私がもらうのは version 5
私がもらうのは
そもそも誕生日とはそこまで目出度いものなのだろうか。と、考えてしまうようになったのは、一体何歳の誕生日を迎えたときのことだっただろうか。
子供時分のソレは、誕生日を迎えれば同級生の友達よりも一つ大人になれたような気がしたし、親や親戚から貰える誕生日プレゼントにもワクワクすることができた。
しかし、歳を取るほどに社会的責任が少し重くなっていくことに気付いてからか、そんな浮かれた気分に浸れなくなってきたのは否めない。仕事をするようになった今に至っては、下手すればいつの間にか目の前に来ていて、いつも通りに仕事をしているうちに終わっている。なんてことだってある。
三百六十五個、或いは六個ある普通の日の一つとまではいわないが。
節目ではあっても、めでたくも特別でもない。
しかしその分、と言うべきかは分からないが、この歳になって俺にもやっと、誕生日を盛大に祝ってやろうと思える相手ができた。ライフステージが一つ上がったというやつである。
大人ぶってはいるがどうしようもなく子供っぽくて、生意気なことばかり言って正直腹が立つことも多いが、それでも間違いなく愛おしく、いつまでも彼女の隣で彼女の力であり続けたいと思える。そんな少女。
つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルが歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じるべきことはなく、故にこうして朋花の新たな誕生日を前に、誇らしき人生の相方に対して俺は自信を持って問うことができるのだ。
しかしその分、と言うべきかは分からないが、いつも通りにまじめに仕事をしたお陰かこの歳になって俺にもやっと、誕生日を盛大に祝いたいと思える相手ができた。同級生が結婚、そして当人或いは配偶者の出産を経て子孫を残していく中、遅ればせながら俺もまたライフステージが一つ上がったというやつである。
子供が大人になるには誕生日を迎えるだけでいいが、大人が更に大人になるには自ら動かねばならないという事実を痛感する。
しかし、気付いたならば実践すればよいだけである。何歳になってもそれだけは変わらない。いい年こいての大台に乗る前に実践する機会に恵まれたことを僥倖とし、いい年をこいた大人として、まだどうしようもなく子供っぽくて、生意気なことばかり言って正直腹が立つことも多いが、それでも間違いなく愛おしく、いつまでも彼女の隣で彼女の力であり続けたいと思える彼女――
――つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルの誕生日を盛大に祝うとしよう。
なに。これからは彼女が歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じることはなく、共に成長していく誇らしき人生の相方に対して未熟な俺は恥じることなく問うこととした。
「誕生日プレゼントに何を買うかマジで決まらないので、どうか欲しいものを教えていただけないでしょうか……」
「その情けないセリフをそれらしいモノローグで誤魔化せると思わないでくださいね~?」
……ダメかぁ。
先程まで俺が向かい合っていたパソコンモニタに『令和完全版! アラサーのあなたに捧げる、十代の彼女に贈りたい誕生日プレゼント四百選!』というページが開かれているのを眺めて軽くため息を吐くと彼女、天空橋朋花は、「乙女心の分からないプロデューサーさんには、どんな罰が相応しいでしょうか~?」と怒りよりは憐みの強い目で見つめてくる。
「いや、な。今回はちゃんと忘れなかったんだよ。朋花の誕生日があるのを」
「それは大前提です」
「で、誕生日プレゼントは何がいいかずっと考えてたわけだよ、一か月くらい」
「それだけ考えても分からないんですか~?」
ここまでくると、煮詰まっていた。というやつだ。アレがいいか、コレがいいか。アレは他にも似たようなのを持っていたような気がする、コレは朋花の趣味から少し外れるんだよな、だとか。
「まあ、プロデューサーさんにその手のスマートさを求めたことはないので別に構わないと言えば構いませんが」
と、我が家のソファに勝手知ったる自分の家と言わんばかりに腰かけた朋花は、カーペットに正座する俺を見下ろす。
ちなみに朋花にさせられたわけではない。
極めて自主的な正座だ。反省の意を込めての。
「反省はしているので、どうか矛を収めて頂けると……これでもちゃんと考えたんだよ」
とはいえ、朋花が怒ってないわけではない。大体……三分咲きと言うところか。
「」
そもそも誕生日とはそこまで目出度いものなのだろうか。と、考えてしまうようになったのは、一体何歳の誕生日を迎えたときのことだっただろうか。
子供時分のソレは、誕生日を迎えれば同級生の友達よりも一つ大人になれたような気がしたし、親や親戚から貰える誕生日プレゼントにもワクワクすることができた。
しかし、歳を取るほどに社会的責任が少し重くなっていくことに気付いてからか、そんな浮かれた気分に浸れなくなってきたのは否めない。仕事をするようになった今に至っては、下手すればいつの間にか目の前に来ていて、いつも通りに仕事をしているうちに終わっている。なんてことだってある。
三百六十五個、或いは六個ある普通の日の一つとまではいわないが。
節目ではあっても、めでたくも特別でもない。
しかしその分、と言うべきかは分からないが、いつも通りにまじめに仕事をしたお陰かこの歳になって俺にもやっと、誕生日を盛大に祝いたいと思える相手ができた。同級生が結婚、そして当人或いは配偶者の出産を経て子孫を残していく中、遅ればせながら俺もまたライフステージが一つ上がったというやつである。
子供が大人になるには誕生日を迎えるだけでいいが、大人が更に大人になるには自ら動かねばならないという事実を痛感する。
しかし、気付いたならば実践すればよいだけである。何歳になってもそれだけは変わらない。いい年こいての大台に乗る前に実践する機会に恵まれたことを僥倖とし、いい年をこいた大人として、まだどうしようもなく子供っぽくて、生意気なことばかり言って正直腹が立つことも多いが、それでも間違いなく愛おしく、いつまでも彼女の隣で彼女の力であり続けたいと思える彼女――
――つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルの誕生日を盛大に祝うとしよう。
なに。これからは彼女が歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じることはなく、共に成長していく誇らしき人生の相方に対して未熟な俺は恥じることなく問うこととした。
「誕生日プレゼントに何を買うかマジで決まらないので、どうか欲しいものを教えていただけないでしょうか……」
「その情けないセリフをそれらしいモノローグで誤魔化せると思わないでくださいね~?」
……ダメかぁ。
「まあ、プロデューサーさんにその手のスマートさを求めたことはないので別に構わないと言えば構いませんが」
と、我が家のソファに勝手知ったる自分の家と言わんばかりに腰かけた朋花は、カーペットに正座する俺を見下ろす。
ちなみに朋花にさせられたわけではない。
極めて自主的な正座だ。反省の意を込めての。
「反省はしているので、どうか矛を収めて頂けると……これでもちゃんと考えたんだよ」
とはいえ、朋花が怒ってないわけではない。大体……三分咲きと言うところか。
「」