0 第15話 執筆中 みんなに公開
︎︎最後の影魔が地面に崩れ落ち、黒い霧となって消えていく。
「……これで全部か」
イジェンドが周囲を見渡す。
もう影魔の気配はない。そこには、砕けた源泉の残骸が残されているだけだった。
「やったね!」
心羽は安堵したように息を吐いた。
「……ふぅ。みんなお見事だったよ。さあ、あとは帰るだけだね。」
シエルがそう促し、四人は帰路についた。
「ねえ!」
心羽は嬉しそうに話しはじめる。
「これからも、みんなで手を取り合っていこうよ!」
三人を見回しながら言う。
「断る」
「えっ」
「遠慮しておくわね」
「えぇ……」
イジェンドとエイミーに拒絶され、心羽は最後の望みを託すようにシエルを見た。
「まあ、そうだろうねぇ。」
シエルはやれやれ、と言いたげに肩をすくめた。
「そんなぁ……」
心羽はすっかり肩を落としてしまった。
それぞれに事情があるのだろう。そう思い直し、心羽は前を向く。
ふと、隣を歩くエイミーに目を向けた。
彼女はイジェンドに聞きたいことがあると言い、ここまで同行してきた。
けれど、今は彼に改めて問いかけるでもなく、どこか遠くを見つめている。
「……エイミー?」
心羽が声をかけると、エイミーは少し遅れて振り向いた。
「どうかした?」
「ううん。何でもないわ」
そう答える彼女の表情は、やはり晴れなかった。
心羽はその横顔を見つめる。
エイミーは、何を考えているのだろう。
⟡
イジェンド邸に帰宅した羽とイジェンドは、着替えや食事などを済ませ、それぞれひと息ついていた。
ふと、イジェンドが心羽の腕に目を向ける。
「その包帯、替えた方がいいだろう」
「そうなの?」
「ああ。一度外して、傷の具合も見ておいた方がいい」
そう言うとイジェンドは立ち上がった。
新しい包帯を手に戻ってくると、心羽の腕に巻かれたものを外し始めた。
「ありがとう」
心羽は素直に腕を差し出す。
イジェンドは傷口の様子を確かめた。
「……順調だな。傷も塞がり始めている」
「ほんと?」
「ああ。だが、まだ無理はするな」
そう言って、イジェンドは新しい包帯を巻いていく。
「ねえ、イジェンド」
「何だ」
「さっき、エイミーと何があったの?」
心羽は、ずっとそのことが気になっていた。
「何が、とは?」
「エイミー、イジェンドのことをすごく怒ってたでしょ? 何かされたの?」
イジェンドは不思議そうにこちらを見つめた。
「……おかしな質問だな。俺に何かされたかを聞くのか」
心羽は予想外の返しに、思わず面食らう。
「えっ、うん……。イジェンド、嫌な思いをしてないかなって。」
「別に」
イジェンドは特に気にした様子もなく答えた。
「あいつが俺をどう思っていようと、俺には関係のない話だ」
「そっか……」
包帯を巻き終えたイジェンドが手を離す。
「肩はどうだ」
「まだ少し痛いけど、大丈夫だよ」
「そうか。痛むなら無理に動かすな」
「うん。ありがとう」
心羽は頷き、包帯の巻かれた腕をそっと撫でた。
イジェンドは気にしていないらしい。それを聞いて少し安心した。
けれど、エイミーのことが気がかりなのは変わらなかった。
『私とあいつの問題』
エイミーはそう言っていた。だから、あまり踏み込まない方がいいのかもしれない。
それでも……。
明日、少し話を聞いてみようかな。
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