0 【黒服】

スラム街の路地裏で心羽を襲った少年グループのリーダー。見かけは心羽より一回り幼く、常に黒一色のローブを身に纏う。仲間たちからは“黒服”と呼ばれ慕われている。本名不詳。“狩り”と称し、闇の中から素早い身のこなしで富のある者を襲い、身ぐるみ剥がして得たものを売って生計を立てている。



まだ物心もつかない頃、オレの町は空襲に遭って壊滅した。オレだけが生き残りとして発見された。だから家族の顔なんか覚えてないし、自分の名前も知らない。それからは隣町の孤児院で育てられた。孤児院でオレたちは労働力だった。毎朝同じ時間に起きては兵器の部品を仕分けし、一部の賢い子たちは組み立てたり、錆びた鉄を溶かして新しい鉄を売ったりする。その労働環境は過酷の一言だった。火傷や怪我は毎日のように起きるし、機械に服がもつれて脚を失ったり、暑さにやられて倒れる子も居た。一方で体の強い男子たちは軍人になるために毎日武器の扱い方や武術を教わり、体を鍛えていた。それでも戦争は一向に終わる気配がなく、国中を襲う食糧難の波が孤児院にも押し寄せてきた。ある日から孤児院の女子の数が少しずつ減ってきはじめた。孤児院は国の方針で、軍人として活躍できない女たちを間引くことに決めたらしい。姿を消した子たちはどこへ行き、今なにをしているのか…あらかた予測はついていたけど、その現場を目にした時は絶句した。さんざん労働力として使った挙句、最期にはモノ以下の扱いを受ける…。それを見て、ここから逃げようと決めた。女に生まれただけで、物として生かされる世界なんてごめんだ。それからは男子たちの見よう見まねで体を鍛え、ナイフを武器として使えるよう練習を重ねた。もちろん誰にも気付かれないよう1人の時に。
そして作戦決行の日。院長たちが国の人に呼び出されて大人が少ないタイミングを狙い、裏口に1人だけいる警備員の脚元に駆け込んで脛をナイフで刺し、痛がる隙を突いて脱走した。全力で数分ほど走ったものの、追いかけてくる人の姿は見えない。あっさりと成功してしまったことに拍子抜けしていると、2人組の若い男性に絡まれた。
「女の子がこんなとこうろついてたら危ないよ〜」
「わる〜い大人に捕まっちゃうよ、俺たちみたいなね…」
襲ってくる2人の男を気絶させて路地裏に引きずり込み、有り金の全てと来ていたジャケットを奪取した。もし鍛えていなかったらここで殺されていたかもしれない。それに、女というだけで舐められたことにも腹が立った。
ここはスラム街だ。法などない。弱い者は誰にも守られず、全てを奪われて死んでいくだけだ。
長かった髪を切り落とし、奪ったジャケットを着て買い物に行った。買ってきた黒いローブを身につけ、女性的な言葉遣いをやめ、一人称も「私」から「オレ」に変えた。弱い女を捨て、強い男になる。そして、弱い者から全てを奪い、虐げる強い者たちから奪って生きていく。
強い者たちは夜になると居酒屋で酔っ払い、フラフラになって出てくる。“狩り”をするには絶好のチャンスだ。ローブで闇に溶け込み、急襲をかけて金目の物を盗み、素早く暗闇の中に立ち去る。1度の狩りで1日は過ごせた。少しずつ技術は上達し、盗める物はだんだんと増えていった。
ある時、

酔いつぶれた相手からは身ぐるみ剥せることもあるが、

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