ミーナの冒険 version 15

2025/02/26 16:52 by someone
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ミーナの冒険
0話
「⋯⋯」
 揺れる小さな馬車の隅で少女は妹と丸くなって座っていた。
 大きな荷物を抱きかかえてフードを深くかぶる妹を隠すようにしてじっと、もう見えなくなった村の方を見ている。いつ村に帰るのか、どこに向かうのかも分からない旅路の幕開けにどうしようもない不安を胸に、少女は今までの日常を思い返していた。

1話 ミーナの日常
 箱庭イクセト最北の小さな島国サチヌにある〝最北の村〟ことカシツネ村。雪解けが終わる頃の小さな村にある少女がいた。
 彼女の名前はミーナ・ソルナ。母親譲りのややふんわりとした明るい金髪に父親譲りの深い青の瞳の十三歳だ。
 まだ日も昇る前の
 

「あ、ミーナおはよう」
「おはようホリー」
 廊下にはミーナの妹、ホリーがいた。ホリーは母親譲りの深い緑の瞳に父親譲りの癖毛気味の明るい茶髪を一つ結びにしている。
「少し寝坊した? いつもより遅い時間の出勤だからってあんまりゆっくりしちゃだめだよ。急がないと工房長に怒られちゃう。でも朝ごはんは置いてあるからちゃんと食べてから出勤してね。私もうそろそろ行かないと遅刻しちゃうから今日は先に行くね。あ、今日鍵ちゃんとしてね、最近村の東のほう物騒みたいだから辺境だからって油断してるとこの前の人みたいになっちゃうってお肉屋のおばさんが。お昼はいつものところで待ってるね」
「うん、わかった」
 しっかり者の妹はミーナに伝えることだけ伝えると、駆け足気味にミーナの横を通りそのまま階段を降りていった。
「⋯⋯⋯⋯ねむい」
 ミーナもホリーの後に続くように階段を下る。
 階段にはミーナが生まれる前から飾られている知らない親戚の古い肖像画や出ていった父親の描いた絵、死んだ伯母が最後に作った押し花、それに目立たないところには夢を再び追いかけにいった母親の初公演のチケットが飾られている。 遠目から見ても見なくても歪で不気味だ。
 みんな色々な理由で居なくなったものだから、両親も伯母も消えた時期はソルナ家の不吉階段だの井戸端会議で言われたりもした。
〈階段だけじゃないのにね。倉庫とか書斎とかのほうがもっと⋯⋯〉
       

0話
「⋯⋯」
 揺れる小さな馬車の隅で少女は妹と丸くなって座っていた。
 大きな荷物を抱きかかえてフードを深くかぶる妹を隠すようにしてじっと、もう見えなくなった村の方を見ている。いつ村に帰るのか、どこに向かうのかも分からない旅路の幕開けにどうしようもない不安を胸に、少女は今までの日常を思い返していた。

1話 ミーナの日常
 箱庭イクセト最北の小さな島国サチヌにある〝最北の村〟ことカシツネ村。雪解けが終わる頃の小さな村にある少女がいた。
 彼女の名前はミーナ・ソルナ。母親譲りのややふんわりとした明るい金髪に父親譲りの深い青の瞳の十三歳だ。
 「

「あ、ミーナおはよう」
「おはようホリー」
 廊下にはミーナの妹、ホリーがいた。ホリーは母親譲りの深い緑の瞳に父親譲りの癖毛気味の明るい茶髪を一つ結びにしている。
「少し寝坊した? いつもより遅い時間の出勤だからってあんまりゆっくりしちゃだめだよ。急がないと工房長に怒られちゃう。でも朝ごはんは置いてあるからちゃんと食べてから出勤してね。私もうそろそろ行かないと遅刻しちゃうから今日は先に行くね。あ、今日鍵ちゃんとしてね、最近村の東のほう物騒みたいだから辺境だからって油断してるとこの前の人みたいになっちゃうってお肉屋のおばさんが。お昼はいつものところで待ってるね」
「うん、わかった」
 しっかり者の妹はミーナに伝えることだけ伝えると、駆け足気味にミーナの横を通りそのまま階段を降りていった。
「⋯⋯⋯⋯ねむい」
 ミーナもホリーの後に続くように階段を下る。
 階段にはミーナが生まれる前から飾られている知らない親戚の古い肖像画や出ていった父親の描いた絵、死んだ伯母が最後に作った押し花、それに目立たないところには夢を再び追いかけにいった母親の初公演のチケットが飾られている。 遠目から見ても見なくても歪で不気味だ。
 みんな色々な理由で居なくなったものだから、両親も伯母も消えた時期はソルナ家の不吉階段だの井戸端会議で言われたりもした。
〈階段だけじゃないのにね。倉庫とか書斎とかのほうがもっと⋯⋯〉