心羽の日記④ version 1

2021/07/19 13:24 by sagitta_luminis sagitta_luminis
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心羽の日記④
これは心羽の日記ではなく、ノクスケイデンから出土した文献だとされている。しかし、ここに書かれていることは俄には信じ難く、ノクスケイデンから出土したという情報も真偽の程は定かではないため、資料としての信憑性は限りなく0に近い。また、ルクスカーデンに伝わる童話との内容の類似性が指摘されており、作中で{}と呼ばれる人物はボイジャーなのではないかとする考察がある。

——————————————————————————————

{}は生まれた時から孤独だった。
{}は数奇な魔術師でもあり、様々な魔術を使えたが、孤独であるがゆえの寂しさは魔法ではどうにもならなかった。
そこで{}は自身の体験や記憶から7匹の生き物を創り出し、彼らとともに生活した。{}は魔法で大概のことはできるので、8人でも生活に困ることはなく、ただひたすら遊んでいた。
しかしそれは次第につまらなくなり、まだ見たことない外の世界を見てみようと船を創り、8人で旅に出た。

旅の途中、いろいろなものを見つけては船に積んで持ち運んだ。船はいつしかぎゅうぎゅう詰めになり、{}は船を拡張工事することにした。また、拾った品々を管理するには人手が足りず、それをモチーフに新たな仲間を創った。
やがて旅の仲間はどんどん増えていき、その度に船は拡張工事を繰り返して大きくなった。

旅の仲間が100人を超えた頃、船はとある小さな星のもとに到着した。ここでは王が国を治め、その中で人々が平和に暮らしていた。
{}と仲間たちは国の人々と仲良くなり、その国の工芸品や衣服を旅の途中で拾った様々なものと交換し合ったのち、再び旅に出た。
国で手に入ったものは他で拾ったものよりとびきり素敵なもので、{}はこれからはなるべく国のところへ飛べるよう願って船を動かした。

その後も様々な国を訪れ、物だけでなく文化や技術も持ち込み、船内は賑やかになっていった。
この頃から次第に{}は乗組員を管理できなくなり、彼らにも自分が持つ魔法の力を分け与えた。これによって乗組員たちは自分で自分の面倒を見られるようになり、自分たちで楽しみを追い求め、自分たちで新たな仲間を作るようになった。{}は自然と彼らの中の一員から離れ、彼らの生活を手助けするリーダーのようなポジションへと移り変わっていった。

乗組員が1万人を超えた頃、キラキラに飾られた巨大な豪華客船はこれまた巨大な帝国都市に到着した。この国はこれまでに類を見ない発展を遂げており、無数の人々で溢れかえっていたが、その多くは暗い目をしていた。{}たちはここでも物々交換を試みようとしたが、人々は欲しそうに目を輝かせるだけで、誰も物々交換には応じなかった。
やがて人々の関心が集まったのは物ではなく、{}たちが使う魔術だった。そこで{}たちは様々な魔術を披露してみせた。その様子は多くの人の目にとまり、この国が誇る通信技術をもって瞬く間に国中へと広がった。それをみた皇帝は彼らに興味を持ち、彼の魔術を軍事に利用しようと企てた。皇帝はまず{}にこの国で暮らさないかと提案を持ちかけた。{}たちは旅を続けると言って断ったが、皇帝はしつこくあらゆる手段で誘った。{}たちはまだ新しいものが見たいと言って提案に乗ることはなく、出立の準備を始めた。皇帝は説得を諦め、帝国軍に{}の身柄を捕らえるよう命じた。軍は出立前夜に船を襲い、動揺し抵抗する乗組員たちを次々と殺して{}の身柄を捜した。船内にいた{}はパニックになり急いで船を出そうとしたが、まだ船外にいる仲間たちを置いてはいけず、置いて逃げるしかないことに気付いた時にはもう既に9割以上の仲間を失っていた。
{}は数奇な魔術師ではあったが、戦いというものを知らなかったのだ。

次の目的地に向かう途中、{}は激しい憎悪と絶望の中にいた。
何を間違えたのだろうか。なぜ失わなければならなかったのか。
{}は考え続けた。人生の中で最も頭を使った。しかし、何もわからなかった。その思考の全てを堪えきれない憎悪が焼き尽くしていった。彼の人格は歪み、別人のように豹変した。
復讐心に全身を支配された{}は、船の向きを変え、来た道を戻り、再び帝国都市に舞い降りた。
近くにいた人間たちを脅して皇帝の居場所を聞き出し、その方角に向かって前進した。
それから5分もしないうちに陸や空から軍隊が現れ、{}を迎撃した。{}はその全てを撃ち落とし、破壊し、時には蹂躙もした。
城前では数万の軍勢と戦闘になったが、そのなかのちょうど9割を綺麗に殺し、あとは死なない程度に吹き飛ばした。
防護壁を破って城に入り、逃げようとしていた皇帝を捕まえて玉座に縛り付け、なぜ昨夜あんなことをしたのか問い詰めた。
しかし、{}は皇帝がでたらめを言っているように見えた。皇帝の価値観が自分と違いすぎていて話が入ってこなかったからだ。仕方がないので皇帝の記憶を読み取り、皇帝の言っていることがどういうことなのか、何を目当てにそんなことをしたのか、なぜそんなことができるのか、洗いざらい全てを見た。

その体験はとても素晴らしいものだった。力を得て、人を支配すれば欲しいものはなんでも手に入るという衝撃の事実が、この脳に綴られていたのだ。
{}は手始めに、ここで新たな皇帝を名乗った。読み取った記憶のなかにでてきた様々な品をここに持ち込ませた。従わない者は容赦なく殺した。魔術で強力な軍を造りあげ、まだ支配していない地域にも進出した。
やがて全ての地域を統一したあと、この星の様々な品や技術、才能ある人間を奴隷として船に乗せ、新たな星を目指した。
{}は支配を広げるために、自分がもっと強い力を持たなければと考えた。
星を巡ってはその文明を支配し、そこにある戦闘技術や魔術など、様々なものを奪略した。また軍を持つことも力のひとつであると考え、駒になる強い生き物を大勢創り、屈強な戦士を見かけたら奴隷にして力を与えて引き入れた。
{}が創り出した生き物や軍隊には特に名前はなかったが、他の星々からは侵略者として恐れられ、星を喰らう者という畏敬の念を込めて“エクリプス”と呼ばれるようになった。
エクリプスは絶望を糧に繁殖を行うため、侵略活動と繁殖を同時にこなすことができ、強い個体ほど次々に増えていった。
船も軍隊と軍事設備のためにとてつもなく肥大化し、いつしか要塞のような姿になっていた。
以前のように遊ぼうと呼びかけてくる人はもういなかったが、既にそんなものに興味はなかった。
この頃になると{}は皇帝と名乗るのをやめ、それよりも上の、あらゆる者の上に立つ存在———神を名乗るようになった。

{}は自身の魔力の源が恒星から降り注ぐ物質であることに着目し、恒星が持つパワーを得ようと考えるようになった。そこで最寄りの主系列星に進路を変え、要塞が焼けない程度に近くを掠めてみた。すると、{}の身体は無限にも等しい魔力に満ち溢れ、本当に神になったかのような錯覚を受けた。その力で要塞をさらに増築し、星とも呼べるような大きさの巨大要塞“ノクスケイデン”を創り上げた。
しかし、無限にも等しいように思えた魔力はそれで尽きてしまい、一度に大きすぎる魔力を行使したせいで体力も奪われてしまった。{}は少しでも神に近付くため、エクリプスたちに侵略やノクスケイデンの拡張などほとんどの仕事を任せ、自身は要塞の中心に引きこもって体力の回復と魔力の行使に耐えうる身体作りに励むようになった。

{}が表に立たず、司令塔としての立場になってからもエクリプスたちの侵略活動は続いた。侵略とともにエクリプスたちは増え続け、珍しい物品は回収されて{}の元に届けられた。

それから長い年月が経ち、多数の星を支配してまわったエクリプスは史上最大の侵略者としてその名を轟かせた。天体規模の人員と軍事力を誇り、“星狩り族”の異名でよばれ、この異名はエクリプスの活動領域から遠く離れた、ルクスカーデン王国にも届いていた。

強くなったエクリプスたちは、{}から告げられた究極の任務である“恒星の回収”に取り掛かった。その方法は大胆にも、支配した惑星の軌道を変えて恒星に接近し、その惑星にいるエクリプスたちが自身の命と引き換えに恒星の魔力を蓄え、{}のもとに届けるというものであった。この際移動用に使われた惑星は恒星の重力でバラバラになり、当然その星で暮らす人々も巻き添えである。支配するだけでは飽き足らず、力のためだけに何十億もの命を星ごと生贄にするこの方法は残酷というほかなかった。得られるエネルギーは膨大だが、それをもってしても回収できるのは恒星全体のエネルギーの1割にも満たない。しかしエクリプスに蝕まれた恒星は質量が落ちることでその姿を維持できなくなり、エネルギーが散って暗い白色矮星になり、星空から姿を消してしまう。
{}は届けられた恒星の魔力を使って自身を回復し、強力な魔法に耐えられるよう肉体の強化も施した。その度に{}は屈強で肥大な身体へと変貌を遂げた。それに合わせるようにノクスケイデンも少しずつ拡大していった。      

これは心羽の日記ではなく、ノクスケイデンから出土した文献だとされている。しかし、ここに書かれていることは俄には信じ難く、ノクスケイデンから出土したという情報も真偽の程は定かではないため、資料としての信憑性は限りなく0に近い。また、ルクスカーデンに伝わる童話との内容の類似性が指摘されており、作中で{}と呼ばれる人物はボイジャーなのではないかとする考察がある。

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{}は生まれた時から孤独だった。
{}は数奇な魔術師でもあり、様々な魔術を使えたが、孤独であるがゆえの寂しさは魔法ではどうにもならなかった。
そこで{}は自身の体験や記憶から7匹の生き物を創り出し、彼らとともに生活した。{}は魔法で大概のことはできるので、8人でも生活に困ることはなく、ただひたすら遊んでいた。
しかしそれは次第につまらなくなり、まだ見たことない外の世界を見てみようと船を創り、8人で旅に出た。

旅の途中、いろいろなものを見つけては船に積んで持ち運んだ。船はいつしかぎゅうぎゅう詰めになり、{}は船を拡張工事することにした。また、拾った品々を管理するには人手が足りず、それをモチーフに新たな仲間を創った。
やがて旅の仲間はどんどん増えていき、その度に船は拡張工事を繰り返して大きくなった。

旅の仲間が100人を超えた頃、船はとある小さな星のもとに到着した。ここでは王が国を治め、その中で人々が平和に暮らしていた。
{}と仲間たちは国の人々と仲良くなり、その国の工芸品や衣服を旅の途中で拾った様々なものと交換し合ったのち、再び旅に出た。
国で手に入ったものは他で拾ったものよりとびきり素敵なもので、{}はこれからはなるべく国のところへ飛べるよう願って船を動かした。

その後も様々な国を訪れ、物だけでなく文化や技術も持ち込み、船内は賑やかになっていった。
この頃から次第に{}は乗組員を管理できなくなり、彼らにも自分が持つ魔法の力を分け与えた。これによって乗組員たちは自分で自分の面倒を見られるようになり、自分たちで楽しみを追い求め、自分たちで新たな仲間を作るようになった。{}は自然と彼らの中の一員から離れ、彼らの生活を手助けするリーダーのようなポジションへと移り変わっていった。

乗組員が1万人を超えた頃、キラキラに飾られた巨大な豪華客船はこれまた巨大な帝国都市に到着した。この国はこれまでに類を見ない発展を遂げており、無数の人々で溢れかえっていたが、その多くは暗い目をしていた。{}たちはここでも物々交換を試みようとしたが、人々は欲しそうに目を輝かせるだけで、誰も物々交換には応じなかった。
やがて人々の関心が集まったのは物ではなく、{}たちが使う魔術だった。そこで{}たちは様々な魔術を披露してみせた。その様子は多くの人の目にとまり、この国が誇る通信技術をもって瞬く間に国中へと広がった。それをみた皇帝は彼らに興味を持ち、彼の魔術を軍事に利用しようと企てた。皇帝はまず{}にこの国で暮らさないかと提案を持ちかけた。{}たちは旅を続けると言って断ったが、皇帝はしつこくあらゆる手段で誘った。{}たちはまだ新しいものが見たいと言って提案に乗ることはなく、出立の準備を始めた。皇帝は説得を諦め、帝国軍に{}の身柄を捕らえるよう命じた。軍は出立前夜に船を襲い、動揺し抵抗する乗組員たちを次々と殺して{}の身柄を捜した。船内にいた{}はパニックになり急いで船を出そうとしたが、まだ船外にいる仲間たちを置いてはいけず、置いて逃げるしかないことに気付いた時にはもう既に9割以上の仲間を失っていた。
{}は数奇な魔術師ではあったが、戦いというものを知らなかったのだ。

次の目的地に向かう途中、{}は激しい憎悪と絶望の中にいた。
何を間違えたのだろうか。なぜ失わなければならなかったのか。
{}は考え続けた。人生の中で最も頭を使った。しかし、何もわからなかった。その思考の全てを堪えきれない憎悪が焼き尽くしていった。彼の人格は歪み、別人のように豹変した。
復讐心に全身を支配された{}は、船の向きを変え、来た道を戻り、再び帝国都市に舞い降りた。
近くにいた人間たちを脅して皇帝の居場所を聞き出し、その方角に向かって前進した。
それから5分もしないうちに陸や空から軍隊が現れ、{}を迎撃した。{}はその全てを撃ち落とし、破壊し、時には蹂躙もした。
城前では数万の軍勢と戦闘になったが、そのなかのちょうど9割を綺麗に殺し、あとは死なない程度に吹き飛ばした。
防護壁を破って城に入り、逃げようとしていた皇帝を捕まえて玉座に縛り付け、なぜ昨夜あんなことをしたのか問い詰めた。
しかし、{}は皇帝がでたらめを言っているように見えた。皇帝の価値観が自分と違いすぎていて話が入ってこなかったからだ。仕方がないので皇帝の記憶を読み取り、皇帝の言っていることがどういうことなのか、何を目当てにそんなことをしたのか、なぜそんなことができるのか、洗いざらい全てを見た。

その体験はとても素晴らしいものだった。力を得て、人を支配すれば欲しいものはなんでも手に入るという衝撃の事実が、この脳に綴られていたのだ。
{}は手始めに、ここで新たな皇帝を名乗った。読み取った記憶のなかにでてきた様々な品をここに持ち込ませた。従わない者は容赦なく殺した。魔術で強力な軍を造りあげ、まだ支配していない地域にも進出した。
やがて全ての地域を統一したあと、この星の様々な品や技術、才能ある人間を奴隷として船に乗せ、新たな星を目指した。
{}は支配を広げるために、自分がもっと強い力を持たなければと考えた。
星を巡ってはその文明を支配し、そこにある戦闘技術や魔術など、様々なものを奪略した。また軍を持つことも力のひとつであると考え、駒になる強い生き物を大勢創り、屈強な戦士を見かけたら奴隷にして力を与えて引き入れた。
{}が創り出した生き物や軍隊には特に名前はなかったが、他の星々からは侵略者として恐れられ、星を喰らう者という畏敬の念を込めて“エクリプス”と呼ばれるようになった。
エクリプスは絶望を糧に繁殖を行うため、侵略活動と繁殖を同時にこなすことができ、強い個体ほど次々に増えていった。
船も軍隊と軍事設備のためにとてつもなく肥大化し、いつしか要塞のような姿になっていた。
以前のように遊ぼうと呼びかけてくる人はもういなかったが、既にそんなものに興味はなかった。
この頃になると{}は皇帝と名乗るのをやめ、それよりも上の、あらゆる者の上に立つ存在———神を名乗るようになった。

{}は自身の魔力の源が恒星から降り注ぐ物質であることに着目し、恒星が持つパワーを得ようと考えるようになった。そこで最寄りの主系列星に進路を変え、要塞が焼けない程度に近くを掠めてみた。すると、{}の身体は無限にも等しい魔力に満ち溢れ、本当に神になったかのような錯覚を受けた。その力で要塞をさらに増築し、星とも呼べるような大きさの巨大要塞“ノクスケイデン”を創り上げた。
しかし、無限にも等しいように思えた魔力はそれで尽きてしまい、一度に大きすぎる魔力を行使したせいで体力も奪われてしまった。{}は少しでも神に近付くため、エクリプスたちに侵略やノクスケイデンの拡張などほとんどの仕事を任せ、自身は要塞の中心に引きこもって体力の回復と魔力の行使に耐えうる身体作りに励むようになった。

{}が表に立たず、司令塔としての立場になってからもエクリプスたちの侵略活動は続いた。侵略とともにエクリプスたちは増え続け、珍しい物品は回収されて{}の元に届けられた。

それから長い年月が経ち、多数の星を支配してまわったエクリプスは史上最大の侵略者としてその名を轟かせた。天体規模の人員と軍事力を誇り、“星狩り族”の異名でよばれ、この異名はエクリプスの活動領域から遠く離れた、ルクスカーデン王国にも届いていた。

強くなったエクリプスたちは、{}から告げられた究極の任務である“恒星の回収”に取り掛かった。その方法は大胆にも、支配した惑星の軌道を変えて恒星に接近し、その惑星にいるエクリプスたちが自身の命と引き換えに恒星の魔力を蓄え、{}のもとに届けるというものであった。この際移動用に使われた惑星は恒星の重力でバラバラになり、当然その星で暮らす人々も巻き添えである。支配するだけでは飽き足らず、力のためだけに何十億もの命を星ごと生贄にするこの方法は残酷というほかなかった。得られるエネルギーは膨大だが、それをもってしても回収できるのは恒星全体のエネルギーの1割にも満たない。しかしエクリプスに蝕まれた恒星は質量が落ちることでその姿を維持できなくなり、エネルギーが散って暗い白色矮星になり、星空から姿を消してしまう。
{}は届けられた恒星の魔力を使って自身を回復し、強力な魔法に耐えられるよう肉体の強化も施した。その度に{}は屈強で肥大な身体へと変貌を遂げた。それに合わせるようにノクスケイデンも少しずつ拡大していった。