ミーナの冒険 version 12

2025/01/10 23:51 by mi-komemo1d
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ミーナの冒険
0話 箱の外
 イクセトと呼んでいる箱庭に彼らは生きていた。
 当初、魂の中にある経験や思い出を糧とする我々の安定した食料生産を目指して創られた箱庭には、いつしか我々を神と呼ぶ彼らの世界を覗き見る遊びの場にもなり、大きく発展していた。
 彼らが魔法と呼ぶ我々の劣化版の力で風を操り水を生み出している。
 存在しない歴史と文化を用意し、昔からそこにあったようにさせ、直接関与できない我々の代わりに内側から運用できる管理者を用意したりと我々の苦労は絶えない。

1話 ミーナの日常
「⋯⋯」
 箱庭イクセト最北の小さな島国サチヌにある〝最北の村〟ことカシツネ村。雪解けが終わる頃の小さな村にある少女がいた。
 彼女の名前はミーナ・ソルナ。母親譲りのややふんわりとした明るい金髪に父親譲りの深い青の瞳の十三歳だ。
「⋯⋯⋯」
 ミーナは簡素な毛布の中からじっと何もないところを見つめている。窓の外は日が出てしばらく、という位で部屋の中は少しずつ明るくなっていた。
「⋯⋯⋯⋯、⋯⋯⋯」
 のっそりと起き上がると、ミーナはそのまま部屋を出る。
「あ、ミーナおはよう」
「おはようホリー」
 廊下にはミーナの妹、ホリーがいた。ホリーは母親譲りの深い緑の瞳に父親譲りの癖毛気味の明るい茶髪を一つ結びにしている。
「少し寝坊した? いつもより遅い時間の出勤だからってあんまりゆっくりしちゃだめだよ。急がないと工房長に怒られちゃう。でも朝ごはんは置いてあるからちゃんと食べてから出勤してね。私もうそろそろ行かないと遅刻しちゃうから今日は先に行くね。あ、今日鍵ちゃんとしてね、最近村の東のほう物騒みたいだから辺境だからって油断してるとこの前の人みたいになっちゃうってお肉屋のおばさんが。お昼はいつものところで待ってるね」
「うん、わかった」
 しっかり者の妹はミーナに伝えることだけ伝えると、駆け足気味にミーナの横を通りそのまま階段を降りていった。
「⋯⋯⋯⋯はぁ」
 ミーナもの後に続いてっくりぼやりと階段を降りた。
「⋯⋯⋯⋯ねむい」
 ミーナもホリーの後に続くように階段を下る。
 階段にはミーナが生まれる前から飾られてる知らない親戚の古い肖像画や出た父親の描いた絵、死んだ伯母が最後に作った押し花、それに目立たないところには夢を再び追いかけにいった母親の初公演のチケットが飾られている。 遠目から見ても見なても歪で不気味だ。
 みな色々な理由で居なくなったものだから、両親も伯母も消えた時期はソルナ家の不吉階段だの井戸端会議で言われたもした。
〈階段だけじゃないのにね。倉庫とか書斎とかのほうがもっと⋯⋯〉
       

0話 箱の外
 イクセトと呼んでいる箱庭に彼らは生きていた。
 当初、魂の中にある経験や思い出を糧とする我々の安定した食料生産を目指して創られた箱庭には、いつしか我々を神と呼ぶ彼らの世界を覗き見る遊びの場にもなり、大きく発展していた。
 彼らが魔法と呼ぶ我々の劣化版の力で風を操り水を生み出している。
 存在しない歴史と文化を用意し、昔からそこにあったようにさせ、直接関与できない我々の代わりに内側から運用できる管理者を用意したりと我々の苦労は絶えない。

1話 ミーナの日常
「⋯⋯」
 箱庭イクセト最北の小さな島国サチヌにある〝最北の村〟ことカシツネ村。雪解けが終わる頃の小さな村にある少女がいた。
 彼女の名前はミーナ・ソルナ。母親譲りのややふんわりとした明るい金髪に父親譲りの深い青の瞳の十三歳だ。
「⋯⋯⋯」
 ミーナは簡素な毛布の中からじっと何もないところを見つめている。窓の外は日が出てしばらく、という位で部屋の中は少しずつ明るくなっていた。
「⋯⋯⋯⋯、⋯⋯⋯」
 のっそりと起き上がると、ミーナはそのまま部屋を出る。
「あ、ミーナおはよう」
「おはようホリー」
 廊下にはミーナの妹、ホリーがいた。ホリーは母親譲りの深い緑の瞳に父親譲りの癖毛気味の明るい茶髪を一つ結びにしている。
「少し寝坊した? いつもより遅い時間の出勤だからってあんまりゆっくりしちゃだめだよ。急がないと工房長に怒られちゃう。でも朝ごはんは置いてあるからちゃんと食べてから出勤してね。私もうそろそろ行かないと遅刻しちゃうから今日は先に行くね。あ、今日鍵ちゃんとしてね、最近村の東のほう物騒みたいだから辺境だからって油断してるとこの前の人みたいになっちゃうってお肉屋のおばさんが。お昼はいつものところで待ってるね」
「うん、わかった」
 しっかり者の妹はミーナに伝えることだけ伝えると、駆け足気味にミーナの横を通りそのまま階段を降りていった。
「⋯⋯⋯⋯ねむい」
 ミーナもホリーの後に続くように階段を下る。
 階段にはミーナが生まれる前から飾られている知らない親戚の古い肖像画や出ていった父親の描いた絵、死んだ伯母が最後に作った押し花、それに目立たないところには夢を再び追いかけにいった母親の初公演のチケットが飾られている。 遠目から見ても見なくても歪で不気味だ。
 みんな色々な理由で居なくなったものだから、両親も伯母も消えた時期はソルナ家の不吉階段だの井戸端会議で言われたりもした。
〈階段だけじゃないのにね。倉庫とか書斎とかのほうがもっと⋯⋯〉