0 【シエル】

背に白い翼を備える碧眼の美少年。中性的な顔立ちで可憐な歌声を持つ。茶目っ気とユーモアの溢れる性格で世界各地を旅して回り、その自由の翼でどこからともなく現れ、いつの間にか去っている。

かつて、ボクは鳥だった。
大きな翼の両親に守られ、たくさんの兄弟たちと共に成長した。
でもある日、闇が来たんだ。
空は紫色に染まり、雷が轟き、木々は荒れ、森は黒い泥に侵食された。
巣は壊され、兄弟たちは散り散りになり、両親は残った兄弟たちを庇いながら息絶えていった。
残った兄弟たちも飢えに苦しみながらも、闇の中で飛ぶことはできず、やがて冷たくなった。
ボクだけが最後に残ったけれど、死期が近いのは察していた。
闇が晴れることはなく、もう嘆く気力もない。ただ静かにその時を待つことしかできなかった。

そう、死んだんだ。
鳥だったボクは闇に呑まれて死んだ。
あの闇が何なのかすら分からないまま、全てを失って死んだ。

にも関わらず、ボクは人間になって生きていたんだ。
小さな村に生まれた少年として暮らしていた。
鳥だった話を信じてくれる者は誰もおらず、作り話だと言われた。
それでも、村の人にはわからない鳥の言葉を理解し、会話できるという事実が、この記憶が作り話ではないという唯一の証明になっていた。
ボクは鳥たちに闇のことを聞いてまわったけれど、知る者は一人としていなかった。

0

メモを他の人に見せる

このメモを見せたい人に、このURL(今開いているページのURLです)を教えてあげてください

コメント(0)

  • someone

  • someone