1 千想の魔法 3.執筆中…… みんなに公開
目次庭
庭
翌朝。イジェンド邸の庭に、乾いた音が響いていた。
「……やぁっ!」
心羽が両手で剣を振り上げる。
――振り上げようとした。
剣先はほとんど動かず、心羽の身体だけが後ろへ傾く。
「わっ……!」
尻餅をつきそうになり、慌てて踏みとどまる。
「……重い。」
手にしているのは、イジェンドから渡された剣。
彼が昔使っていたものらしく、今朝、練習に使っていいと言って貸してくれたものだ。
その後、イジェンドは影魔狩りに出かけていった。
「けどこれ、どうやって振るの……?」
心羽は剣を見つめる。
両手で抱えれば、なんとか地面から浮かせられるようにはなった。けれど、とても振れるような重さではない。
「イジェンドは、これを振り回してるんだよね……。」
改めて思うと、とんでもないことのように思える。
それでも心羽は剣を握り直した。
「もう一回。」
腰を落とし、足を開く。
両手に力を込めて――。
「んんん……!」
剣先が、ほんの少しだけ持ち上がった。
「……よし。」
その時だった。
「ピィッ!」
頭上から、小鳥の声がした。
「ん?」
心羽が顔を上げる。
一羽の小鳥が庭へ降りてきた。心羽の周りをくるくると飛んだあと、目の前の柵にちょこんと止まる。
「どうしたの?」
小鳥の足には、小さく折り畳まれた紙が括り付けられていた。
「お手紙?」
心羽は剣をそっと地面に置き、小鳥を驚かせないように近づく。
「見せてね。」
足から紙を外して広げる。
そこには、流れるような筆跡で文字が並んでいた。
「これは……シエルかな。」
『親愛なる旅人よ。キミのその心意気を見込んで、ひとつお願いがあるんだ。
西の門の近くで影魔の気配があってね。このままだと街に入ってくるかもしれない。よければ現地へ様子を見に行ってはくれないかな。
もちろん、タダ働きというわけにはいかないさ。報酬はきっちり用意しておくよ。
道案内は、その子に聞いてみて。』
「影魔……。」
心羽の表情が変わる。
「行かないと。」
心羽は地面に置いた剣を見つめた。
「これは帰ってきてから練習しよう。」
心羽は手紙を折り畳み、ポケットへしまった。
「案内してくれる?」
「ピィ!」
小鳥が翼を広げる。
心羽もその後を追うように、庭を駆け出した。
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