0 モルの手記⑱ 世界が僕らを拒むなら
あれから4年が経った。
中学生3年生になった僕の未来は明るく、市内でもトップクラスの名門校である私立朝憬学園高校に向けて受験勉強に励んでいた。一方で、僕の過去は他人に語るにはあまりに醜く、取り繕ってばかりだった。そう、僕は月野莉音。皆から愛され、皆の幸せを願い生きる男の子。ただそれだけだ。
そんな僕のもとに、ある日化け物がやって来てこう言ったんだ。
「朝憬弓音が死んだ」
わけがわからなかった。化け物が話しかけているというこの状況も、朝憬弓音が死んだという話も。
それに、朝憬弓音はもう———
「朝憬弓音はもう僕とは無縁の存在だ。君が何者か知らないけど、それを僕のところへ伝えに来る理由はないはすだ」
化け物はゆっくりとこちらへ歩いてくると、その暗闇のような手で僕の両眼を覆った。
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