0 (花森健人)

朝憬市英道大学福祉学部に所属する2回生(20歳)。
温厚で気遣いをよくする真面目で優しい青年。しかしその裏で、幼少期から社会や人間関係への適合に困難さを感じており、人に言葉が届かない怒りや、常に嫌な思いをする誰かへの悲しみ、それらに対する自身の無力に、執着と復讐心を燃やしていた。

また、小学校高学年の時に出会った、当時新人のスクールソーシャルワーカーである日原望結に心を救われたことから憧れを抱いていたが、その強い使命感のために疲弊した彼女は、後に現場を離れてしまう。健人は彼女から「優しいことを忘れないで」という祈りを受け取るものの、彼は自身の淡い思いも彼女を追い詰めた一因であると考え、充分な言葉が交わしきれなかったことから、どこか複雑な思いを抱いている。"俺もあの人を助けたかったのに、置いてけぼりにされた"と。

しかしその祈りに応える意味でも、高校以降は社会福祉を専攻。この時点では成績は悪くなかったものの、通った高校は素行の悪い学生が多く、健人は絡まれる同級生を庇おうしていた。そのために気の置けない日々が始まり、学業に余力が回らず成績が落ちる。こうした一連の現実に対して、健人はもともと好きな特撮やゲームにある造形美や表現、物語で心をどうにか癒して対処するしかなく、机に着く力が持てなかった。一方で焦燥感に突き動かされ、高校2年の8月からはとある事業所のアルバイトもしていた。しかし既に精神的に疲弊していた上に活動主体を担っていた事業所の上層部は腐敗しており、人手が少ない中で現場担当者のみが責任を負うもので、その支援は利用者も職員も消耗するものだった。当然未成熟かつ不器用な健人が適応しきれるものではなく、無力や焦燥が既にあった執着や復讐心に上乗せされてしまう。そうして健人の言動や振る舞いは粗暴なものになっていった。

健人は自身への客観的な視点を持つことができず、また他者に対しても、その事情・心情を真に理解する前に、自身の感情を押し付けてしまっていた人間であり、ある種閉塞的な人間だった。やがて上記の出来事とその閉塞感から「自分は何かしていい人間ではない」とし、錯乱・狂乱してしまう。そのまま高校3年生当時は精神科に入院。同時に自身についてある”構造的な困難”があると医師から知らされ、同時に「自他の問題を混同している」状態であると伝えられる。退院後、そうした言葉やそれまでの出来事を反芻し、呆然とした心身で朝憬市を彷徨うある夜のこと、街の展望台である少女に出会い、彼女に対し涙ながらに”独り言”を遺す。

”君は、本当に優しいことがどういうことかを…ちゃんと持っててな”

その後、休学していた高校を一年遅れかつ、本人曰く”最悪の成績”で卒業。
”人間も自分も面倒だ。一生懸命になってたのがバカみたいだ”と自身に響かせ、ただ無気力に日々を過ごす中、本作冒頭に至る。

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