1 (つまらない自分語り―――メモがてら)

「なんで人のこと考えて死ななきゃいけねえんだよ。死ぬ筋合いがあるんだよ。誰かとでも一人でも、生きていくならともかく、人のことを考えて死ぬとか死にたくなるとか死んだ方がいいとか、そんなのは…寂しくなる。世界がまた一つ寂しくなるんだよ。だから"もどき"でも、これ以上俺の"人間"は捨てない。」
「そんなことのために、俺の"人間"は減らさせない。俺は俺の人間も、青春も、今からでも取り戻す。都合いいけどさ…そう思わせてくれた温みに、今度こそ誓ったんだ…来いよ心喰らい。お前らにこの"貰い火"だけは譲らない」

僕はあの時…あの笑顔の護り手に置いていかれたとき、僕は、彼のような人になりたいと自分に刷り込んでいました。ですがそれは、当時の僕の願いそのものではなかった。あの時…護り手は最後に独りで泣いていたのです。本当は僕は、誰に何と言われようが…彼に独りで行かないで欲しかった。彼のマネを気取り、何度も挑みかかって壊れ、大勢巻き込んで…でもだから気づいた。
僕は正義の味方になりたいんじゃない。何ならその手合いは好きですが、苦手なのです。ただ僕は、共に戦いたかった。そんな我欲で、気紛れなんですよ。距離感は要りますけどね。
そして僕は今、この世界の護り手の一人である、リュミエと共に立ちたい。
相棒としてね…そしてまたあの人に、楽しく描いた物語を届けるでしょう。それが、彼から始まってここに至った僕のやりたい戦いです。

でも何より、描きたいのです。この絆の話を…そこに色々乗せるより何より、楽しいことをするのです。そこを忘れちゃいけない。

「ーーー私こそ本当の意味でのエクリプス。例えそれ故にもう関われずとも、これは…私とあの人の絆の話なのだ。この話からだけは逃げない。」

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「何がどうってわけじゃない」
「人も自分も、拒絶したようになりたくなかったんだ」

そこは公園の砂場だった。地域の親子が集まっているのだろう。子ども達が遊び、親達がそれを見守る。ありふれていたはずだが、少し変わってしまったかもしれない光景。そこに幼い花森剣人がいた。家から持ってきたおもちゃと、自分なりの空想を掛け合わせて、楽しいものを見つけようと心や身体を動かす。母の純子(すみこ)は、近隣に住む他の子の母親と世間話をしつつ、こちらに目配せする。そんな母と目が合うと、親子は互いに微笑んだ。それは、まだ何も知らなかったころの記憶。誰かとの歪な関わり方も知らなかったころのこと。だが、ふと幼い剣人は後ろを振り向く。そこには困って泣きそうな顔をした他の子どもの姿があった。泣き顔の彼の目線の先には、先ほどまで彼のもとにあったおもちゃが、また別の手に渡っていた。嫌な感覚がした。理不尽を感じるのも、彼が泣くのも、嫌だと思った。おもちゃを取った子の意識が他に向いたのか、一瞬その場を離れたところへ剣人は向かう。彼はそこに転がっていた泣いている子のおもちゃを手に取り、彼のもとに届けた。だけど、仕返しが来ないか怖くなって、剣人は母の方を少し見る。純子は何とも驚いた表情をしていた。それは、少しだけ何か出来たような気がした記憶。
しかしそこに、いないはずの誰かの声が聞こえた。
「"取り返す"なんてやり方しないで済んだら良かったのにね」
そこにいたのは、高校時代の女友達だった秀才の粟村。うるさい。5歳にも満たなかった子どもに何を求めてるんだ。俺の唯一できたことを貶すな。お前のように見透かしたような奴に、俺の何がわかる…
「そんなんだから、あんた化け物になったんだよ」
そこには幼かった自分の姿はなかった。居たのは白銀の烏ーーー異形と化した花森剣人。
「ーーーえっ」

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「何がどうってわけじゃないんだ」
”独り言”の提案こそしてみたものの、互いにどう自分のことを話したものか、少し考えあぐねてしまう。本来、少女の話を聴くべきなのだろうが、話の入り口だけでも開くために、少年は少しだけ自分の話を始めてみた。
「ただ、あんまりにも何もできなくてさ…息苦しくて」
少女の視線が、ちらと少年の方を向く。少年もそれに気づいて彼女を見やる。涙に濡れながら、今もどこか温かみを持った丸い瞳は彼の話に関心を抱いていたようだった。
「正しいと思ったこと、やりたかったと…思うんだけどね。でも、昔テレビで見たヒーローみたいなことができるわけでもない」
思わず苦笑しながらそう言っていた。もう自分の感情もよくはわからない状態なのだろう。だが、だからどうというものでもない。
「もともと器用に笑えたり、色々できる人間でもなかったし、どうすればそれができるのか、何もわからなかった」
学校、地域、社会…そうした場で何かできているというような、張り付いた笑顔をしている人はそれなりには見てきた。だから勘違いしたこともあるのだろう。それと…
「…誰かが誰かを傷つけるのを見たくなかったんだ…でもそれは、自分が不安になったり、怖かったから」
これまで見聞きした世の中のそうした場面を、目を伏せて思い返す。それらは少年の心中を今もざわつかせ、悍ましい思いにさせていた。だが、逃げたいと思ってもそれができるものでもなかった。この世界や人間の集まりには、そうしたことは往々にしてあることだからだ。
「だから、学校とかでさ…誰かにひどいことしてる奴の注意をこっちに向けたりとか、俺と似てるようなっていうのかな…いわゆるボランティアとか実習で、しんどい状況の人と一生懸命話をしてみたり聴いてみたり…俺にはそれが精一杯だった」
「でもこれが難儀でね…最後には、糸が切れたみたいになったんだよね…”あ、無理だ”って」
限界だった。気が触れるまでやった。逃げられないのだったら、人を悲しませるものに挑みかかって死のうとさえ思った。だが何も及ばず朽ちて、辛うじて生きている。
「そういう関係の勉強も、机に付けなくてできなかったしね…”それは本当にやりたいことじゃなかったんじゃない?”って人からも言われて、最初は受け入れきれなかったけど、段々自分でもそう思ってさ…」
もう、何がしたいでもない。もう、何も見聞きなどしたくもない。
「…俺は、何かしていい人間じゃなかった。もう、そう思っちゃった。」
「じゃあ、どうしてここで…私を気にかけてくれてるの?」
その言葉と共に、少女が真っすぐに少年を見つめる。その瞳を見つめ返すには、自分は醜いと少年は感じた。だから、言葉が出てこない。少女の言葉は核心をついていた。心臓を掴まれたような感覚と共に、展望台の夜空の下、沈黙の静寂が二人を包む。その間少年は困惑とも苦笑とも取れない複雑な表情を浮かべ、少女のそれは愁いと慈しみを帯びていた。やがて少年がどうにかして口を開いてみる。
「なんでだろうね…気紛れ、かな?」
そうしていると、ふと思い至ったことがあった。「あ…」という感嘆が口から零れ落ちると共に、それは言葉になって出てくる。
「…君に、こんなところに来てほしくないんだと思う」

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