ミーナの冒険 version 25
ミーナの冒険
0話
「⋯⋯」
揺れる小さな馬車の隅で少女は妹と丸くなって座っていた。
大きな荷物を抱きかかえてフードを深くかぶる妹を隠すようにしてじっと、もう見えなくなった村の方を見ている。いつ村に帰るのか、どこに向かうのかも分からない旅路の幕開けにどうしようもない不安を胸に、少女は今までの日常を思い返していた。
1話 ミーナの日常
箱庭イクセト最北の小さな島国サチヌにある〝最北の村〟ことカシツネ村。雪解けが終わる頃の小さな村にある少女がいた。
彼女の名前はミーナ・ソルナ。母親譲りのややふんわりとした明るい金髪に父親譲りの深い青の瞳の十三歳だ。
箱庭イクセト最北の小さな島国サチヌにある〝最北の村〟ことカシツネ村。雪解けが終わる頃の小さな村にある少女がいる。
彼女の名前はミーナ・ソルナ。母親譲りのややふんわりとした明るい金髪に父親譲りの深い青の瞳の十三歳。
「あ、ミーナおはよう」
「おはようホリー」
廊下にはミーナの妹、ホリーがいた。ホリーは母親譲りの深い緑の瞳に父親譲りの癖毛気味の明るい茶髪を一つ結びにしている。
彼女の一日は部屋を出て妹のホリー・ソルナと挨拶するところから始まる。ホリーは母親譲りの深い緑の瞳に父親譲りの癖毛気味の明るい茶髪をいつものように一つ結びにしている。
この後二人で下に降りて一緒に食事を摂ってから出掛け⋯⋯
「今日は授業早いからもう行くね。お昼は街のいつもの場所で。朝ごはんは置いてあるからちゃんと食べてから出勤してね。あ、今日鍵ちゃんとしてね、最近村の東のほう物騒みたいだから辺境だからって油断してるとこの前の人みたいになっちゃうってお肉屋のおばさんが言ってたよ」
「うん、わかった。いってらっしゃい」
しっかり者の妹はミーナに伝えることだけ伝えると、駆け足気味にミーナの横を通りそのまま階段を降りていった。
(〝いつも通り〟じゃなくなっちゃったんだな)
思い出すのは少し前までの日常。
週に二日、朝一緒に家を出て急な坂を並んで歩き坂の終わりにある祖父母の家の前を通って、村から数十分の街にある学び舎で初等基礎と呼ばれるものを学ぶ。学び舎で幼馴染たちと駄弁ったりしたりして過ごし、終わったらまた肩を並べて帰ったり⋯⋯。
ミーナのいつも通りで当たり前の日常は彼女が十三歳になったことにより終わった。大昔成人が十三歳だった影響か十三歳になると半成人として労働が正式に合法化される。責任が発生する代わりに〝お手伝い〟としてタダ働きか報酬として小さな果物一つ、という感じで誤魔化されていたものが労働という扱いになり、一定の賃金を得られるようになる。
ミーナとともに学んだ周りの子どもたちは家業を継ぐためお金が対価の労働につくことはあまりないらしい。
畑を見れば親とともに土を耕すかつての友人が、店の方を見ると兄妹で親の店を継ぐのだと話していた幼馴染たちの姿がある。
いつの間にか知らない大人になってしまった子どもたちがミーナには眩しく感じてしまって仕方がなかった。
村を出て数十分にあるアキステーノの街。近くの村に住む人々が集まる場所として発展したこの場所はミーナが知っている中で一番の〝何でもある〟場所。
建物がところ狭しと並んでいて、見えない場所には労働者の寮があるという。
ミーナは薬をつくる会社の
彼女がいなくても、やらなくてもいい仕事。
カンカンカンと鐘の音が響くと昼休憩。
「伯父さ……作業所長、お昼外で食べてきます」
作業所長に一言声をかけてから外へ出ると一直線に
「⋯⋯⋯⋯ねむい」
ミーナもホリーの後に続くように階段を下る。
階段にはミーナが生まれる前から飾られている知らない親戚の古い肖像画や出ていった父親の描いた絵、死んだ伯母が最後に作った押し花、それに目立たないところには夢を再び追いかけにいった母親の初公演のチケットが飾られている。 遠目から見ても見なくても歪で不気味だ。
みんな色々な理由で居なくなったものだから、両親も伯母も消えた時期はソルナ家の不吉階段だの井戸端会議で言われたりもした。
〈階段だけじゃないのにね。倉庫とか書斎とかのほうがもっと⋯⋯〉
0話
「⋯⋯」
揺れる小さな馬車の隅で少女は妹と丸くなって座っていた。
大きな荷物を抱きかかえてフードを深くかぶる妹を隠すようにしてじっと、もう見えなくなった村の方を見ている。いつ村に帰るのか、どこに向かうのかも分からない旅路の幕開けにどうしようもない不安を胸に、少女は今までの日常を思い返していた。
1話 ミーナの日常
箱庭イクセト最北の小さな島国サチヌにある〝最北の村〟ことカシツネ村。雪解けが終わる頃の小さな村にある少女がいる。
彼女の名前はミーナ・ソルナ。母親譲りのややふんわりとした明るい金髪に父親譲りの深い青の瞳の十三歳。
「あ、ミーナおはよう」
「おはようホリー」
彼女の一日は部屋を出て妹のホリー・ソルナと挨拶するところから始まる。ホリーは母親譲りの深い緑の瞳に父親譲りの癖毛気味の明るい茶髪をいつものように一つ結びにしている。
この後二人で下に降りて一緒に食事を摂ってから出掛け⋯⋯
「今日は授業早いからもう行くね。お昼は街のいつもの場所で。朝ごはんは置いてあるからちゃんと食べてから出勤してね。あ、今日鍵ちゃんとしてね、最近村の東のほう物騒みたいだから辺境だからって油断してるとこの前の人みたいになっちゃうってお肉屋のおばさんが言ってたよ」
「うん、わかった。いってらっしゃい」
しっかり者の妹はミーナに伝えることだけ伝えると、駆け足気味にミーナの横を通りそのまま階段を降りていった。
(〝いつも通り〟じゃなくなっちゃったんだな)
思い出すのは少し前までの日常。
週に二日、朝一緒に家を出て急な坂を並んで歩き坂の終わりにある祖父母の家の前を通って、村から数十分の街にある学び舎で初等基礎と呼ばれるものを学ぶ。学び舎で幼馴染たちと駄弁ったりしたりして過ごし、終わったらまた肩を並べて帰ったり⋯⋯。
ミーナのいつも通りで当たり前の日常は彼女が十三歳になったことにより終わった。大昔成人が十三歳だった影響か十三歳になると半成人として労働が正式に合法化される。責任が発生する代わりに〝お手伝い〟としてタダ働きか報酬として小さな果物一つ、という感じで誤魔化されていたものが労働という扱いになり、一定の賃金を得られるようになる。
ミーナとともに学んだ周りの子どもたちは家業を継ぐためお金が対価の労働につくことはあまりないらしい。
畑を見れば親とともに土を耕すかつての友人が、店の方を見ると兄妹で親の店を継ぐのだと話していた幼馴染たちの姿がある。
いつの間にか知らない大人になってしまった子どもたちがミーナには眩しく感じてしまって仕方がなかった。
村を出て数十分にあるアキステーノの街。近くの村に住む人々が集まる場所として発展したこの場所はミーナが知っている中で一番の〝何でもある〟場所。
建物がところ狭しと並んでいて、見えない場所には労働者の寮があるという。
ミーナは薬をつくる会社の
彼女がいなくても、やらなくてもいい仕事。
カンカンカンと鐘の音が響くと昼休憩。
「伯父さ……作業所長、お昼外で食べてきます」
作業所長に一言声をかけてから外へ出ると一直線に
「⋯⋯⋯⋯ねむい」
ミーナもホリーの後に続くように階段を下る。
階段にはミーナが生まれる前から飾られている知らない親戚の古い肖像画や出ていった父親の描いた絵、死んだ伯母が最後に作った押し花、それに目立たないところには夢を再び追いかけにいった母親の初公演のチケットが飾られている。 遠目から見ても見なくても歪で不気味だ。
みんな色々な理由で居なくなったものだから、両親も伯母も消えた時期はソルナ家の不吉階段だの井戸端会議で言われたりもした。
〈階段だけじゃないのにね。倉庫とか書斎とかのほうがもっと⋯⋯〉