千想の魔法 5.呪いの焼跡 version 2

2024/01/01 05:50 by sagitta_luminis sagitta_luminis
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千想の魔法 5.
@[TOC]
##### 5-1.
此処は………。一目で見当がついた。夢に出てきた、あの謎の空間だ。風景は前回とだいぶ異なるけれど、直感が告げている。ベンチに腰掛け本を開いたあの場所だと。だとすると、また夢の中にいるのだろうか。思考がふわふわとして、意思もわからないまま体が勝手に動く。何もない目の前に突然、一枚の紙が舞い、心羽はそれを手に取る。真っ白な紙に、心羽の視線の先から文字列が刻まれていく。

##### 5-1.具合はどうだ
“冷静になればなるほど、おかしいのは俺だった”
“なにかできるわけがない、救えるはずがない”
“…………”

これは夢だ。連続性はないけど、あの夢の続きだ。
夢だとわかっていても、この文字列が無力に絶望しているのは痛いほど伝わってくる。私なら、なにかできるだろうか。なにか救えるだろうか。あの人が言っていた「優しいこと」を、実践できるだろうか。
これが夢で、幻想なら、失敗を恐れることはない。「優しいこと」を練習するチャンスだ。
心羽は文字列に指先をそっと乗せる。
だめだ、なにも言葉が浮かばない。前回と違って、なぞった指の下から言葉が紡がれない。

“ましてや影魔とかエクリプスとか、俺の手に負えたもんじゃない”

そうこうしているうちに新しい文字列が刻まれる。エクリプス…!? この文字列はエクリプスのことを知っているらしい。この文字列から感じる後悔や絶望は、エクリプスによるもの…?

“教えてほしい、あなたになにがあったの?”
“影魔やエクリプスと戦っているの…?”

##### 5-2.具合はどうだ
心羽は知らない建物の中で目を覚ます。白い壁、白い天井、白いベッド…。見慣れない風景。また別の場所に飛ばされた…? これまでの状況を回想する。エクリプスのウェルトと出会って、戦って…イジェンドを守ろうとして、やられて、脚がすごく痛くて、視界がぼやけて…。最後に、誰かが助けてくれたような…。そこから先が思い出せない。そこで死んでしまった? だとしたら、今の状況は…?
そうだ、脚が痛い。ふと思えば、やられた右脚を今も痛みが襲っている。患部は器具で固定され、下手に動かそうとすると激痛が走る。
「いぃぃったぃ……」
思わず漏れた声に反応して、イジェンドが部屋の奥から顔を覗かせる。
「意識が戻ったか。具合はどうだ」
「イジェンド! よかった、生きてたんだぁ…!」
見知った顔が目の前に現れ、思った以上に安堵する心羽。あの時、とっさに庇ったのは無駄じゃなかった…。
「さっきの戦闘、大丈夫だった? 怪我はない?」
心羽から心配され、イジェンドは呆れ顔になる。
「それはこっちのセリフだ、まずは自分の身を案じろ。お前、5時間も気絶してたんだぞ」
「ご、5時間……。私が気絶してる間、何があったの?」
イジェンドはシエルが3人まとめて助けてくれたこと、病院に連れてきて適切な処方を受けさせてくれたことを伝えた。
「そっか、骨折で2週間入院…。」
      

目次5-1.5-2.具合はどうだ

5-1.

此処は………。一目で見当がついた。夢に出てきた、あの謎の空間だ。風景は前回とだいぶ異なるけれど、直感が告げている。ベンチに腰掛け本を開いたあの場所だと。だとすると、また夢の中にいるのだろうか。思考がふわふわとして、意思もわからないまま体が勝手に動く。何もない目の前に突然、一枚の紙が舞い、心羽はそれを手に取る。真っ白な紙に、心羽の視線の先から文字列が刻まれていく。

“冷静になればなるほど、おかしいのは俺だった”
“なにかできるわけがない、救えるはずがない”
“…………”

これは夢だ。連続性はないけど、あの夢の続きだ。
夢だとわかっていても、この文字列が無力に絶望しているのは痛いほど伝わってくる。私なら、なにかできるだろうか。なにか救えるだろうか。あの人が言っていた「優しいこと」を、実践できるだろうか。
これが夢で、幻想なら、失敗を恐れることはない。「優しいこと」を練習するチャンスだ。
心羽は文字列に指先をそっと乗せる。
だめだ、なにも言葉が浮かばない。前回と違って、なぞった指の下から言葉が紡がれない。

“ましてや影魔とかエクリプスとか、俺の手に負えたもんじゃない”

そうこうしているうちに新しい文字列が刻まれる。エクリプス…!? この文字列はエクリプスのことを知っているらしい。この文字列から感じる後悔や絶望は、エクリプスによるもの…?

“教えてほしい、あなたになにがあったの?”
“影魔やエクリプスと戦っているの…?”

5-2.具合はどうだ

心羽は知らない建物の中で目を覚ます。白い壁、白い天井、白いベッド…。見慣れない風景。また別の場所に飛ばされた…? これまでの状況を回想する。エクリプスのウェルトと出会って、戦って…イジェンドを守ろうとして、やられて、脚がすごく痛くて、視界がぼやけて…。最後に、誰かが助けてくれたような…。そこから先が思い出せない。そこで死んでしまった? だとしたら、今の状況は…?
そうだ、脚が痛い。ふと思えば、やられた右脚を今も痛みが襲っている。患部は器具で固定され、下手に動かそうとすると激痛が走る。
「いぃぃったぃ……」
思わず漏れた声に反応して、イジェンドが部屋の奥から顔を覗かせる。
「意識が戻ったか。具合はどうだ」
「イジェンド! よかった、生きてたんだぁ…!」
見知った顔が目の前に現れ、思った以上に安堵する心羽。あの時、とっさに庇ったのは無駄じゃなかった…。
「さっきの戦闘、大丈夫だった? 怪我はない?」
心羽から心配され、イジェンドは呆れ顔になる。
「それはこっちのセリフだ、まずは自分の身を案じろ。お前、5時間も気絶してたんだぞ」
「ご、5時間……。私が気絶してる間、何があったの?」
イジェンドはシエルが3人まとめて助けてくれたこと、病院に連れてきて適切な処方を受けさせてくれたことを伝えた。
「そっか、骨折で2週間入院…。」