0 プロットのつもり

第一章 花森健人の構造
ある構造的な欠落を抱えたFラン大学生である花森健人。彼はその夜、烏の怪物に襲われ、自身も意図せず白銀の烏に変身した。自身に起きた出来事に恐怖しながらも、その真実を求めて彼は朝憬市で起こる怪事件を追っていく。その先で出会う赤髪の魔法使いの少女”リュミエ”、そしてそこに生きる人々がそれぞれ抱くものは、二人に何をもたらすのか。

No.1 1/4
とある異形の存在、エクリプスが暗躍する朝憬市。だがこの時の彼らは市街地に攻勢を仕掛けた。対峙するは赤髪の魔法使い”リュミエ”と白銀の鎧烏”リーン”。苦戦する二人に対峙する上級エクリプスはその正義感を嗤う。
しかしリーンの真意は別にあり、リュミエは未だ全てを知らないその思いに向けて瞳を震わせた。

No.1 2/4
「腰痛い」花森健人の鬱屈とした月曜日はそんな一言から始まった。全国に向けたニュース番組の合間に、地元メディアがここ二年ほど度々起きている怪事件について報道している。それを聞き流しながら一応の身支度だけ済まして彼は自宅を出た。
しかし怠惰に過ごす大学の講義やバイト、自分が何をしているのかも分からないし、何をしても一緒だ。そしてそんな虚無を健人はどこか冷笑していた。

No.1 3/4
その日の夕方、健人は自身の”構造”、それに伴う生活上の困難から、自転車で街外れへと逃避する。やがて惹かれるようにある展望台を目指した。それは展望台で”自分の中の大事なパーツ”を置いていったことを思い返すためか。
そこを目指すことでどうにか足が動いていたが、健人は不意に現れた烏の怪物に襲われる。
しかしその時展望台の灯りが目に入ると共に、胸にあったキーホルダーの光が、彼を白銀の烏の姿に変えた。

No.1 4/4
眼前の脅威たる烏と酷似した白銀の姿。だがそれに対する感情よりも先に彼が抱いたのは、烏への殺意だった。”殺されるくらいなら殺す―――”
交錯する白銀の力と烏の技。勝ったのは烏から力の半分と得物を奪った白銀だった。
自らの命の諦観に笑う烏。優位に立ちながら殺めることを畏れる白銀。しかし烏の笑みにより去来した他者の嘲笑の記憶。白銀は怒りのままに烏を蹴りつけその場から去る。泣きながら現実から逃げ去るその姿は、既に花森健人に戻っていた。

No.2 1/4
次に健人が目を覚ましたのは病院だった。傍らには彼の母、純子の憂いに満ちた顔があった。事情を説明しようとするも、その異質さ故に、家族には「暴漢に襲われた」と伝える健人。
一方市街地のとある路地裏。烏のように黒いコートを纏った男=ネーゲルとスーツ姿の茶髪の男=カイルスとが辛辣に言葉を交わす。
弱々しいネーゲルの様相を皮肉交じりに探るカイルス。ネーゲルはそれを一瞥し「俺に構うより優先すべきは儀式だろう」とだけ告げるも、カイルスは言葉巧みに彼から情報を引き出す。

No.2 2/4
その後、健人は家族から「無理しないで実家に帰ってこないか」と提案される。それを受け入れつつも変身した身体に対して強い不安を覚える健人は、自分に何が起こったか確かめるために「精密検査だけ受けておきたい」とそれとなく家族と医療サイドに伝える。
その後退院し、警察の事情聴取も終えた健人は、身辺整理の最中に大学の掲示板で「怪事件についての情報を求めています」と書かれたビラを見つけた。

No.2 3/4
少々躊躇いはしたものの、健人はビラに記されていた連絡先に意を決して連絡する。
電話に出た横尾和明と夕方にPCルームで待ち合わせて話をすると、彼の二つ下の恋人の高山歩美が怪事件の被害者で、昏睡状態にある彼女に何があったのか、その真実を追おうとしていたという。
そんな和明は、既に怪事件の背後に”何か”がいることは察知していた。そのことを受けて、おずおずと自分の事情を説明する健人。和明から「だけど、どうして花森君は無事だったんだ?」と問われた。

No.2 4/4
「それは…」自分も怪物のようになって戦い、切り抜けたなどとは言えず、言い淀む健人。外は宵闇が迫り街灯が点き始めていた。その時学生の悲鳴が聞こえる。
「まさか…」悲鳴が聞こえた方向に向かった和明と健人。そこにあったのは襲われた男子学生と蜘蛛の怪人。
「お前ら何なんだ!歩美に何した!!」
道中で携えた鉄パイプで蜘蛛に挑みかかる和明だったが蜘蛛の反撃に倒れてしまう。蜘蛛はそのまま健人にも襲いかかろうとするも、胸のキーホルダーが再び輝いた。その光を和明は薄れゆく意識の中で垣間見る。一瞬の隙をついて白銀は蜘蛛に一太刀浴びせると、男子学生と和明を離れた場所に運び、大学内で激しく交戦し、これを撃退する。

No.3 1/4
その後、匿名で警察に連絡を入れた健人。後日、休学手続きの準備を進めていると、先の戦いの際軽傷で済んだ和明から、襲われた男子学生=英道大学二年、葉山修司に話を聞こうと声をかけられる。他者の事情に関わりたくはない健人だったが、和明に説得されて彼に同行し病院へと向かう。葉山本人は心身を疲弊しており、応じられることは無かったが、和明は彼に向けての手紙をしたため、それを病院に預ける。その帰りに、健人と和明はサソリの怪物に襲撃される。逃げ惑いながら、散った方が互いに助かる可能性が高いとして、二人はそれぞれ別方向に逃げる。サソリは健人を追ってきたことから、変身してこれと交戦し、打ち合いに圧されたサソリは、撤退する。

No.3 2/4
その後、見舞いに来ていた葉山の妹の薫が先の手紙を読んだことから、葉山について、そして助けを求める彼女たち家族についての話を聞くことができた。
近所のファストフード店にて、薫に「何かお兄さんに変わった様子があったとか、襲われたことに心当たりはなかった?」と和明は聞く。それを受けて薫は「なんで修くんだったのかな…」と涙ぐみながらも言った。健人は何も言えず、しかし神経が昂り、手足が痺れたようになっていた。「助けてっていうのは、お兄さんの関係のこと?」それだけ問うのが精一杯だった。薫はその問いに反応し、自らの思いを話し始める。
葉山の家は所謂ひとり親家庭で生活上の余裕がなかった。そんな中で子どもには出来るだけのことをしてきてくれた母が半年前に倒れた。

No.3 3/4
修司は高校一年までは素行が良くない学生だったが、薫には優しい兄だったし、心根を入れ換えて英道では奨学金を得て学業とバイトに励んでいた。その矢先のことだった。
母が倒れたことで、その負担は兄妹二人にのし掛かっていた。涙ながらに療養しつつも公的支援に掛け合う母と、秀才の薫の将来を閉ざさないためにも、修司は必死で学業とアルバイトに努めた。これ以上道を踏み外すことなく、かつ自身の学業を修め、また家族を守るに日々全力だった。しかし、それが行き詰まったようだったと薫は語る。

No.3 4/4
「母も…頑張ったんだけど、私たち、十分には支援してもらえなかったんですよね。それもあって、兄は私の将来と自分の将来の二つは守れなくなったんだと思います」
以降は追い詰められていく修司を見て薫自身も自身を責めるしかなかったという。
―――怪物の事件以前の問題。健人は何も”言わなかった”。しかし、和明は必死で糸口を探す。捻り出した案は、事件当時の夕暮れに葉山が大学に来たことに着目し、薫と共に大学で情報収集するというものだった。
もちろん二人の不利益にならぬよう、立ち回りも話を聞き取る相手についても相談して決め、これを薫は承諾。三人は翌日大学に集まることになる。

No.4 1/4
翌日、英道大学で待ち合わせている間、健人は和明と話す。やはり健人は人の事情である以上関わることを望んでいなかったが、和明に躱される。その後薫と合流し、先の相談の際にアポイントを取ったゼミの教授に話を聞きに行く。教授からは葉山の「中退を考えている」という相談に”一度休学して様子を見る選択肢もある”旨の回答はしたという情報を得た。他にもバイト先の被服店で葉山は事件の前日、自分のシフトを入れられる最大まで入れたいと申し出ていた。

No.4 2/4
その時、葉山本人が無理を押しての早めの出勤としてその場に現れた。だが、すぐさま店長に断りを入れて三人を連れ出した彼は「お前ら妹誑かして何してんだ」と凄む。
険悪な状況に泣き出す薫。和明は薫に謝罪しつつ彼女を送り、家に帰そうとする。しかし激高する葉山の言葉に健人は応酬してしまう。
「守れる人を守れてない人に言われたくない」
そのまま言い争う健人と葉山。その末に「俺にどうしろってんだ!」という叫びと共にムカデの怪物が葉山の身体から現れる。
辺りにいた人はそれまでの雰囲気もあって逃げていく。しかし健人は葉山が現場に取り残されるのを見て、ある皮肉を自分に向けた。
「"守れる人を…"か…俺に守れるわけないのにな…」
健人はその言葉の手前、人々の中に紛れつつバツ悪く変身。そしてムカデと交戦する。

No.4 3/4
ムカデとの激しく交戦する白銀。自分にできるのは”怪物を倒す怪物”ということだけだ。そう捉えながら、ムカデを倒すとその場から去っていった。
一方、薫もまた張り詰めていた糸が切れつつあった。困難にある家庭、自分のために葛藤し、苦しむ兄、無視することもできない彼女自身の学業へのプレッシャー、学習の機会も今後の見通しが立たない。それらが降りかかっていた上で、先の葉山の怒声。和明の慰めの言葉にどうにか応じるも、彼女の安心は失われつつあった。そこに彼女の絶望を嗅ぎつけたカイルスの魔の手が伸びる。

No.4 4/4
以前に見た光と白銀の烏の存在を、和明は健人なのではと直感していたことから彼は健人に連絡する。
「薫さんを逃がしてるけど、俺だけじゃ厳しい…場合によっては後を頼む!”全速力”で来い!」と言い残して電話は切れた。和明と薫はその後も走り続けるも、カイルスに追いつかれてしまう。恐竜を模した姿に変身するカイルスが迫り、万事休すかと思われたその時、白銀が追い付いて恐竜との戦闘に入る。二人をどうにか逃がしこそ出来たものの、恐竜に圧される白銀。その時二体の間を炎が割り、赤髪の少女が姿を現した。赤髪は白銀と恐竜に苛烈に攻撃を仕掛ける。状況の混乱を嗤いながら恐竜は撤退するが、その後白銀も少女の攻撃から逃げ去ることしかできなかった。

閑話 No.4.5
何とか赤髪の少女の攻撃から逃れ、和明と薫に合流した健人。その後、薫を修司の下へと送り届けると、以前ある縁で世話になっていたソーシャルワーカーの石川恵美子に連絡する。修司との衝突の際、彼ら家族のニーズが、公的支援に正確に認知されていないことが垣間見えた故のことだった。
「俺たちにできるのはここまでだ。あとは彼ら家族の話だから…けれど、その話が続く入口にでも少しでもなれたいい…ってくらいの気紛れだ。石川さんに委託するのは、何度もしたくはないけどな」

※後の描写としては、葉山母には医療扶助と障害年金の支給。
修司に関しては大学は中退ではあるが、就労に向けての職業訓練や情報提供等を行い、生活を立て直すことで将来的に再度学習の機会を獲得できる可能性がある旨を示したい。
薫については学習機会の保証として、その関係の寄付金を集めている育成会の紹介。地域団体の実施している学習会への参加促進等を用いて対処することと想定する。

No.5 1/4
その日、健人は家族と共に病院へ精密検査の結果を聞きに行く。結果としては"何も異常は見つからなかった"。家族と共に良かったとしつつも内心は動揺する健人。その後、実家に帰る準備はどうかと健人は家族に問われるも、言い淀んでしまう。その時横尾から電話が入る。内容は、これまでにわかったことや状況について情報共有しようということだった。そちらには「また追って合流する」と伝え、健人は家族に自分の思いを伝える。「バイトは辞めたんだけど…ちょっと大学でやることが出来たんだ。どうなるかわからないけど、もしよければもう少し様子を見てやって欲しい」

No.5 2/4
家族は心配しつつも、健人のその言葉を尊重すると言った。その言葉に、事情を秘す申し訳なさから謝りつつもお礼を言うと、健人は大学で横尾と合流した。
電話での話し通り、互いの視点を交えながらも情報を共有する二人。激しい苦痛の感情と共に人から出てきた怪物。また苦悶する人を襲う怪物。自分たちの前に現れた白銀の烏と赤髪の少女。だがこれらの核心に至る手段が見つからない。だがネット検索を行ううちに、ある情報を目にする。

No.5 3/4
それは、先日より朝憬市の教育機関の男子学生が立て続けに襲われた事件が、英道大学で健人たちを襲った蜘蛛の事件と併せて4件発生したというニュースだった。
「奴らがターゲットを絞っていた…?どうして…」
「それなら薫さんのことはこの場合どうなる?」
疑問に思いながらも怪物や赤髪の少女も関係している可能性を鑑みて、朝憬市街の大学から当たることとした。(ニュースでは被害者の匿名性を重視したため、一連の教育機関の名称から秘匿されたため)
しかし他大学の学生にどう接触し、事件についての情報を得るか…和明が提案したのは、合コンや街コンに参加するというものだった。「あり得ない、無理だ、冗談じゃない」とする健人の言葉を看破し、二人は幾度かこれらに参加する。

No.5 4/4
その都度出会う女性や同年代に対し、どうにか話をこねくり回しつつも、結果としてこの聞き取りはは空振りかと思われた。しかし…他の3件の事の現場については掴むことができた。このことから、和明は今回のアプローチについては「一先ずは及第点」とした。目的の一つとして、怪物達の行動範囲を特定することがあったからだ。
その結果を基に、素人ながら割り出した怪物の行動範囲を帰りに回ってみる。
「俺達だけで危険じゃないか?」
「"あの白烏が来るから"、大丈夫さ」
「……(どういう意味だよ、それ)」
そんな与太話を交えていたその時、怪物と交戦する赤髪の少女の姿が、そこにあった。

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