0 過ぎ去ったもの みんなに公開

九月。
まだ風の暖かい夜。

あちこちに散らばる文明の灯が、
街を照らして、僕を独りにしなかった。

寂しさのなかで生きた彼女は、
この世界を良しとしただろうか。

僕だけが憶えているのだろう。
かつて星を渡り、
正義の味方を志して戦った彼女は、
ただ寂しかっただけだということを。

彼女はいずれ、親友と呼べる人に出会う。
ただ足りなかった彼女が、
ただ足りなかった親友と出会い、
“独り”ではなくなる。

結末はわからないけれど、
そういう話だったと思う。

なんとなく寂しさを埋められる
そんな街で生きてきた僕に、
彼女たちが生きた物語の
その尊さはわからないだろう。

自由に空を飛び、
自在に姿を思い描き、
友と肩を並べて戦う。

それ位、彼女たちは自由だった。
それ位、自由でよかったはずなんだ。

僕を縛りつけてきたのは、
独りになれなかった僕自身でもあり、
独りを許さなかったこの社会でもあり、
独りを与えなかった過去そのものだった。

ずっと、
独りにならない選択を取り続けて
独りにさせない選択を取り続けて

“足りなかったものを自由に追い求める人生”を
選び直せないところまで来てしまった。

僕はもう、
僕の人生を見届けることしかできないのだろう。

かつてあった、別の人生の可能性に
思いを馳せる静寂の時間。

金木犀を見ると思い出す。

星の見えない夜。

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