね」
「ならいい。日が暮れる前に先へ急ごう」
「さっきの、剣が燃えてたのはどうやったの?魔法?」
「魔法などという都合のいい力ではない。あれはただの呪いだ」
「呪い…。それってどんな?」
「触れたものを燃焼させる。昔と比べれば今はある程度制御できるが、それでも“事故”はある……」
(事故…イジェンドの過去にいったい何が…)
「お前は怖くなかったのか」
「別に? 影魔は怖いけど、イジェンドを怖いとは思わなかったよ。どうして?」
「やっぱりおかしな奴だな、お前。普通の奴はこんな異常現象を目にしたら気味悪がって逃げ出すものだ」
「旅人だからね、そういうのには慣れてるよ。それより、イジェンドのこと聞かせてよ。どうして独りで影魔の調査をしてるの?」
「なぜそんなに俺の事を知りたがるんだ。知っても面白くないだろう」

1-3

しばらく進むと再び影魔の群れに遭遇する。しかし、その群れはこれまでと比較にならないほどの大群だった。
「また影魔…!」
「俺たちは影魔の発生源に向かって進んでいるから、影魔と遭遇するのは必然だ。が、さすがに今回は数が多い…。いいか、自分の身は自分で守れ」

炎を灯した両手剣を手に、イジェンドは襲いかかる影魔を振り払う。心羽は逃げ回りながら星石の入ったポーチを開け、その中に星光結晶がないか漁る。
「この状況をなんとかできそうな結晶があればいいんだけど…」
しかし星光結晶はひとつもなく、あるのは星石ばかり。イジェンドの助けも得られないため、早々に影魔に追い付かれた心羽。咄嗟に身を守ろうと両手を振りかざしたその時、その手に握られた星石が光を放ち、心羽に触れた影魔の体が急に燃えだした。と同時に、心羽の手から零れ落ちた星石が淡く紅い輝きを纏い星光結晶———“燃晶石”に変化した。
「この結晶って……」
心羽は燃晶石を拾い上げ、魔法の言葉をかけて秘められた迸る力を解き放つ。その身に燃晶石の力を宿して“変身”を遂げた心羽は黒い外套に身を包み、ひと回り小さな両手剣を構えていた。

心羽は剣の重さによろけながらも大きく振りかぶり、向かってきた影魔の頭上に振り下ろす。しかし、影魔は若干ふらつきながらもその斬撃を受け止める。
「あれっ、効かない!?」
心羽は剣に魔力を注ぎ込んで刀身を燃やす。影魔の装甲を熔かして斬ろうとしたが、勢いあまって爆発し、剣ごと砕け散ってしまう。心羽は再び逃げに転じるが、2本目の両手剣を生成し、剣に重心を奪われながらも再び抗戦する。

イジェンドが影魔を倒し切るまでの間、心羽は変身のおかげでなんとか生き永らえることができた。
「お前、その力……まさか俺の呪いが移ったのか!?」
「ごめん、心配掛けちゃったね。言ってなかったけど、私は魔法使いでもあるの。今のはイジェンドの呪いじゃなくて、私の魔法。」
「魔法使い……今のがお前の魔法だって言うのか。にしては、随分と俺の呪いに似ていたじゃないか。それとその格好も」
「私の魔法は、この結晶が記憶した概念を纏うことでしか行使できないの。だからこの結晶はきっと、“イジェンド”の概念を記憶してたってことだと思う」
「………変わった魔法だな。要するに、俺の真似事をしてたってことか?」
「まあ、そんな感じかな」
「フン、笑わせてくれる。あのフラフラなへなちょこ攻撃が俺の概念だって?」
「み、見られてたんだ…」
「見た目だけ真似しても、剣術までは模倣できなかったみたいだな。そんなことで俺の真似事をした気でいるとは、俺も随分と甘く見られたもんだ」
「そこまで言うなら、剣術も教えてよ……」
「どうかな。お前に両手剣の才能はなさそうに見えるが」
「やってみないとわかんないじゃん!」

2話

2-1 鍛錬
2-2 野宿

優しさ

2-3 翌朝
2-4 天使

3話

3-1 青空
3-2 城下街