私がもらうのは version 3
私がもらうのは
そもそも誕生日とはそこまで目出度いものなのだろうか。と、二十も半ばを過ぎた今なら思う。
そもそも誕生日とはそこまで目出度いものなのだろうか。と、考えてしまうようになったのは、一体何歳の誕生日を迎えたときのことだっただろうか。
子供の頃の一年は長く、大人になってからの一年は短い。何処かの誰かが「二十代は二秒」と称したのを笑った過去さえ精々三年前の出来事のように感じていたが、調べ物ついでにグーグル先生に聞いてみたところ七年も前の発言らしい。
そりゃ、歳を取るわけだよ。俺も。
子供の頃はやたらと長かった誕生日から次の誕生日までの一年も、あっという間に過ぎ去っていき、気付けば社会に出てから何年目のソレか。孤独に過ごすのも何年目か。と自己嫌悪のループに入り込む始末。
子供時分のソレは、誕生日を迎えれば同級生の友達よりも一つ大人になれたような気がしたし、親や親戚から貰える誕生日プレゼントにもワクワクすることができた。
しかし、歳を取るほどに社会的責任が少し重くなっていくことに気付いてからか、そんな浮かれた気分に浸れなくなってきたのは否めない。仕事をするようになった今に至っては、下手すればいつの間にか目の前に来ていて、いつも通りに仕事をしているうちに終わっている。なんてことだってある。
三百六十五個、或いは六個ある普通の日の一つとまではいわないが。
節目ではあっても、めでたくも特別でもない。
この短い期間にいったいどれだけの成長ができたのか。何を為せたのか。を考えさせられるという点で、苦手意識すら芽生えつつある。
とはいえ、アイドル事務所のプロデューサーという、一年をまだ長く感じる存在を――つまり年頃の女の子たちを預かる身分である分、まだ俺はマシな方なのかもしれない。
それに自分自身の成長が分からなくても、共に過ごす彼女たちの成長を見れば、自分がこの一年に何を為せたのかは分かるのだから。
つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルが歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じるべきことはなく、故にこうして朋花の新たな誕生日を前に、誇らしき相方に対して俺は自信を持って問うことができるのだ。
「誕生日プレゼントは何が欲しい? 全然決まらなくて」
「分からないことを素直に聞けるようになったのは確かに成長かもしれませんね」
その分、と言うべきかは分からないが、この歳になって俺にもやっと、誕生日を盛大に祝ってやろうと思える相手ができた。
大人ぶってはいるがどうしようもなく子供っぽくて、生意気なことばかり言って正直腹が立つことも多いが、それでも間違いなく愛おしく、いつまでも彼女の隣で彼女の力であり続けたいと思える。そんな少女。
つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルが歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じるべきことはなく、故にこうして朋花の新たな誕生日を前に、誇らしき人生の相方に対して俺は自信を持って問うことができるのだ。
「誕生日プレゼントに何を買うかマジで決まらないから何が欲しいか教えてほしい」
「分からないことを素直に聞けるようになった点だけは褒めてあげましょうか」
ロマンチックさの欠片もありませんが。と、朋花は冷ややかな目を向けるのだった。
あれ? おかしいな……
まあ、そうなるよな……
先程まで俺が向かい合っていたパソコンモニタに『アラサーのあなたに捧げる! 十五歳の彼女に贈りたい誕生日プレゼント四百選!』という俺のためにあるようなサイトが開かれたままなのを確認した朋花は深い深いため息を吐いた。
先程まで俺が向かい合っていたパソコンモニタに『完全版! アラサーのあなたに捧げる! 十代の彼女に贈りたい誕生日プレゼント四百選!』というページが開かれているのを見て軽くため息を吐くと、彼女は
「本当に、乙女心の分からない人ですね~」
とどこか憐みの籠った目で見つめてくる。
「」
そもそも誕生日とはそこまで目出度いものなのだろうか。と、考えてしまうようになったのは、一体何歳の誕生日を迎えたときのことだっただろうか。
子供の頃の一年は長く、大人になってからの一年は短い。何処かの誰かが「二十代は二秒」と称したのを笑った過去さえ精々三年前の出来事のように感じていたが、調べ物ついでにグーグル先生に聞いてみたところ七年も前の発言らしい。
そりゃ、歳を取るわけだよ。俺も。
子供時分のソレは、誕生日を迎えれば同級生の友達よりも一つ大人になれたような気がしたし、親や親戚から貰える誕生日プレゼントにもワクワクすることができた。
しかし、歳を取るほどに社会的責任が少し重くなっていくことに気付いてからか、そんな浮かれた気分に浸れなくなってきたのは否めない。仕事をするようになった今に至っては、下手すればいつの間にか目の前に来ていて、いつも通りに仕事をしているうちに終わっている。なんてことだってある。
三百六十五個、或いは六個ある普通の日の一つとまではいわないが。
節目ではあっても、めでたくも特別でもない。
その分、と言うべきかは分からないが、この歳になって俺にもやっと、誕生日を盛大に祝ってやろうと思える相手ができた。
大人ぶってはいるがどうしようもなく子供っぽくて、生意気なことばかり言って正直腹が立つことも多いが、それでも間違いなく愛おしく、いつまでも彼女の隣で彼女の力であり続けたいと思える。そんな少女。
つまり天空橋朋花という最高の担当アイドルが歩むその軌跡こそが俺の軌跡でもある。その歩みに恥じるべきことはなく、故にこうして朋花の新たな誕生日を前に、誇らしき人生の相方に対して俺は自信を持って問うことができるのだ。
「誕生日プレゼントに何を買うかマジで決まらないから何が欲しいか教えてほしい」
「分からないことを素直に聞けるようになった点だけは褒めてあげましょうか」
ロマンチックさの欠片もありませんが。と、朋花は冷ややかな目を向けるのだった。
まあ、そうなるよな……
先程まで俺が向かい合っていたパソコンモニタに『完全版! アラサーのあなたに捧げる! 十代の彼女に贈りたい誕生日プレゼント四百選!』というページが開かれているのを見て軽くため息を吐くと、彼女は
「本当に、乙女心の分からない人ですね~」
とどこか憐みの籠った目で見つめてくる。
「」