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「方舟、作ろうぜ。こんな如何にも絶望ってだけの今を超えるための」
カンカン照りの日差し、雲一つない澄んだ青空の下、瓦礫の街と地に伏して泣く人々から目線を外すと、少年は言った。
少年の懐にあった7人の友はそれぞれに顔を見合わせる。やがてそのうちの一人が青年の声で聞いた。
「方舟?」
「そう、箱でもあり船でもある。洒落じゃないけどさ、その中に希望を入れていくんだ」
歩き続けていた少年は、そう言いながら草花の茂る土手に腰を下ろして一つ息を吐く。その懐で呆気にとられる者、怪訝に少年を見つめる者など、7人はそれぞれの反応を示した。その中で先の一人が、少年の言葉の意図を図るための問いを再度投げかけた。
「急な話だな…希望ったって、そもそもどういうものだよ?」
その問いに対し少年は少し眉根を寄せて口元に手を当てると、そのまま僅かに顔を落とす。しばらくそうしていると、やがてゆっくりと顔を上げて言った。
「…物語だ」
不意に告げられたその言葉に、7人が少年の方へ注意を向ける。少年はそんな7人に自身の展望を語り始めた。
「方舟で旅して色んな場所の色んな奴に会って、”良いことの物語”を集めるんだよ…その旅は俺たちにとってもさ、きっと希望の物語——そんな旅になる」
「それはいいんだけど、もうここには戻らないの…?ここのことは、もういいと?」
今度は凛とした声の友が静かに問う。少年はその言葉にふと顔を上げた。その目の先には、さめざめと泣き晴らす年端もいかない少女の姿。少年はその様に目を細め、閉じる。しかし静かに息を吸うとその目を開き、言葉を紡ぎ続けた。
「いや、多分時が来たら戻るさ。そんな希望の物語を以って、俺たちの命と魔法を強くするんだ。それができた時に、この世界に戻ってくるんだよ」
そう言って立ち上がった少年の目に、熱と力が籠る。その目は世界を睨みつけていた——。

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