1 千想の魔法 4.執筆中…… みんなに公開
目次尾行
尾行
まだ薄く霧のかかった、朝の森。木々の間を、一人の青年が歩いている。その後ろを、エイミーがひっそりと追っていた。木の陰に身を隠しながら、一定の距離を保つ。
前を歩くのは、先ほどシエルに教えてもらった男――イジェンド。
まだ日も出ていない頃、エイミーは時計塔でシエルと合流した。
「彼がイジェンドだよ」
シエルが指した先で、イジェンドは街を抜け、森へ向かっていった。
エイミーはその背中を追い、今も気付かれないまま尾行を続けている。
「……」
不意にイジェンドが足を止めた。その先に、影魔がいる。
一体、二体――。エイミーは数えていたが、八体目を数えたところで諦めた。
多すぎる。調査団なら、数人で行動していたとしても即座に撤退する数だ。
けれど、イジェンドは剣を抜いた。次の瞬間、炎が走った。
「……!」
エイミーの身体が強張る。
何体もの影魔をまとめて呑み込んでしまいそうなほどの炎が、あっという間に広がる。
影魔の群れが、炎に包まれた。その中を、剣の軌跡が舞う。黒い身体が次々と灼き斬られ、炎の向こうへ消えていく。
あれだけいた影魔が、ほんのわずかな時間で片付いていく。
エイミーは目を離せなかった。
「……やっぱり」
小さく呟く。
カルナの使い手は、そもそも数が少ない。その中で炎のカルナを使う者といえば、もう二人といないだろう。昨日は彼の姿に変身できるカルナ使いがいて惑わされたけど、今度こそ間違いない。
「……」
エイミーは弓に手を添えた。目の前の青年を、じっと見つめる。彼は既に、あれだけいた影魔の群れを片付けて剣をしまい直している。
圧倒的な強さ。あの数を相手に、ひとりで、無傷で渡り合える。そんな強さはほかに類例がない。疑念が確信に変わるには十分だった。
――見つけた。
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