9.協力と狂力 version 5

2023/11/05 18:25 by someone
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白紙のページ9.
 
「わかった。まず私が持つ情報と推察としては…」
上坂蓉子はそう言うと、スマートフォンを取り出した。そして打ち込んだメモをネーゲルに向けて見せる。
"あなたを追跡しているというのは、恐らく公安か嘱託機関"
やはりそうか。しかしこうなることを避けるべく、ここ数年沈黙してきたというのに、やはり運命は自分を放っておいてくれることはない。
「だが疑問がある。連中、直接的な行動には移っていない」
"どうやら現場の人間にそこまでの権限は与えられていないみたいね。彼らのような人が静観し、動かないというのは、そう見るのが自然かな"
花森健人の口を通じたネーゲルの疑問に、蓉子は引き続きメモでそう答えた。
「なんでそう言える?事に関して言えば、見えないだけで関わっている人間も少なくない」
"官僚主義ってそういう性質だから。でも恐らく記録はかなり正確にされている。だから出来ればメモで話してもらった方がいい…探られたくはないでしょう?"
メモを記したスマートフォンを差し出しつつ蓉子の整った眉が上がり、その目がネーゲルをジッと見る。その注意にはネーゲルもスマートフォンを取り出し、返答を打ち込んだ。
"しかしその前提で考えるなら、連中の上層部は俺たちを放逐してるわけだ…なぜだ?"
"そこまでは私も掴んでいない。あなた達がどう動くのかを見極めているのか、或いは超常現象の扱いに迷って議論でもしているのかーー。でもこれ以上の推測は論理の飛躍だわ"
"確かにそれは否めんが、ならいっそこちらから協力を呼び掛けるというのはどうだろうか"
ネーゲルの申し出に、蓉子は眉根を寄せてすぐにメモで返答する。
"正気?場合によってはその変身する特異体質を、人体実験にでもかけられるのがオチよ。助けを求められたこっちも、それは夢見が悪い"
"親切だな、蓉子さん。その忠告に従うよ…敵ーー今回なら黒コートの奴に関して何か知らないか?例えばその行動パターンや傾向、何でもいい"
"申し訳ないけど、あの個体については私も何もわからない。ただ、事件に関する彼ら全体の行動パターンを見たとき、一つだけ言えることがある"
"それって、何だ?"
健人の眼を見開き、ネーゲルが食い付く。情報は一つでも欲しい。本音を言えば、いっそこの際、推察だって構わないのだ。
"あなた達が、不自然なほど襲われていないということ。彼らが健人くんや初樹くんを襲うタイミングは、これまでにいくらでもあった"
"どういう意味だ?俺は一ヶ月前に襲われた。それはこの場合どうなる?"
"それに関しては何とも言えない。でもそれ以降、つまりあなたが変身してからは、あなた達、あの黒コートの関係で交戦することはあっても、他の個体はあなた達に手を出していない"
"それって…"
"今言った他の個体も、あなた達を静観しているってこと"
気味が悪い。その事実は、得体の知れない違和感をネーゲルと健人の内に刻んだ。

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「わかった。まず私が持つ情報と推察としては…」
上坂蓉子はそう言うと、スマートフォンを取り出した。そして打ち込んだメモをネーゲルに向けて見せる。
"あなたを追跡しているというのは、恐らく公安か嘱託機関"
やはりそうか。しかしこうなることを避けるべく、ここ数年沈黙してきたというのに、やはり運命は自分を放っておいてくれることはない。
「だが疑問がある。連中、直接的な行動には移っていない」
"どうやら現場の人間にそこまでの権限は与えられていないみたいね。彼らのような人が静観し、動かないというのは、そう見るのが自然かな"
花森健人の口を通じたネーゲルの疑問に、蓉子は引き続きメモでそう答えた。
「なんでそう言える?事に関して言えば、見えないだけで関わっている人間も少なくない」
"官僚主義ってそういう性質だから。でも恐らく記録はかなり正確にされている。だから出来ればメモで話してもらった方がいい…探られたくはないでしょう?"
メモを記したスマートフォンを差し出しつつ蓉子の整った眉が上がり、その目がネーゲルをジッと見る。その注意にはネーゲルもスマートフォンを取り出し、返答を打ち込んだ。
"しかしその前提で考えるなら、連中の上層部は俺たちを放逐してるわけだ…なぜだ?"
"そこまでは私も掴んでいない。あなた達がどう動くのかを見極めているのか、或いは超常現象の扱いに迷って議論でもしているのかーー。でもこれ以上の推測は論理の飛躍だわ"
"確かにそれは否めんが、ならいっそこちらから協力を呼び掛けるというのはどうだろうか"
ネーゲルの申し出に、蓉子は眉根を寄せてすぐにメモで返答する。
"正気?場合によってはその変身する特異体質を、人体実験にでもかけられるのがオチよ。助けを求められたこっちも、それは夢見が悪い"
"親切だな、蓉子さん。その忠告に従うよ…敵ーー今回なら黒コートの奴に関して何か知らないか?例えばその行動パターンや傾向、何でもいい"
"申し訳ないけど、あの個体については私も何もわからない。ただ、事件に関する彼ら全体の行動パターンを見たとき、一つだけ言えることがある"
"それって、何だ?"
健人の眼を見開き、ネーゲルが食い付く。情報は一つでも欲しい。本音を言えば、いっそこの際、推察だって構わないのだ。
"あなた達が、不自然なほど襲われていないということ。彼らが健人くんや初樹くんを襲うタイミングは、これまでにいくらでもあった"
"どういう意味だ?俺は一ヶ月前に襲われた。それはこの場合どうなる?"
"それに関しては何とも言えない。でもそれ以降、つまりあなたが変身してからは、あなた達、あの黒コートの関係で交戦することはあっても、他の個体はあなた達に手を出していない"
"それって…"
"今言った他の個体も、あなた達を静観しているってこと"
気味が悪い。その事実は、得体の知れない違和感をネーゲルと健人の内に刻んだ。

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